お問い合わせの内容について当館の所蔵資料を調査したところ、参考になりそうな資料がありました。
〇行政文書の管理・運用の歴史についてわかりやすく解説している資料
・『公文書管理法とアーカイブズ』中野目徹/著 岩田書院, 地方・小出版流通センター(その他) 2015
p8-10「歴史的変遷」
→日本における公文書作成の歴史的変遷について、1867年の大政奉還を画期としたうえで、奈良時代から遡り概観されています。その中で、
「しかし、公文書の管理や保存に関わる規程は、国では府省ごとの訓令で、一方、地方公共団体では各々固有の事務と位置づけられて、同じく訓令や規則で定められているため、我が国では公文書に関する基本法あるいは通則法は、公文書管理法の制定まで存在しない状態のままであった」(p9-10)
と述べられています。
p37-56「第5章 公式制度の変遷と太政官・内閣における公文書管理」
→本章後半において明治18年にその転換がなされた太政官期と内閣期の公文書管理制度について、文書の編纂と保存に焦点を合わせながら述べられています。
・『近代日本の統治機構とアーカイブズ 文書管理の変遷を踏まえて』 渡邉佳子/著 樹村房 2021
p10-20「第二節 研究の背景」
→日本における公文書管理制度について、主に法整備や国の施策の側面から、その歴史的経緯が解説されています。
p319-330「終章-第一節 統治機構と文書管理の変遷」
→「近代統治機構における文書管理の変遷を、統治機構と文書管理に関わる官制の視点から、表32のように第一期から第六期の六つの時期に区分し、それぞれの時期の特徴を、統治の形態、統治機構の中央官制と関連事項、文書・記録の所管組織、文書記録管理施策等の状況の四つの視点からとりまとめた」(p319-325)
とあるように、文書管理の歴史的変遷が統治機構との対応からわかりやすくまとめられています。
・『アーカイブズと歴史学 日本における公文書管理』 小池聖一/著 刀水書房 2020
p24-26「2.国立公文書館の設置と公文書館法」
→国立公文書館の設置と公文書館法の成立の歴史的経緯について、簡潔にまとまっています。
・『アーカイブズの科学 上巻』 国文学研究資料館史料館/編 柏書房 2003
p340-343「4 文書のライフサイクルとその管理」
→「日本における公文書の管理は、これまで事務事業別に分類し、各分類ごとに保存年数を設定した文書整理規程あるいは文書編纂保存規程等によりなされてきた。明治期に創設されたこの方法は、現在も受け継がれ、1年・5年・10年・30年・長期・永年等の文書の保存年数が設定され管理されている」(p341)としたうえで、文書のライフサイクルという視点から日本の公文書管理について述べられています。
・『「国民の共有財産」としての公文書管理』 中京大学社会科学研究所アーカイブズ研究プロジェクト/編 創泉堂出版(製作) 2023
p59-109「『国民の共有財産』としての司法文書管理の問題に関する一試論」
→「しかし、同法附則第13条2項では『国会及び裁判所の文書の管理の在り方については、この法律の趣旨、国会及び裁判所の地位及び機能等を踏まえ、検討が行われるものとする。』とされ、裁判所の文書管理のあり方は、『公文書管理法』の趣旨や国会・裁判所の地位と権能等を踏まえ、『公文書管理法』とは別の枠組みで検討されることとなっている」(p65)として、裁判所における文書管理の現状や課題を解説し、日本近代国家における法及び司法制度改革の歴史、戦後司法制度改革の歴史を概観することで、現状における「裁判文書」の保存・管理の問題の源流を解明する論考です。
・『外交を記録し、公開する なぜ公文書管理が重要なのか』 服部龍二/著 東京大学出版会 2020
p10-12「4 外務省文書の制度と運用」
→「本書では公文書のなかでも、日本外務省の文書管理と運用を歴史的に跡づける」(p10)とし、外務省文書を軸とすることの理由の一つとして、「外務省文書は戦前から編纂、公刊され、研究者らに利用されてきており、日本政府内で最も文書管理と運用実績の蓄積がある」(p10)ことを挙げています。
