レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024/01/13
- 登録日時
- 2024/04/16 00:30
- 更新日時
- 2024/04/16 00:30
- 管理番号
- 牛久-1960
- 質問
-
解決
紫式部の本名「香子」という説を提唱したのは誰か、「香子」とした理由も知りたい。また「香子」説についての他の意見があれば知りたい。
- 回答
-
「藤原香子」説を提唱したのは、角田文衛。その説には反論も多く、角田文衛本人も「藤原香子」を本名とするきめ手は見いだされていないとしている。「香子」説について記載のある次の資料を紹介。※()内の数字は回答プロセスの資料番号。
(3)『国史大辞典 13』(国史大辞典編集委員会編/吉川弘文館/1992.4 )…p677
(4)『日本女性人名辞典』(芳賀登監修/日本図書センター/1998.10)…p1036
(6)『日本古典文学大辞典』(日本古典文学大辞典編集委員会編集/岩波書店/1986.12)…p1799
(7)『日本の女性名』(角田文衞/国書刊行会/2006.4) …p121
(9)『紫式部伝』(上原作和/勉誠社/2023.10)…p65 香子節を提唱した理由あり。
○角田文衛氏が「藤原香子」と推察した引用資料。
(10)『大日本古記録 御堂関白記 上』(東京大学史料編纂所編纂/岩波書店/1984)…p209
○追加で確認した資料にも、「香子」説を提唱した理由についての記載あり。
(11)『紫式部日記全注釈 下巻』(萩谷朴/角川書店/1979)…p487
(12)『角田文衞の古代学 1』(角田 文衞/古代学協会/2018.9)…『紫式部の本名』p261
- 回答プロセス
-
1. 請求記号「R281」(伝記・日本)の棚をブラウジング。
(1)『人物レファレンス事典 古代・中世・近世編[1]せ~わ』(日外アソシエーツ編集部編/日外アソシエーツ/1996.9 )
…p2406「紫式部」の項に本名の記載なし。「収録事典類一覧」あり。
2. (1)の「収録事典類一覧」より、次の資料を確認。
(2) 『新訂日本重要人物辞典』(教育社編/教育社/1988.12)
…p792「紫式部のよび名は、はじめ藤式部だった」と記載あり。香子については記載なし。
(3)『国史大辞典 13』(国史大辞典編集委員会編/吉川弘文館/1992.4 )
…p677「紫式部」の項に、「本名は不詳で、香子とする説があるが疑わしい」とあり。香子説の提唱者わからず。
(4) 『日本女性人名辞典』(芳賀登監修/日本図書センター/1998.10)
…p1036「紫式部」の項に、「本名を香子とする説もあるが反論も多い」とあり。香子説の提唱者わからず。
3. 請求記号「R910」(日本文学)の棚をブラウジング。
(5) 『日本古典文学大事典』(大曽根章介[ほか]編/明治書院/1998.6)
…p1235「紫式部」の項に、「女房名は『藤式部』で、これは父為時が式部丞であったことに由来する」とあり。香子については記載なし。
(6) 『日本古典文学大辞典』(日本古典文学大辞典編集委員会編集/岩波書店/1986.12)
…p1799「紫式部」【名称】の項に、「本名は未詳。角田文衛によって香子説が提起されているが疑問視する見解も少なくない」「一条天皇中宮藤原彰子に仕えて藤式部と呼ばれた」とあり。
→疑問視されているが、角田文衛により香子説が提起と判明。
4. (6)の資料より、フリーワード「角田文衛」+状態「所蔵」で自館資料検索。ヒット11件。次の資料を確認。
(7) 『日本の女性名』(角田文衞/国書刊行会/2006.4)
…p120「紫式部」の項に、「元来は藤式部であった」とあり。
…p121「紫式部の本名は、藤原香子であったのではないかというのは、以前に著者が提出した想定であり、これについては若干の反論も公にされている」「この問題を決定的に改名するきめ手は見いだされていないのである」とあり。
…p499「注62」に「角田『紫式部の本名』(『古代文化』第11巻第1号掲載。同著『紫式部とその時代』(前略)収録)」とあり。
(8) 『王朝の残映』(角田文衛/東京堂出版/1992.10)…関連する情報なし。
5.一般件名「紫式部」で自館資料検索。書誌情報に「幼名・本命」とあり、次を確認。
(9) 『紫式部伝』(上原作和/勉誠社/2023.10)
…p65「通称としての『もも』説は可能か」の項に、角田文衛の『紫式部の本名』(1963年7月)における本名・藤原香子説の提唱も、萩谷朴『紫式部日記全注釈』(1971年、73年)の追認以外は、その多くは否定論」「『御堂関白記』『権記』寛弘四年正月二九日条に見える『掌侍藤原香子』」とあり。
