レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年12月04日
- 登録日時
- 2023/12/25 18:30
- 更新日時
- 2024/01/20 13:41
- 管理番号
- 2366
- 質問
-
解決
シベリアに抑留された元海軍兵が持ち帰った、裏に「昭和十四年」と書かれた袖のないマントについて下記の2点について知りたい。
1.どこの工廠でつくられたのか
2.どのようなルートで支給されたのか
- 回答
-
記載資料はみつからなかった
【参考文献】
○抑留時の衣服(支給物資)について
(A)『シベリア抑留全史』(210.7/ナガ/)
(B)『シベリア抑留者たちの戦後』(210.7/トミ/)
(C)『シベリア抑留』(210.7/ナガ/)
(D)『シベリヤ抑留兵よもやま物語 続』(916/サ/2)
(E)『慟哭のシベリア抑留』(210.7/アベ/)
(F)『ロシア極東秘境を歩く』(291.1/アイ/T)
(G)『北千島日記』(916/ナ/)
(H)『日本海軍軍装図鑑』(390.9/ヤギ/)
(I)『日本軍装図鑑 下』(390.9/ササ/2)
○海軍工廠について
(J)『海軍要覧 昭和14年版』
(K)『海軍軍戦備 2』(391.2/ア/88)
(L)『千島通史の研究』(211.9/カワ/T)
(M)『フィールドワーク豊川海軍工廠』(A392/トヨ/)
(N)『豊川海軍工廠展』(A392/サク/)
(O)『豊川海軍工廠資料集』(A392/サク/)
- 回答プロセス
-
1.どこの工廠でつくられたのか
①「袖のないマント」について調べる
(1)業務システムにて
タイトル=「シベリア抑留」で検索
➡「210.7」の資料が複数ヒット
(2)「210.7」(日本史・昭和)の棚をブラウジング
➡(A)~(G)の資料→「袖のないマント」について記載はなし
(3)「390.9」(軍装)の棚をブラウジング
➡(H)の資料…p164-165士官のマントについて記載あり。また、p5に特殊被服は貸与品という項目があり、そのなかに「製作し供給するのは海軍軍需部衣糧課(年代によって名称が違う)であるが、・・・・」とあり。
➡(I)の資料…p254-255海軍士官外套について記載あり。
②当時の海軍衣糧について調べる。
〇国立国会図書館デジタルコレクションにて「海軍」について検索
➡(J)の資料…p404(245コマ)海軍衣糧について記載あり
「既製品を購入するものもあるけれども、多くは材料品として‐被服地の如き‐購入の上各軍需部で裁断し、一部は軍需部員自ら裁縫するけれども、大部分は民間に裁縫を請負はしめるのである。」「既製品又は材料品は海軍省軍需部長の指圖に依り、靴下は各軍需部で、その他は一切横須賀軍需部で購入し他の軍需部へ必要の都度送付するのである。」「被服物品は従来信用経験のある製造業者との間に随意契約に依って横須賀軍需部にて一併調達し~」
→横須賀軍需部が衣糧調達を取りまとめていたことが分かる。
③工廠について調べる
(1)「占守島」という土地名がでていたことより(千島列島北東端の島)
業務システムで「北千島」を検索➡3冊ヒット
→北千島は厳しい土地のようで、ここには工場等はなかったことが分かった。
(2)「袖のないマント」は日本国内の工場で生産されたものではないかと考え、国内の工廠について調べる。
業務システムにて「工廠」を検索➡豊川に海軍工廠があることが分かる。
→豊川海軍工廠では主に弾丸、レンズなどを作っておりマント(外套)の生産の記録がない。
(N・O)の資料…衣服を作っていたという記載はなし
(3)インターネットで調べる
・「海軍工廠␣衣服」で検索
➡海軍工廠の中に、「衣糧廠」という名前の工場があると分かった。
・「衣糧廠」で検索
➡「アジ歴グロッサリー」という国立公文書館のアジア歴史資料センター関連のHPに軍需局についての解説があった。
『海軍軍戦備 1 戦史叢書31』(391.2/ア/31)のp23-24が参考として挙げられていた
(4)(3)より当館所蔵資料にあたる
(K)の資料を確認(開戦以後の資料)
➡p322編成表~軍需局第三部第二課が被服の生産、保管供給を担当していると読み取れるが、実際の場所については明記されていなかった。
p375…「第一海軍衣糧廠 17・4・1 第二海軍衣糧廠 17・4・1 第三海軍衣糧廠 20・4・1 被服の生産及び加工 食料の研究及び加工」とあり。マントには昭和十四年とあるのでそれ以降のものか。
(5)(4)よりインターネットで検索
➡会計検査院の昭和24年度決算検査報告書の中に藤沢市の片倉工業株式会社が元第一海軍衣糧廠辻堂支蔽であったことの記載があった。この工場が衣糧廠として作られ後に株式会社になったのか、元々会社があり、設備があるため支蔽として編成されたのかすら定かではなく、生産品もわからなかった。このような工場は全国的にあったのではないかと推測される。
(6)(C)の資料に「ソ連は初めから日本軍の軍装や生活用品を利用することを考えていた。(中略)ソ連に入ってから一部で補充された衣類は日本軍からの戦利品だったことは多くの人が証言している。」とあり、陸軍の軍服の可能性もあるためインターネットにて検索する
➡海軍の衣糧廠にあたるものは被服廠ということがわかる
・「被服廠」で検索
➡アジ歴グロッサリーの『陸軍被服廠条例改正・御署名原本・明治四十一年・勅令第二十三号』・『御署名原本・昭和十四年・勅令第五三六号・陸軍被服廠条例ヲ改正シ陸軍被服廠令ト改題』という資料を確認すると東京、大阪、広島に(昭和14年の資料では満州にも)被服廠があったことがわかる。しかし『御署名原本・昭和十三年・勅令第三〇号・陸軍軍需監督官令制定陸軍航空本部令中改正』に「陸軍ニ於テ軍需品ノ製造若ハ修理ヲ民間工場ニ注文シ又ハ民間工場ヨリ軍需品ヲ購入スルトキハ必要ニ応ジ左ノ職員ヲ置キ・・・・」とあるためつくられたのは民間工場の可能性もある
➩「袖のないマント」を生産していた工廠の特定には至らなかった。
◎戦前、全国各地にできたと思われる「衣糧廠」が関係している可能性がある。
(K)の資料→所在地等、具体的な記載なし
2.どのようなルートで支給されたのか。
➡記載資料なし
