レファレンス事例詳細

明治4年（1871年）5月の太政官布告により、日本全国の神社は官社（かんしゃ）（各大・中・小の官弊社と国弊社、および別格官弊社）と諸社（しょしゃ）（府県社、郷社、村社、無格社）に大別され、各社の神職も世襲制から一新されることになった。うち、郷社は郷村の産土神（うぶすながみ）を祀り、村社よりも崇敬範囲が広く、一地方にわたって崇敬される中心的神社という基準が制定された。
布告を受けた大阪府は明治5年(1872年)11月に、府内の神社を国の定めた基準に大別するという府令を出した。この府令の中で、垂水神社は府内の郷社一覧に名を連ねている。（格付けの年を明治6年(1873年)とする資料もある。）
郷社とされた理由は、古くから郷村の水の神として朝廷に重用されてきた名社であること、兵火で規模が縮小することがあっても、祈雨疾病守護の神として地域で崇敬されていること、等が記録に残っている。
（参考：(1)(2)(3)(6)(7)及び垂水神社のサイト内「由緒」（最終確認2025.1.16））

以下の資料を提供した。
・「社格」「郷社」について
(1)『神道大辞典』（臨川書店　1986.4） p510　「ゴーシャ（郷社）」の説明（選定の基準値）と、太政官布告本文の一部、郷社に関わる内容を掲載。
(2)『日本国語大辞典　第5巻　第2版』（小学館国語辞典編集部／編集　小学館　2001.5）p303　「郷社」の説明（選定の基準値）と、太政官布告の公布時期、郷社に関わる内容を掲載。

・太政官布告の本文
(3) 『法規分類大全　〔第34〕　社寺門　第1　神社第1』（内閣記録局／編　内閣記録局　1891）p95～p121
(4) 『法規分類大全　第26巻　社寺門』（内閣記録局／編　原書房　1988）
p95～p97　 「神宮以下大小神社ノ世襲神職ヲ廃シテ精選補任セシム　布告　四年五月十四日～天下大小ノ神官社家ニ至ル迄精選補任可致旨被　仰出候事」の本文を掲載。
p111　　　 布告中に郷社の基準を掲載。
p119～p120 布告中に郷社選定の基準を掲載。

・太政官布告を受けた大阪府の動向
(5) 『大阪百年史』（大阪府／編集　大阪府　1968） p1321　年表の「明治五年」の項目に「一一月〔原文ママ〕　四大組・二三区の府社・郷社を布達」と掲載。

(6)『大阪府布令集　1』（大阪府史編集室／編集　大阪府　1971）p669～p672　「明治五年」の章に「十一月　神社制度ノ改正」の本文を掲載。別紙に相当する部分に「郷社」に格付けされた府内神社の一覧があり、そこに「垂水神社　同（※豊島）群第三区垂水村」と掲載。

・垂水神社の社格決定の経緯
(7) 『府県郷社明治神社誌料　上』（明治神社誌料編纂所／編　明治神社誌料編纂所　1912）「大阪府之群」p65　垂水神社の来歴と、明治時代に郷社とされた理由を掲載。
「大阪府摂津国豊能郡豊津村大字垂水　郷社　垂水神社」の項目に「神威赫々たる名社たりしが、中古兵火にかゝりて規模前日の如くならずと雖も今猶ほ祈雨疾病守護の神として地方の崇敬頗る厚し、明治六年郷社に定めらる。」