レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年06月02日
- 登録日時
- 2024/04/03 16:25
- 更新日時
- 2024/05/01 13:54
- 管理番号
- 6000035282
- 質問
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解決
1969(昭和44)年に中央線の中野~三鷹間が複々線化した際の「杉並三駅問題」について調べています。
当初の国鉄の方針(快速電車が阿佐ヶ谷駅・高円寺駅・西荻窪駅(杉並三駅)を通過)に対して、住民や議員の反対運動が起きたらしく、より詳しい事情が知りたいです。
- 回答
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「杉並三駅問題」とその反対運動に関わる情報ということで調査したところ、以下の資料が見つかりました。
<全国紙の記事>
全国紙では、次のような関連記事がありました。
※過去の新聞は、各新聞社で刊行している縮刷版のほか、「朝日新聞クロスサーチ」(『朝日新聞』)、「ヨミダス歴史館」(『読売新聞』)、「毎索」(『毎日新聞』)などのデータベースでも閲覧ができます。なお、「中央線 複々線」というキーワードで1961(昭和36)年~1969(昭和44)年前後の記事を検索すると、関連記事がヒットしやすいようです。
・「中央線複々線問題に意義 地元、国鉄案撤回求む」(『朝日新聞』、1961(昭和36)年4月27日、朝刊、P.12)
→この問題に異議を唱えた地元の代表として、「中央線複々線対策連合委員会」(以下、「中複連」)という組織があり、この委員会は「国鉄五カ年計画が発表された三十二年に地元町会、商店会、学校など町ぐるみで結成、地元の交渉団体として認められている」とあります。また、「このほど地元選出の議員や加藤杉並区長など顧問団と委員会代表が滝田国鉄常務理事らに会い再考を望んだ」ともあります。
・「「快速」に沿線の風圧 複々線化の国電中央線 各駅停車きまる」(『朝日新聞』、1968(昭和43)年12月29日、朝刊、P.13)
→同年12月28日、中野-三鷹間で快速電車が各駅に停車すると決定したことを報じた記事です。「東京四区選出の国会議員団が超党派であっせんに乗出し」たことが伝えられているほか、この決定に対して反発する石川青梅市長のコメントも掲載しています。
・「快速中央線 "各停" で冷戦」(『朝日新聞』、1969(昭和44)年3月8日、朝刊、P.16)
→この問題に関して対立する前述の中複連や「武蔵野商工会議所」ら東側の関係者と、立川市、青梅市、昭島市など西側の関係者との「冷戦状態」を報じた記事です。
・「集会・署名集め、反対協議会を結成 杉並区の中央線ダイヤ改正」(『朝日新聞』、1994(平成6)年10月16日、朝刊)
→1994年にJR東日本がダイヤ改正を行い、土曜日は快速電車に杉並三駅を通過させることにしようとしたところ、地元で起きた反対運動について報じています。この中で、26年前に国鉄と区の間で交わされた覚書のことにも触れており、問題が再燃している様子がわかります。
<地元紙の記事>
杉並区内で当時刊行されていた『杉並新聞』という地元紙を確認したところ、下記の記事がありました。
・「中野-三鷹間複々線化の諸問題」(1961(昭和36)年4月20日、23日、27日、5月4日、7日、11日、いずれもP.1)
→全6回の連載で、中複連の深瀬正一委員長が、この問題について取り上げています。
・「結末をしっかり 完成近づく複々線工事 地元対策委要望」(1968(昭和43)年9月12日、P.1)
→中複連の深瀬正一委員長ら幹部が、顧問団、関係地域団体代表ら約100人の連署を持って、国鉄と東京第二工事局を訪問し、複々線工事完成前に解決してもらいたい地元側の要望事項(阿佐谷二番街の側道整備など)を提出したことを報じています。
・「代議士や都議も超党派で 快速電車問題で地元対策委が要望書」(1968(昭和43)年11月24日、P.1)
→中複連が、新たに同委員に加わった荻窪地区発展協議会(宇田川圧右衛門(※紙面ママ)議長)の代表、衆院議員、都議などと共に、国鉄総裁に「荻窪-三鷹間高架複々線開通後における杉並四駅の快速停車について」の要望書を提出した旨を報じています。末尾に、顧問団メンバーの氏名も記載されています。
・「あす緊急臨時総会 快速停車運動で第二弾 複々線対策委」(1968(昭和43)年11月28日、P.1)
→中複連が阿佐ヶ谷の新東京会館で緊急臨時総会を開くこと、また、杉並区議会が運輸大臣と国鉄総裁あての意見書を決議、杉並区議会として申し入れを行うと決定したことなどを報じています。
・「速やかにダイヤ示せ 快速電車 住民大会で決議」(1968(昭和43)年12月1日、P.1)
→中複連が緊急臨時総会にて、昭和44年4月以降のダイヤを速やかに示し沿道住民の不安と動揺を鎮めるよう国鉄総裁に要請する決議を採択したことを報じています。末尾に、当日の主要な列席者の氏名が挙げられています。
・「駅頭で決起大会 快速無停車反対運動 あすから区内四駅で」(1968(昭和43)年12月8日、P.1)
→区内沿道住民の反対運動の広がりを伝える記事で、町会婦人会の緊急代表者会による署名運動、中複連によるチラシ・ステッカーの掲出、同年12月9日に高円寺駅、10日に西荻窪駅、11日に阿佐谷駅周辺で街頭総決起大会が行われることなど、さまざまな動きについて報じています。
・「区議会 特別委員会設置へ 快速停車問題に総力」(1968(昭和43)年12月19日、P.1)
→この問題を受けた杉並区議会が、12月19日に開会される臨時本会議で、快速電車対策特別委員会(仮称)を発足させることを報じています。
・「中央線対策特別委員会が発足 区議会 26日に運動の第一弾」(1968(昭和43)年12月22日、P.1)
→12月19日、杉並区議会が、議会運営委員会全員(15人)を構成員とする「中央線対策特別委員会」の設置を決議したと報じています。同委員の委員長は自民党区議団幹事長の大山安年議員、副委員長は社会党の滝沢次夫議員とあります。また、中複連が先の街頭総決起大会での決議文を持って国鉄を訪問した旨も書かれています。