◎日本の物資をシベリアに搬送していたことについては、1の問題で使用した資料に記載があるが「袖のないマント」がいつどのようなルートで搬送されたのかは不明
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 国防.軍事 (390 9版)
- 記録.手記.ルポルタージュ (916 9版)
- 参考資料
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長勢了治 著 , 長勢, 了治, 1949-. シベリア抑留全史. 原書房, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024693744-00 , ISBN 9784562049318 -
富田武著 , 富田, 武. シベリア抑留者たちの戦後 : 冷戦下の世論と運動1945-56年. 人文書院, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I008623194-00 , ISBN 9784409520598 -
長勢了治 著 , 長勢, 了治, 1949-. シベリア抑留 : 日本人はどんな目に遭ったのか. 新潮社, 2015. (新潮選書)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026384754-00 , ISBN 9784106037672 -
斎藤邦雄 著 , 斎藤, 邦雄, 1920-. シベリヤ抑留兵よもやま物語 続. 光人社, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001897964-00 , ISBN 4769803737 -
阿部軍治著 , 阿部, 軍治. 慟哭のシベリア抑留 : 抑留者たちの無念を想う. 彩流社, 2010. (歴史から学ぶ, 2)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007942406-00 , ISBN 9784779115738 -
相原秀起 著 , 相原, 秀起, 1962-. ロシア極東秘境を歩く = Российский Дальний Восток Путешествие по неведомым краям : 北千島・サハリン・オホーツク. 北海道大学出版会, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027725559-00 , ISBN 9784832933989 -
内藤史朗 著 , 内藤, 史朗, 1903-. 北千島日記 : 大戦下、北の最前線で従軍医師が見たもの. Step, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002537464-00 , ISBN 4915834328 -
海軍有終会 編 , 海軍有終会. 海軍要覧 昭和14年版. 海軍有終会, 1939.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001955533-00 -
防衛庁防衛研修所戦史室 編 , 防衛庁防衛研修所戦史室. 海軍軍戦備 2 開戦以後 付図. 朝雲新聞社, 1975. (戦史叢書 ; [88])
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077502626-00 -
川上淳著 , 川上, 淳. 千島通史の研究 = The study of overview history Chishima. 北海道出版企画センター, 2020.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I012396523-00 , ISBN 9784832820050 -
豊川海軍工廠跡地保存をすすめる会 編著 , 豊川海軍工廠跡地保存をすすめる会. フィールドワーク豊川海軍工廠 : 学び・調べ・考えよう. 平和文化, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026413935-00 , ISBN 9784894880597 -
桜ヶ丘ミュージアム 編 , 桜ヶ丘ミュージアム (豊川市). 豊川海軍工廠展 : 巨大兵器工場-終戦60年後の記録 : 終戦60周年企画. 桜ヶ丘ミュージアム, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007865339-00 -
桜ケ丘ミュージアム編集 , 桜ケ丘ミュージアム. 豊川海軍工廠資料集 : 桜ケ丘ミュージアム所蔵. 桜ケ丘ミュージアム, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007690506-00 - 柳生 悦子. 日本海軍軍装図鑑 幕末・明治から太平洋戦争まで. 並木書房, 2014. , ISBN 978-4-89063-319-7
- 笹間 良彦. 日本軍装図鑑 下. 雄山閣, 2022/09. (イラストで時代考証3) , ISBN 978-4-639-02850-5
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長勢了治 著 , 長勢, 了治, 1949-. シベリア抑留全史. 原書房, 2013.
- キーワード
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- シベリア抑留(シべリアヨクリュウ)
- 海軍工廠(カイグンコウショウ)
- マント
- 衣糧廠(イリョウショウ)
- 支給物資(シキュウブッシ)
- 歴史(レキシ)
- 豊川海軍工廠(トヨカワカイグンコウショウ)
- 郷土
- 一般書
- T
- 抑留者(ヨクリュウシャ)
- 太平洋戦争(タイヘイヨウセンソウ)
- 被服廠(ヒフクショウ)
- 日本海軍
- 日本陸軍
- 関東軍(カントウグン)
- 雨衣
- 外套
- ロシア軍
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000343983