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レファレンス事例詳細

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事例作成日
2018/05/20
登録日時
2018/07/30 00:30
更新日時
2018/07/30 00:30
提供館
大阪府立中央図書館 (2120005)
管理番号
6001032541
質問

解決

津本陽の『下天は夢か』を読んでいたところ、「化天」の方が正しいかもしれないと言われた。「下天」は誤りなのか。
回答
織田信長関連の史料ならびに出典の幸若舞の『敦盛』の表記を調査しました。調査した資料の中から一部紹介します。
1.「下天」と表記されている資料
・『改定史籍集覧 第19冊:新加通記類』(近藤瓶城/編 臨川書店 1984.2)
p.31信長の家臣である太田牛一が記した信長の伝記『信長公記』が収録されています。

・『信長記:上』(小瀬甫庵/撰 現代思潮社 1981.9)
p.59安土桃山時代・江戸時代前期の儒学者の小瀬甫庵による信長の伝記です。

・『定本常山紀談:上』(湯浅常山/著 新人物往来社 1979.4)
p.52戦国時代を中心にした合戦の物語集です。

・『寛永版舞の本』(須田悦生/[ほか]編 三弥井書店 1990.5)
p.189『敦盛』が収録されています。

2.「化天」と表記されている資料
・『幸若舞:3』(荒木繁/編注 平凡社 1983.10)
p.90『敦盛』が収録されています。

・『新日本古典文学大系59:舞の本』(佐竹昭広/[ほか]編集委員 岩波書店 1994.7)
p.227『敦盛』が収録されています。ただし、脚注には「一説に「下天(げてん)」とする」との記述があります。

3.その他
・『幸若舞曲研究:第7巻』(吾郷寅之進/編 三弥井書店 1992.1)
この資料には『敦盛』が2点収録されています。
p.344京都大学付属図書館蔵「幸若直熊本」の『敦盛』には、「人間五十年ケテンノ内ヲ」と記されています。
p.467甘木市秋月郷土館黒田文庫蔵『舞の本』の『あつもり』の方は、「にんげん五十ねん。げてんのうちを」と記されています。

・『日本国語大辞典 第4巻:第2版』(小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001.4)
p.1402-1403「けてん(化天)」と「げてん(下天)」とそれぞれ項目がありましたが、「げてん(下天)」の項目に幸若・敦盛の引用が掲載されていました。引用文は「人間五十年けてむの内を」と記されています。

・『角川古語大辞典 第2巻』(中村幸彦/編 角川書店 1984.3)
p.353こちらも「けてん(化天)」と「げてん(下天)」とそれぞれ項目がありましたが、上記資料同様「げてん(下天)」の項目に幸若・敦盛の引用が掲載されていました。引用文は「人間五十年、けてむの内を」と記されています。

以上のように資料によってそれぞれ表記が異なっています。よって、どの表記が誤りとはいえないようです。

なお、この「下天」と「化天」に関して記述されている資料があります。それぞれ筆者の見解が記されていますので参考までに紹介します。
・『幸若舞1:百合若大臣他 』(荒木繁/編注 平凡社 1979.6)
p.335-337巻末の「解説・解題」に「戦国武将と幸若舞」という項があり、「『信長公記』には「下天」とあるが、正しくは化天の字を宛てるべきものと思われる」として編注者の解説が記されています。

・『現代日本文學大系16:正宗白鳥集』(筑摩書房 1969.7)
p.213「安土の春」という戯曲が収録されており、「敦盛」を舞う場面は「化転」と記述されています。
p.417-418巻末の「正宗白鳥の生涯」(後藤亮/著)に註として「本文の「化転」は、信長公記には「下天」、幸若舞の曲節集には「げてん」とあるが、それは「化天」であろう」と記されています。

・『日本のルネッサンス人』(花田清輝/著 朝日新聞社 1974.5)
p.185-196「舞の本」と題する一文が収録されており「敦盛」について述べられています。複数の資料から「敦盛」が引用されており、「下天」、「化天」いずれもが使用されている例を見ることができます。

・『姉川の四人』(鈴木輝一郎/著 毎日新聞社 2013.8)
p.103「信長は、「化天」を「下天」と読み替え、この一節だけを、しつこく繰り返し謡っていることだけは、家康も知っていた」という件があります。一小説家の解釈として、紹介します。

[事例作成日:2018年6月7日]
回答プロセス
事前調査事項
NDC
  • 日本 (281 8版)
  • 各種の演劇 (775 8版)
  • 日本文学 (910 8版)
参考資料
  • 改定史籍集覧 第19冊 近藤/瓶城∥編 臨川書店 1984.2   (31)
  • 信長記 上 小瀬/甫庵∥撰 現代思潮社 1981.9   (335-337,266)
  • 定本常山紀談 上 湯浅/常山∥著 新人物往来社 1979   (52)
  • 寛永版舞の本 須田/悦生∥[ほか]編 三弥井書店 1990.5   (189)
  • 幸若舞 3 荒木/繁∥編注 平凡社 1983.10   (90)
  • 新日本古典文学大系 59 佐竹/昭広∥[ほか]編集委員 岩波書店 1994.7   (227)
  • 幸若舞曲研究 第7巻 吾郷/寅之進∥編 三弥井書店 1992.1   (344,467)
  • 日本国語大辞典 第4巻 第2版 小学館国語辞典編集部∥編集 小学館 2001.4   (1402-1403)
  • 角川古語大辞典 第2巻 中村/幸彦∥編 角川書店 1984.3   (353)
  • 幸若舞 1 荒木/繁∥編注 平凡社 1979.6   (335-337)
  • 現代日本文學大系 16 筑摩書房 1969.7   (417-418)
  • 日本のルネッサンス人 花田清輝著 朝日新聞社 1974   (185-196)
  • 姉川の四人 鈴木/輝一郎∥著 毎日新聞社 2013.8   (103)
キーワード
照会先
寄与者
備考
調査種別
事実調査
内容種別
その他
質問者区分
個人
登録番号
1000239772
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000239772 コピーしました。
アクセス数 7274
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