・「快速引続き停車 国鉄 地元代議士の斡旋受諾」(1969(昭和44)年1月1日、P.7)
→国鉄と杉並区当局が、岡崎英城代議士起草の「四区選出代議士の斡旋案」を受諾した旨を報じています。
<区議会だより>
・『杉並区議会だより No.1-40』(杉並区議会事務局/編、1974年、S11.31ス)
→No.12(昭和44年1月14日発行)のP.1に、杉並区と日本国有鉄道との間で交わされた覚書の全文があります。また、P.3には、昭和43年11月27、29日の定例会本会議で可決された「国鉄中央線快速電車区内4駅無停車の計画変更に関する意見書」のあらましも掲載されています。
なお、この「覚書」についての記述は、下記の資料にもありました。
・『広報すぎなみ 縮刷版 No.9 平成6年度〜平成8年度 』(杉並区企画部広報課/編、東京都杉並区、1998年、S11.31キ)
→平成7年3月21日版、3面「中央線における土曜日の休日ダイヤ化について」
・『新天沼・杉五物がたり 付荻窪物語』(記念誌編集委員会/編、杉並第五小学校創立七十周年記念事業実行委、1996年、S11.21ス、P.285)
・『広聴’94 平成6年度版』(杉並区区政情報室広聴課、1995年、S11.31キ、P.26)
<区議会会議録>
前述の『杉並新聞』の記述をまとめると、杉並区議会では少なくとも下記の日時にこの問題について取り上げており、そのときの会議録が残っているものと思われます。(日付は報道ベースなので、厳密には前後する可能性もあります)
・昭和43年11月27日 定例本会議「中央線快速電車の杉並四駅無停車反対に関する意見書」を決議
・昭和43年12月19日 臨時本会議「中央線対策特別委員会」の発足を決議
ただし、当館で所蔵する『杉並区議会会議録』は昭和45年以降のものとなっており、詳細を確認することができませんでした。街頭の記録の閲覧をご希望の場合は、大変恐れ入りますが、下記URLをご参照の上、「区政資料室」にお問い合わせいただけますでしょうか。
「区政資料室」では、昭和41年以降の『杉並区議会会議録』を所蔵しております。
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kusei/etsuran/1005308.html
なお、単行書や雑誌記事なども調査いたしましたが、この問題の詳細がわかるようなものは発見できませんでした。下記は、すでに調査済資料として挙げていただいた資料と同様のレベルの簡単な記事ですが、念のためご紹介いたします。
・『JR中央線・青梅線・五日市線各駅停車』(山田 亮/著、洋泉社、2016年、S00.68ヤ)
→P.71に関連コラムがあります。
・『中央線オレンジ色の電車今昔50年』 (三好 好三/著、JTBパブリッシング、2008年、686ミ)
→P.155-156に「中野-三鷹間の高架複々線化と東西線直通」という節があり、昭和39年当時の阿佐ヶ谷駅のホームの写真などが掲載されています。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・『JR中央線沿線の不思議と謎 東京近郊編』(天野 宏司/監修、実業之日本社、2018年、686シ)
・『東京の鉄道ネットワークはこうつくられた』(高松 良晴/著、交通新聞社、2015年、S00.68タ)
・『鉄道ジャーナル』No.604、2017年2月号(鉄道ジャーナル社)
- NDC
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- 日本史 (21)
- 政治 (31)
- 運輸.交通.観光事業 (68)
- 参考資料
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区議会広報委員会 編. 杉並区議会だより : ぎかい. [東京都] 杉並区議会, 1966.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000095747 -
杉並区総務部広報課 編. 広報すぎなみ 縮刷版. 杉並区総務部, 2019.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000102939 - 記念誌編集委員会/編. 新天沼・杉五物がたり 付荻窪物語. 杉並第五小学校創立七十周年記念事業実行委, 1966.
- 広聴’94 平成6年度版. 杉並区区政情報室広聴課, 1995.
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山田亮 著. JR中央線・青梅線・五日市線各駅停車. 洋泉社, 2016.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027258287 , ISBN 978-4-8003-0858-0 -
三好好三, 三宅俊彦, 塚本雅啓, 山口雅人 著. 中央線オレンジ色の電車今昔50年 : 甲武鉄道の開業から120年のあゆみ. JTBパブリッシング, 2008. (キャンブックス = Can books ; 鉄道 84)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009306773 , ISBN 978-4-533-06992-5
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区議会広報委員会 編. 杉並区議会だより : ぎかい. [東京都] 杉並区議会, 1966.
- キーワード
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- 中央線
- 阿佐ヶ谷駅
- 高円寺駅
- 西荻窪駅
- 杉並三駅問題
- 照会先
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- 杉並区区政資料室
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000348665