→角田氏の香子説を唱えることになった資料名判明。
6. (9)の資料より、フリーワード「御堂関白記」で自館資料検索。
(10)『大日本古記録 御堂関白記 上』(東京大学史料編纂所編纂/岩波書店/1984)
…p209「寛弘四年正月」の項の「廿九日」に、「有掌侍召、以藤香子、可被任者」とあり。
7. (9)の資料より、フリーワード「権記」で自館資料検索。ヒットなし。
→以上より、(3)(4)(6)(7)(9)(10)の資料を紹介。
(10)の資料より、角田文衛が紫式部の本名を「藤原香子」とした説がある。
(7)の資料より、角田氏本人も「藤原香子」を本名とするきめ手は見いだせていないとしている。
(9)の資料に、香子説を唱えた理由あり。
(3)(4)(6)(9)の資料より、「藤原香子」を本名とするのに疑問視する意見も出ている。
8. 後日(9)の資料より、フリーワード「紫式部日記全注釈」で自館資料検索。下記の資料を確認。
(11) 『紫式部日記全注釈 下巻』(萩谷朴/角川書店/1979)
…p467-508「解説」の「作者について」
…p487「紫式部の本名は、厳密なところ未だ詳かではない。しかし、『道長公記』寛弘四年正月二十九日条の『掌侍有り。藤香子を以つて任ぜらる可しといへり』、『権記』同年二月五日条の『源中納言中務少輔孝明を召して、女官除目を給ふ 去る廿九日掌侍藤原香子を任ず』という記事を取り上げて、紫式部の本名が香子であったと推定する角田説」とあり、角田説を否定する諸氏の記載あり。著者の萩谷氏は「結果的には必ずしも捨て難いものがあると私は考える」としている。
9. (7)の資料より、書名「紫式部の本名」+著者名「角田文衛」で自館資料検索。ヒットせず。 茨城県図書館情報ネットワーク(https://ref.libnet.pref.ibaraki.jp/ILN/)で、同じキーワードで検索。次の資料2冊に同タイトル発見。
(12)『角田文衞の古代学 1』(角田 文衞/古代学協会/2018.9)…相互貸借依頼。
(13)『源氏物語 2 日本文学研究資料叢書』(日本文学研究資料刊行会編/有精堂/1979)
10. (12)の資料を相互貸借で確認。
(12)『角田文衞の古代学 1』(角田 文衞/古代学協会/2018.9)
…p261-300「紫式部の本名」のp261に「紫式部は、本名を藤原香子と言ったのではないかと思う。無論、これは断定ではなく、推量にとどまるが、筆者は以下にこの推論を述べ、識者の批判を仰ぐこととしたい」とあり。
…p285「寛弘三年より五年十月までの『御堂関白記』を通覧」「寛弘四年正月二十九日、藤原香子が掌侍に補された」とあり。
…p298「『香子』は『かほり子』または『たか子』と訓まれたのであろう」とあり。
- 事前調査事項
-
インターネット検索で 紫式部の本名が「藤香子」という説を見た。どこのホームページで見たのかは不明。
- NDC
-
- 日本史 (210 10版)
- 系譜.家史.皇室 (288 10版)
- 日本文学 (910 10版)
- 参考資料
-
- B10053096 国史大辞典 13 国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1992.4 210.033 9784642005135
- B10278088 日本女性人名辞典 芳賀登/監修 日本図書センター 1998.10 281.033 9784820578819
- B10006351 日本古典文学大辞典 日本古典文学大辞典編集委員会/編集 岩波書店 1986.12 910.2 9784000800679
- B10551049 日本の女性名 角田文衞/著 国書刊行会 2006.4 288.12 9784336047458
- B11078760 紫式部伝 上原作和/著 勉誠社 2023.10 910.23 978-4-585-39035-0
- B10571375 大日本古記録 御堂関白記 上 東京大学史料編纂所/編纂 岩波書店 1984 210.088
- B10552116 紫式部日記全注釈 下巻 萩谷朴/著 角川書店 1979 915.35 9784047610217
- B11085492 角田文衞の古代学 1 角田文衞/著 古代学協会 2018.9 208 978-4-642-07896-2
- キーワード
-
- 紫式部
- 本名
- 香子
- 香子
- 角田文衛
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000349114