レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年09月04日
- 登録日時
- 2025/03/18 18:33
- 更新日時
- 2025/03/18 18:33
- 管理番号
- 9000045009
- 質問
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解決
(1)菌従属栄養植物の種類と生息場所等について知りたい。
(2)なぜ菌根菌が菌従属栄養植物に付くのか知りたい。
- 回答
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(1)菌従属栄養植物の種類や生態については、以下の図書に記述があった。
・『菌根の世界』(齋藤 雅典/編著 築地書館 2020年)pp.177~213に「第6章 菌類を食べる植物-菌従属栄養植物の菌根共生(大和政秀/著)」あり。菌従属栄養植物の説明や種類等の記述あり。ベニバナイチヤクソウ、キンラン、ギンリョウソウの口絵写真あり。本文には多くの種類が紹介されている。
・『もっと菌根の世界』(齋藤 雅典/編著 築地書館 2023年)pp.151~185に「第4章 光合成をやめた不思議な植物「菌従属栄養植物」をめぐる冒険(末次健司/著)」あり。菌従属栄養植物と菌根菌の関係等について説明あり。コウベタヌキノショクダイ、ホシザキシャクジョウ、シロシャクジョウ、タカクマソウ、ヒメノヤガラ、タブガワムヨウラン、ギンリョウソウ、キリシマギンリョウソウ、ツチアケビ、キバナノショウキラン、イモネヤガラ、モイワランの口絵写真あり。
・『「植物」をやめた植物たち』(末次 健司/文・写真 福音館書店 2024年)は、1冊すべて菌従属栄養植物の本。写真とともに多くの種類が掲載されている。
(2)なぜ菌根菌が菌従属栄養植物に付くのかについては、解明されていないとの記述がみられた。
・『菌根の世界』p.210に「なぜ菌従属栄養植物において宿主特異性が高まるのか、その理由については宿主特異性のメカニズムとともにいまだ不明であるが、(後略)」とある。
・『もっと菌根の世界』p.180「残された大きな課題」には、未解決の課題として「菌従属栄養植物は、どのようなメカニズムで、菌をだまして養分を略奪できるようになったのか?」とある。
・『技あり!モーレツ植物ずかん3 植物にパラサイトする系・菌にパラサイトする系』(長谷部 光泰/監修 鈴木出版 2024年発行)のp.33に「菌従属栄養植物は、ふつうの植物が菌類を呼ぶのと似た物質を出して菌類をだましておびき寄せているのではないかと考えられていますが、(後略)」とある。
- 回答プロセス
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1.事前調査資料『超・進化論 生命40億年地球のルールに迫る』(NHKスペシャル取材班/著 講談社 2023年)を確認。
pp.43~48「第1章 植物」の「地下に広がる知られざるネットワーク」およびpp.79~85「インタビュー4タミル・クライン」に、菌従属栄養植物についての記述があった。森林の地下に張り巡らされた菌糸によって、植物同士で養分等をやりとりしていることが発見されたと書かれている。
2.自館業務システムで、「菌従属栄養植物」をキーワードに全項目検索。
一般図書2件、児童図書1件ヒット。
・『菌根の世界』(齋藤 雅典/編著 築地書館 2020年)pp.177~213に「第6章 菌類を食べる植物-菌従属栄養植物の菌根共生(大和政秀/著)」あり。菌従属栄養植物の説明や種類等の記述あり。
・『もっと菌根の世界』(齋藤 雅典/編著 築地書館 2023年)pp.151~185に「第4章 光合成をやめた不思議な植物「菌従属栄養植物」をめぐる冒険(末次健司/著)」あり。菌従属栄養植物のしくみ等について説明あり。p.180「残された大きな課題」には、未解決の課題として「菌従属栄養植物は、どのようなメカニズムで、菌をだまして養分を略奪できるようになったのか?」とある。
・『「植物」をやめた植物たち』(末次 健司/文・写真 福音館書店 2024年)は、1冊すべて菌従属栄養植物の本。写真が多く掲載されている。
3.業務システムで、「大和政秀」および「末次健司」をキーワードに著者名検索。
・「大和政秀」では、『菌根の世界』のみヒット。
・「末次健司」では、『「植物」をやめた植物たち』の元となった「たくさんのふしぎ 2023年9月号」(福音館書店)がヒット。同様の内容。
4.自館業務システムで、「菌根」をキーワードに全項目検索。
ヒットした中から該当しそうな資料を確認。
・『根と共生して作物を強くする菌根菌の活かし方』(依藤 敏昭/著 農山漁村文化協会 1995年)pp.8~15に、菌根菌について解説があった。
5.2および3の調査から、菌従属栄養植物の代表的な種に「ギンリョウソウ」があることが分かったため、自館業務システムで、「ギンリョウソウ」をキーワードに全項目検索。
『技あり!モーレツ植物ずかん 3 植物にパラサイトする系・菌にパラサイトする系』(長谷部 光泰/監修 鈴木出版 2024年)pp.25~36「菌にパラサイトする系」に、菌従属栄養植物についての解説あり。
p.33に、菌従栄養植物も、他の植物と同様に菌類をおびきよせる物質を出していると思われる、という解説があった。
6.「菌類」の書架を調査。
・『基礎から学べる菌類生態学』(大園 享司/著 共立出版 2018年)pp.98~112「第6章 菌根菌」には、菌従属栄養植物に関する記述はなかった。
・『菌類のふしぎ』(国立科学博物館/編 東海大学出版部 2014年)pp.178~186「植物とともに生きている菌類:菌根共生」には、菌従属栄養植物に関わる菌類の説明があった。
・『菌類の隠れた王国』(キース・サイファート/著 白揚社 2024年)pp.102~109「地下からの手紙-菌根菌と根圏菌」には、菌従属栄養植物に関わる菌類の説明があった。
7.インターネットで「菌従属栄養植物」をキーワード検索。
日本植物学会のHP等に掲載の論文等がヒット。かつては動物の死体や腐葉土等を養分としていると考えられていたため、「腐生植物」とも呼ばれていたことが分かる。
8.自館業務システムで、「腐生植物」をキーワードに全項目検索。
・『森を食べる植物 腐生植物の知られざる世界』(塚谷 裕一/著 岩波書店 2016年)に、様々な種類の菌従属栄養植物が紹介されている。
・『雨の日は森へ 照葉樹林の奇怪な生き物』(盛口 満/著 八坂書房 2013年)pp.184~204に、菌従属栄養植物について書かれている。
9.国立国会図書館サーチで、「菌従属栄養植物」をキーワード検索。
19件ヒットした中で所蔵資料を確認。
・『植物学の百科事典』(日本植物学会/編 丸善出版 2016年)pp.280~281「菌根」、pp.396~397「独立栄養と従属栄養」に若干の解説あり。
・『広葉樹資源の管理と活用』(鳥取大学広葉樹研究刊行会/編 海青社 2011年)pp.64~69「4.5菌従属栄養植物の菌根共生」に、菌従属栄養植物の説明や種類等の簡単な記述あり。
