レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014/03/12
- 登録日時
- 2014/08/31 00:30
- 更新日時
- 2014/08/31 00:30
- 管理番号
- 6001001714
- 質問
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未解決
アニミズムに関心があり、自然崇拝・自然信仰について調べたいと考えています。
いつごろアニミズムという観念が生まれ、そうした観念が現代までどのように変遷をたどっているのか、という点について知りたいです。
『聖なるもの(岩波文庫)』オットー著
『聖地感覚』鎌田東二著(角川出版社)
『現代霊性論』内田樹(講談社)
は読みました。
- 回答
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『岩波哲学・思想辞典』(廣松渉/他編 岩波書店 1998)当館請求記号【103.3/6N】(貸出不可)の解説を引用します。(p.27)
「アニミズム(英 animism)
この語は、イギリスの人類学者E・タイラーが『原始文化』1871のなかで、「原始(未開)宗教」の特徴を表すのに用いた用語である。タイラーは宗教の原初的形態を霊的存在への信仰に」求め、それをアニミズムと名付けた。ここでの「霊的存在」(spiritual being)とは霊魂、死霊、精霊、霊鬼、神祇、神までを含んでいる。彼は、霊魂や精霊に対する信仰から多神教そして一神教にいたる宗教の進化を論じたが、同時にアニミズムを宗教発展の各段階を通じて存在するとも考えた。その意味ではタイラーの功績はアニミズムという言葉を用いながら彼の時代に支配的だったキリスト教的な宗教概念を拡張し、人類的な規模での宗教の比較研究を試みたところにある。
アニミズムにおいては、世界は物質的身体をもたず、目に見えない正霊や霊魂の働きによって説明される。そこでは、人間は身体と霊魂からなるととらえられる。霊魂は自由に身体を出入りすることができ、夢を見ている時や病気の時は霊魂が身体から離れた状態だとされる。それゆえ、この分離した霊魂をとりもどすために儀礼がもたれることがある。
そして死とは霊魂が永遠に身体を離れ、宿るべき身体を失ってしまった状態とされる。
タイラーのアミニズム論は、その後マナ(呪的な力)に注目したR・マレットのプレアニミズム(アニマティズム)論、A・ラングによる原始―神教の指摘などにより修正と批判が加えられていくが、宗教的な進化論の非実証性があらわにされていくにつれて、かつての輝きを失っていった。
今日の文化人類学や民族誌ではこの概念を用いて議論されることは少なくなっている。アニミズムという概念が特定の宗教現象をとらえるにはあまりに包括的で曖昧だからである。にもかかわらず、この語は精霊や霊魂が宿る世界を語る際にいぜんとして使われており、批判的な再定義が必要とされている。」
『世界大百科事典 1巻』(平凡社 2007)、『日本大百科全書 1巻』(小学館 1984)にもアニミズムについて詳細な記述があります。
次にアニミズム関連の一般資料を下記に紹介します。(全冊貸出可能、内容紹介は出版社のHPによる)
『アニミズムを読む』(平川祐弘/編 新曜社 1994)【910.4/43N】
かつて未開の思想と考えられたアニミズムがエコロジー運動などとの関連で新たに見直され始めている。日本文学に底流するアニミズムを万葉,古今から鏡花,川端,大江までにわたって日米の学者が世界的視点から丹念にたどり,その再評価を行なう。
『アニミズム時代』(岩田慶治/著 法蔵館 1993)【163.3/2N】
森で文化人類学者はカミと出会った。気がつけば日常風景の裏側にカミの不思議の時空がある。
『アニミズムという希望』(山尾三省/著 野草社 2000)【163.3/5N】
1999年夏、屋久島の森に住む詩人が琉球大学で集中講義を行った。「土というカミ」「水というカミ」……、詩人の言葉によって再び生命を与えられた新しいアニミズムは、自然から離れてしまった私達が時代を切りひらいてゆく思想であり、宗教であり、感性である。
『アニミズムの世界(歴史文化ライブラリー16)』(村武精一/著 吉川弘文館 1997)【163.3/3N】
死霊崇拝を中心に、日本列島から東南アジアにかけてのアニミズムの実態を明らかにし、心の底に横たわる自然への思いを見つめ直す。
『一神教の闇:アニミズムの復権』(安田喜憲/著 筑摩書房 2006)【L71/630N】
