レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/10/28
- 登録日時
- 2021/11/02 00:30
- 更新日時
- 2021/11/02 00:30
- 管理番号
- 6001052941
- 質問
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解決
シーボルトが文政9年5月に大坂で芝居を見たという。その時の芝居に出ていた役者を知りたい。
- 回答
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次の資料に記載がありました。
■『日本 第3巻 日本とその隣国、保護国-蝦夷・南千島列島・樺太・朝鮮・琉球諸島-の記録集。日本とヨーロッパの文書および自己の観察による。』(フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト/著 雄松堂書店 1978)
「第十二章 大坂滞在」の「六月十二日〔旧五月七日〕」※〔〕は訳者による注(p.135-138)に「今日は大坂の有名な芝居をみた。(中略)ちょうど妹背山という外題で有名な芝居が上演された。」とあり舞台や芝居の内容について記載があります。役者についても記載がありますが、具体的な役者名は見当たりません。
訳注(8)「妹背山の芝居」に、「妹背山婦女庭訓」という芝居であり、「シーボルトが見物したのは大坂道頓堀角の芝居で、文政九年五月の役割番付では、市川団蔵、尾上菊五郎、尾上松助、嵐来芝、大谷友右衛門、中村芝翫らの一座で、シーボルトはその三日目を見物した。」とあります。(p.140)
■『浪速叢書 第6 摂陽奇観』(船越政一郎/編纂校訂 浪速叢書刊行会 1929)
江戸時代大坂の年代記「摂陽奇観」の翻刻が収録されており、文政九年の事項が記されている巻之五十一に次の記述があります。
・「五月七日 紅毛人芝居見物ニ付角ノ芝居ヘ来ル(後略)」(p.346)
巻頭の「解題」(p.6-8)には、次の記述がありました。
・「本冊三四六頁に『五月七日紅毛人芝居見物に付角の芝居に来る』の一項があります。これは文政九年のことで、この紅毛人一行三人のうちに、有名な蘭医シイボルトが加はつてゐたのでした。この一行が見たのは『妹背山婦女庭訓(イモセヤマオンナテイキン)』で、その役割は、雛鳥(尾上菊五郎)。芝六、大判事清澄(嵐来芝)。橘姫(藤川友吉)。久我之助清舟、おみわ、入鹿大臣(中村芝翫)。求女、後室定高、鱶七(市川團藏)でした。」(p.6)
・「所で、此のシイボルトが大坂で見物した芝居は、角(カド)ではなく中(ナカ)の芝居であつたとして一部に伝えられて居りますのは、当時、画師の鶴岱が、一行の芝居見物の像を写生し、それに『讃州象頭山参詣の帰路大坂止宿の折から、紅毛人、中の芝居見物のよし(中略)』との解説を加へた絵が存してゐるからでせう。(中略)角(カド)の芝居であるべき解説文に、中(ナカ)の芝居と書いたのは土地不案内のための誤謬であつたことは申す迄もないことですが、やはり猶世上には、この鶴岱の解説に誤まられて、中(ナカ)の芝居と思つて居られる方があるようです。しかし我が『摂陽奇鑑』第五十一の一項、即ち文政九年五月七日(西暦一八二六年六月十二日)、紅毛人の一行が角座見物云々の文字は、動かすべからざる事実を物語るもので、中(ナカ)の芝居といふ説を根本的に撃破するの好資料でございます。」(p.7-8)
■『シーボルト江戸参府紀行 異国叢書』(シーボルト/[著] 駿南社 1928)
「十一 大坂の滞在」に、6月12日(旧暦5月7日)の芝居見物の記事があり、次の注が付されています。
「シーボルトが見物したるは大阪の道頓堀角の芝居にて、伊原敏郎君が所蔵の文政九年五月の役割番附によれば此時の芝居は、市川團藏・尾上菊五郎・尾上松助・嵐来芝・大谷友右衛門・中村芝翫等を一座としたるものにして、かなりの当りなりしかば。(中略)此月には番附通り仮名手本忠臣蔵・傾城反魂丹・姫小松子日遊などと合せて五日より興行されたるにて、シーボルトの見物したるは其三日目なりしなり。」(p.581)
次のサイトでは、文政9年5月に、大坂・「角の芝居」で上演された「妹背山婦女庭訓」の番付を確認することができます。
・「ARC番付ポータルデータベース」(立命館大学アート・リサーチセンター)(2021/10/28現在)
https://www.dh-jac.net/db1/ban/search_portal.php
「和暦:文政09」、「月日:05」「劇場:大阪 角」「題名漢字:妹背山婦女庭訓」の番付という検索条件で検索すると、文政9年5月5日となっているものが3件ヒットします。
5月5日から角の芝居で上演された妹背山婦女庭訓の番付の画像は、次のサイトで閲覧することができます。
・「近世芝居番付データベース」(早稲田大学文化資源データベース)(2021/10/28現在)
https://archive.waseda.jp/archive/subDB-top.html?arg={"subDB_id":"79"}&lang=jp
「和暦:文政09」、「月日:05/05」「劇場:角」で検索すると、5月5日から上演された妹背山婦女庭訓の番附3種の画像が公開されています。
〔事例作成日:2021年10月28日〕
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 歌舞伎 (774 10版)
- 参考資料
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- 日本 第3巻 フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト∥著 雄松堂書店 1978 (135-138、140)
- 浪速叢書 第6 船越/政一郎∥編纂校訂 浪速叢書刊行会 1929 (6-8、346)
- シーボルト江戸参府紀行 シーボルト∥[著] 駿南社 1928 (581)
- https://www.dh-jac.net/db1/ban/search_portal.php (「ARC番付ポータルデータベース」(立命館大学アート・リサーチセンター)(2021/10/28現在))
- https://archive.waseda.jp/archive/subDB-top.html?arg={"subDB_id":"79"}&lang=jp (「近世芝居番付データベース」(早稲田大学文化資源データベース)(2021/10/28現在))
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 大阪,人物・団体
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000306815