雑誌は所蔵がなかったが、国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能なものの他、インターネット上で公開されている論文もある。生育環境の解明や移植について書かれている論文もある。
- 事前調査事項
- NDC
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- 一般植物学 (471 10版)
- 森林立地.造林 (653 10版)
- 参考資料
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齋藤雅典 編著. 菌根の世界 : 菌と植物のきってもきれない関係. 築地書館, 2020.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I030628443 , ISBN 978-4-8067-1606-8 (口絵,pp.177-213,210, 請求記号474.7/サイ/, 資料番号0107513723) -
齋藤雅典 編著. もっと菌根の世界 : 知られざる根圏のパートナーシップ. 築地書館, 2023.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033020302 , ISBN 978-4-8067-1655-6 (口絵,pp.151-185,180, 請求記号474.7/サイ/, 資料番号0107833634) -
末次健司 文・写真. 「植物」をやめた植物たち. 福音館書店, 2024. (たくさんのふしぎ傑作集)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033758747 , ISBN 978-4-8340-8811-3 (1冊, 請求記号471/スエ/, 資料番号0107951899) - たくさんのふしぎ 2023年9月号 1冊
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依藤敏昭, 鈴木源士 著. 根と共生して作物を強くする菌根菌の活かし方 : Dr.キンコンの効果と利用. 農山漁村文化協会, 1995. (民間農法シリーズ)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002406556 , ISBN 4-540-94168-2 (pp.8-15, 請求記号613.5/ヨリ/, 資料番号0105972186) -
長谷部光泰 監修. 技あり!モーレツ植物ずかん 3. 鈴木出版, 2024.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033393159 , ISBN 978-4-7902-3430-2 (pp.25-36,p.33, 請求記号470/ワザ/3, 資料番号0107905523) -
国立科学博物館 編 , 細矢剛 責任編集. 菌類のふしぎ : 形とはたらきの驚異の多様性 第2版. 東海大学出版部, 2014. (国立科学博物館叢書 ; 9)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I025502764 , ISBN 978-4-486-02026-4 (pp.178-186, 請求記号474.7/キン/, 資料番号0106407810) -
キース・サイファート 著 , 熊谷玲美 訳. 菌類の隠れた王国 : 森・家・人体に広がるミクロのネットワーク. 白揚社, 2024.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033537184 , ISBN 978-4-8269-0260-1 (pp.102-109, 請求記号474.7/サイ/, 資料番号0107923849) -
塚谷裕一 著. 森を食べる植物 : 腐生植物の知られざる世界. 岩波書店, 2016.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027263198 , ISBN 978-4-00-006059-2 (1冊, 請求記号471.7/ツカ/, 資料番号0106633639) -
盛口満 著. 雨の日は森へ : 照葉樹林の奇怪な生き物. 八坂書房, 2013.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I024318109 , ISBN 978-4-89694-152-4 (pp.184-204, 請求記号653.1/モリ/, 資料番号0106276470) -
日本植物学会 編. 植物学の百科事典. 丸善出版, 2016.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027346171 , ISBN 978-4-621-30038-1 (pp.280-281, 請求記号470.3/ショ/, 資料番号0106633175) -
鳥取大学広葉樹研究刊行会 編 , 古川郁夫, 日置佳之, 山本福壽 監修. 広葉樹資源の管理と活用. 海青社, 2011.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011140252 , ISBN 978-4-86099-258-3 (pp.64-69, 請求記号653.7/コウ/, 資料番号0105646798) -
NHKスペシャル取材班, 緑慎也 著. 超・進化論 : 生命40億年地球のルールに迫る. 講談社, 2023.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032666344 , ISBN 978-4-06-528351-6 (pp.43-48,79-85, 請求記号468/チョ/, 資料番号0107792319)
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齋藤雅典 編著. 菌根の世界 : 菌と植物のきってもきれない関係. 築地書館, 2020.
- キーワード
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- 菌従属栄養植物
- 腐食植物
- 菌根菌
- 菌類
- ギンリョウソウ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 菌従属栄養植物とは、葉緑素を持たず光合成を行わないため、菌類から炭素化合物を得ている植物のこと。陸上植物のコケ植物門、ヒカゲノカズラ植物門、シダ植物門、被子植物門と広範な系統群にみられ、特に被子植物門においてはラン科、ツツジ科、ホンゴウソウ科、ヒナノシャクジョウ科、サクライソウ科、リンドウ科などに多くの種が存在する。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 高校生
- 登録番号
- 1000364654