環境破壊と軍事紛争を引き起こした一神教的世界観に支えられる畑作牧畜文明と高度な環境調和型文化を築き持続を重視した多神教の稲作魚撈文明。文明興亡史のなかに発想の形成を探り、環境考古学の立場から検証する。
『カミと神』(岩田慶治/著 講談社 1984)【163.3/4】
(内容紹介データなし)
『神の名は神』久保田展弘/著 小学館 1996 160.4/73N
国際家時代を迎え、世界各地の風土と歴史につちかわれた宗教についての知識と理解が強く求められている。日本人一般の仏教と神道をベースに、広く神とは何か、宗教は人間に何をもたらしたかを問うた臨場感溢れる思索書。
『木が人になり、人が木になる:アニミズムと今日』(岩田慶治/著 2005)【163.3/10N】
「自分って何」「民族って何」「草木虫魚って何」 自然の万物、森羅万象の中から、根源的な宗教感覚を現代に蘇らせる、独創的思想家の卓抜な論理と修辞。自然な宗教的感覚・アニミズム的死生観の到達点。
『心の宇宙へ:宗教とエコロジー』(グリーンカルチャ-/編 現代書館 1987)【160.4/71】
(内容紹介データなし)
『コスモスの思想』(岩田慶治/著 岩波書店 1993)【L13/146N】
美的秩序につらぬかれた生きた全体としての宇宙、コスモスとはどこに現れるか? アニミズムとマンダラを重ねわせ、隠れた自然を包み込むコスモスの姿をさぐる独創にみちた文化人類学。
『宗教の人類学(シリーズ来るべき人類学3)』(吉田匤興/共編 春風社 2010)【163/52N】
他者性の典型であり、なおかつわれわれの生に影のように寄り添ってもいる宗教的現象を、文化人類学の手法を用いて考察。改宗・顕示的消費・ファンダメンタリズム・憑依・呪物・アニミズムなどのテーマを取り上げる。
『精霊信仰と儀礼の民俗研究:アニミズムの宗教社会』(赤田光男/著 帝塚山大学出版会 2007)【387/458N】
(内容紹介データなし)
『日本の自然崇拝:西洋のアニミズム』(保坂幸博/著 新評論 2003)
【162.1/113N】
真の国際交流には共感的宗教理解が不可欠。キリスト教的文明圏である西洋のアニミズム理論と対応する形で日本人の自然崇拝に注目する。自然に対して特異な感情を持つ日本人を宗教的信条の核心に捉えてその宗教を考察。
当館では所蔵しておりませんが、CiNii Booksから下記図書を紹介します。(2014/3/12現在)
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB01514285
大阪市立図書館、門真市立図書館で所蔵しています。
・『21世紀日本像の哲学:アニミズム系文化と近代文明の融合』(工藤隆/著 2010 勉誠出版)¥1890
ISBN:9784585210009
反日感情の強い国で日本人・日本文化をどう説明するか。日本文化と天皇制の成り立ちを縄文・弥生期にまで遡って把握し直したことで、一木一草を慈しむアニミズム系文化と近代リアリズム精神を高度に調和させた、新しい時代に相応しい日本像が浮かび上がってきた。著者が中国で行った二つの講演「天皇制と日本文化」「日本文化の二十構造」を元に書き下ろした最新の日本論。
[事例作成日:2014年3月12日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 原始宗教.宗教民族学 (163 8版)
- 参考資料
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- 岩波哲学・思想事典広松/渉∥[ほか]編集岩波書店 (27)
- 世界大百科事典1平凡社 (344)
- 日本大百科全書1小学館 (425)
- アニミズムを読む平川/祐弘∥編新曜社
- アニミズム時代岩田/慶治∥著法蔵館
- アニミズムという希望山尾/三省∥著野草社
- アニミズムの世界村武/精一∥著吉川弘文館
- 一神教の闇安田/喜憲∥著筑摩書房
- カミと神岩田/慶治∥著講談社
- 神の名は神久保田/展弘∥著小学館
- 木が人になり、人が木になる。岩田/慶治∥著人文書館
- 心の宇宙へグリーンカルチャーセンター∥編現代書館
- コスモスの思想岩田/慶治∥著岩波書店
- 宗教の人類学吉田/匡興∥共編春風社
- 精霊信仰と儀礼の民俗研究赤田/光男∥著帝塚山大学出版会
- 日本の自然崇拝、西洋のアニミズム保坂/幸博∥著新評論
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- その他
- 内容種別
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000159190