レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/11/29
- 登録日時
- 2025/03/22 23:12
- 更新日時
- 2025/05/03 16:00
- 管理番号
- 豊田市中央008
- 質問
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解決
サックスブルーの語源を知りたい。検索するとドイツザクセン地方の青色という意味だそうだが、なぜザクセン地方が青色と結びつくのか?州の旗は緑と白で青色には関係がないことからも、青色にどんなゆかりがあるのかを調べてほしい。
- 回答
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今日サックスブルーと呼ばれる青色染料の製造法は、ドイツのザクセン地方の町グローセンハイン(Grossenhain)生まれのヨハン・クリスチャン・バルト(Johann Christian Barth 1700年頃~1759年)により1743年に発見され、その色名は、バルト自身が自らの出身地のザクセン地方にちなんで名付けたもの。ただし、これは2つの出典元資料に基づいており、そのどちらも当館未所蔵のため最終的に正確な情報は確認できず。※片方の出典元資料は国内の他機関に所蔵があり、利用可能。(回答①)
ドイツのザクセン地方は隣接するチューリンゲン地方とともに、歴史上の一定期間、青色染料の一大産地だったことから、青色にゆかりの深い地域だと言える。(回答②)
その他、回答プロセス参照。
- 回答プロセス
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A. 基本事項を確認する(当館所蔵の参考資料および契約データベース)
A-1. 「サックスブルー」の原語表記および意味の確認(同時に、外国語検索用語の確保)
【1】『ザ・コンサイス・オックスフォード・ディクショナリー』Oxford University Press〔オックスフォード〕、1995年。
・p.1228 の項目“saxe blue”に、「グレーの色合いを含んだライト・ブルー色(英語原文を引用者翻訳)」とある。
・同ページの項目“saxe”には、「saxe a. & adj. =SAXE BLUE [フランス語=Saxony, この色の染料の名称の語源](英語原文一部を引用者翻訳)」とある。
【2】『研究社新和英大辞典』渡邉敏郎/編、研究社、2003年。
p.1065の項目「ザクセン」には、「ザクセン [ドイツ東部の州] Saxony;[ドイツ語名] Sachsen」とある。A-2. 以上(A-1)の情報に基づき、ドイツ・ザクセン地方について調べる
【3~5】『世界地名大事典』4~6 竹内啓一/総編集、朝倉書店、2016年。
『世界地名大事典』第4巻p.552の項目「エアフルト」、第5巻p.1234の項目「ザクセン州」およびp.1828の項目
「チューリンゲン州」、第6巻p.3534の項目「ワイマール」からは、現在ザクセン地方と呼ばれている地域は歴史
的/地理的にかならずしも一定しておらず、しばしば西隣のチューリンゲン地方と重なる地域のことを指した
とわかる。(回答前提1)B. 当館所蔵の図書資料を調べる(OPACとブラウジング)
【6】『色の名前事典519 データ、由来など豊かなる色の魅力がすべてわかる』福田邦夫/著、主婦の友社、2023年。
p.152に、サックスブルーとは「1753年[1743年の誤りか?]以来、この地[=ザクセン地方、ドイツ]で染められた藍染の、淡
い青色を表して(角カッコ引用者)」いるとある。(回答前提2)
【7】『色の百科事典』日本色彩研究所/著、丸善、2005年。
p.510に、ザクセン地方は、18世紀以降に藍染と結びつくようになる以前から青い色に関係が深く、たとえば16世紀に「“サ
クソニーブルー(Saxony blue)”はコバルトガラスのスマルト(smalt)のこと」だったとある。(回答前提3)
【8】『色:世界の染料・顔料・画材:民族と色の文化史』アンヌ・ヴァリション/著、河村真紀子、木村高子/訳、マール社、2009年。
p.184に、13世紀以降、大青(タイセイ:藍色染料の原料となる草)がドイツのザクセン地方やチューリンゲン地方を始めと
するヨーロッパ各地で栽培されるようになったとある。(回答前提4)C. Web上の日本語論文資料を調べる(CiNii Research [https://cir.nii.ac.jp])
【9】「ヨーロッパの藍染め:ウォードの成り立ちと変遷」閏間正雄/著『文化ファッション大学院大学紀要論文集ファッションビジ
ネス研究』2、p.82-87、2012年。
p.84に、「6世紀頃(中略)ドイツのチューリンゲン地方[現在のザクセン地方の西隣]では数千トンもの藍玉を生産・出
荷、ヨーロッパ中の毛織物に青色染料を提供し、藍貿易の中心地となり、地域に多大な経済的恩恵をもたらした(角
カッコ引用者)」とある。(回答前提5)D. Web上の外国語論文資料を調べる(Google Scholar [https://scholar.google.com])
【10】“Indigo carmine: Understanding a problematic blue dye.” Keijzer de, Matthijs et al. Contributions to the Vienna
Congress 2012, p.S87-S95, 2012.
p.S87に、「サックスブルー」の名称の由来についての記載があり、その英語原文の引用者翻訳による概要は、以下のと
おり。
今日サックスブルーと呼ばれる青色染料の製造法は、ドイツのザクセン地方の町グローセンハイン(Grossenhain)
生まれのヨハン・クリスチャン・バルト(Johann Christian Barth 1700年頃~1759年)により1743年に発見され、そ
の色名は、バルト自身が自らの出身地であるザクセン地方にちなんで名付けたものである。(回答①*)
※ただし、この記載は、同論文に参考文献として挙げられている下の2つの出典元資料に基づく。(回答①**)
1) Grossenhainer Pflege: eine landeskundliche Bestandsaufnahme im Raum Grossenhain und
Radeburg. Hanspach, D., Porada, H.T. Böhlau, 2008.
2) “Synthetic Dyes Before 1860.” Farrar, W.V. Endeavour 33, p.149-55, 1974.E. 上の【10】の英語論文の参考文献にある1)と2)の資料について調べる(OPAC、Google Scholar、Googleブックス [https:
//books.google.co.jp] およびCiNii Research )
両方の資料が当館未所蔵と判明。1)については国内にも未所蔵だが、2)については、愛知県内をはじめ国内大学図書館
に所蔵があり利用可能。(回答①***)F. 同じく【10】の英語論文より得られた人物情報 ヨハン・クリスチャン・バルト(Johann Christian Barth)について、当館所蔵の参考資料を調べたが、いずれの資料からも情報は得られなかった。
そして、上記のうち、(回答①*)(回答①**)および(回答①***)より(回答①)が得られ、また(回答前提1~5)および(回答①*)より以下のことがわかる。
ドイツのザクセン地方は隣接するチューリンゲン地方とともに、歴史上の一定期間、青色染料の一大生産地であったことか
ら、青色にゆかりが深い地域だと言える。(回答②)以上
- 事前調査事項
- NDC
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- デザイン.装飾美術 (757 10版)
- 絵画材料.技法 (724 10版)
- 地理.地誌.紀行 (290 10版)
- 参考資料
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The Concise Oxford dictionary of current English / first edited by H.W. Fowler and F.G. Fowler. 9th ed. / edited by Della Thompson. Clarendon Press, 1995.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003241410 , ISBN 0198613202 (当館資料番号:0112130141 館外貸出不可) -
渡邉敏郎, E.R.Skrzypczak, P.Snowden 編. 研究社新和英大辞典 第5版. 研究社, 2003.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004199350 , ISBN 4-7674-2026-1 (当館資料番号:0116617137 館外貸出不可) -
竹内啓一 総編集 , 熊谷圭知, 山本健兒 編集幹事. 世界地名大事典 4. 朝倉書店, 2016.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027150562 , ISBN 978-4-254-16894-5 (当館資料番号:0119504927 館外貸出不可) -
竹内啓一 総編集 , 熊谷圭知, 山本健兒 編集幹事. 世界地名大事典 5. 朝倉書店, 2016.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027154819 , ISBN 978-4-254-16895-2 (当館資料番号:0119507294 館外貸出不可) -
竹内啓一 総編集 , 熊谷圭知, 山本健兒 編集幹事. 世界地名大事典 6. 朝倉書店, 2016.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027157735 , ISBN 978-4-254-16896-9 (当館資料番号:0119507301 館外貸出不可) -
福田邦夫 著 , 日本色彩研究所 監修. 色の名前事典519 : データ、由来など豊かなる色の魅力がすべてわかる 増補改訂版. 主婦の友社, 2023.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032578216 , ISBN 978-4-07-453115-8 (当館資料番号:7010932629) -
日本色彩研究所 著. 色の百科事典. 丸善, 2005.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007927920 , ISBN 4-621-07542-X (当館資料番号:0117439423) -
アンヌ・ヴァリション 著 , 河村真紀子, 木村高子 訳. 色 : 世界の染料・顔料・画材 : 民族と色の文化史. マール社, 2009.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010065601 , ISBN 978-4-8373-0171-4 (当館資料番号:0118438680) -
閏間正雄. ヨーロッパの藍染め:ウォードの成り立ちと変遷. 文化ファッション大学院大学紀要論文集ファッションビジネス研究 2号 p. 82-87, 2012. ISSN 2435-9688
文化学園リポジトリ(https://bunka.repo.nii.ac.jp/records/1778)002031102_09.pdf (最終閲覧日:2025/3/15 全文閲覧可) -
Matthijs de Keijzer, Maarten R. van Bommel, Regina Hofmann-de Keijzer, Regina Knaller, Edith Oberhumer. Indigo carmine: Understanding a problematic blue dye. Contributions to the Vienna Congress 2012. p.S87-S95, 2012.
https://www.researchgate.net/profile/Regina-Keijzer/publication/272310463_Indigo_carmine_Understanding_a_problematic_blue_dye/links/5593b30508aed7453d46825e/Indigo-carmine-Understanding-a-problematic-blue-dye.pdf (最終閲覧日:2025/3/15 全文閲覧可)
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The Concise Oxford dictionary of current English / first edited by H.W. Fowler and F.G. Fowler. 9th ed. / edited by Della Thompson. Clarendon Press, 1995.
- キーワード
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- サックスブルー、サクソンブルー、サクソニーブルー
- saxe blue
- ザクセン
- Saxony, Sachsen
- チューリンゲン
- 染料
- 青色染料
- 藍
- 藍染
- ヨハン・クリスチャン・バルト
- Johann Christian Barth
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000365036