〇台湾総督府における文書管理制度についての資料
レファレンスを進める中で、戦前期の日本における公文書管理システムの実態を理解するうえで、台湾総督府における文書管理制度を参照することが有効であるとわかったため、以下に関係資料を紹介します。
・『公文書管理における現状と課題』 中京大学社会科学研究所アーカイブズ研究プロジェクト/編 中京大学社会科学研究所 2019
p23-43「戦前期行政機関における文書管理のあり方」
→「日本の近代公文書として唯一体系的に残されている台湾総督府文書から、台湾総督府における文書管理制度および運用実態を把握することで、戦前期日本の行政機関における文書管理がどのようになされていたのかを見ていきたい」(p24)とする論考です。
・ 『台湾総督府文書の史料論』 中京大学社会科学研究所台湾史研究センター/編 中京大学社会科学研究所 2018
p305-374「台湾総督府における文書管理体制の構築と崩壊」
→「日本の近代公文書として纏まった形で残されてきた豊富な資料源である台湾総督府文書、その基幹文書たる『台湾総督府公文類纂』から、台湾総督府の文書管理制度のみならず、その制度と実態との乖離が、文書管理体制を作り上げていったことが草創期における文書管理を見ていくなかで分かってきた」(p305)
「このように、組織の改編、制度の変遷、文書分類の処理方の問題、さらに実態との乖離も合わさり、台湾総督府における文書管理システムは、草創期から発展を遂げながら完成期を迎え、戦時体制により崩壊していった。換言すれば、これらの構築から崩壊までの一連の変遷が見て取れるのは、日本統治時代の台湾における統治機関であった台湾総督府の文書が、偶々、台湾であったために残されたという偶然的なものであり、そのために、本国政府である日本の近代公文書の文書管理システムについても、台湾総督府文書を通して考察できるという皮肉な面もある」(p308)
「台湾総督府の文書管理の特徴は、文書管理担当部局の文書課が一貫して一局集中型の管理体制を敷き、保管から運用までを一元的に管理する方法を実施してきたことである。この体制は、戦時期の体制を除けば、現在の我が国における文書管理制度を考える重要な視座となるのではなかろうか」(p369)
とあります。
・『帝国日本の台湾統治』 中京大学社会科学研究所台湾史研究センター/編 中京大学社会科学研究所 2024
p229-335 「明治三二年を中心とした台湾総督府の文書管理制度-検索利用上の視点をまじえて-」水野保
p230「はじめに」
→「台湾総督府が設置された時期は、日本の近代文書管理制度が確立した時期と重なる点もまた興味深い点である。台湾総督府の文書管理制度も、これら新しい制度で運営されている」
p237-244「二 明治期の日本の文書管理制度概略」
→「この節では、時代が江戸から明治に変わり台湾総督府が誕生した頃までに我国が作り上げた公文書管理制度の概略を述べたい」(p237)
p245-283「三 台湾総督府の開府から明治三二年までの文書管理制度」
→(1)軍政下の文書管理制度、(2)民政復帰後の文書管理制度の順に、主に明治三二年頃までの台湾総督府民政局の文書管理制度について述べられています。
〇該当の記載がなかったが、参考になるような資料
以下の資料については、ご希望の「行政文書の管理・運用の歴史」の記述や、コンピュータ導入以前・以後の変化に関する記述はありませんが、行政機関や司法機関等における公文書管理について記述されています。参考までに記載します。
・『公文書は誰のものか? 公文書管理について考えるための入門書』榎澤幸広, 清末愛砂/編集代表 現代人文社 2019
p81「2-8 司法機関の公文書管理はどうなっているのでしょうか?」
→司法機関(最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)における司法行政文書の管理、裁判文書の管理並びに保存および廃棄、事件記録の閲覧等に係る具体的な手続きについて記載があります。
・『公文書管理法時代の自治体と文書管理』 宮間純一/編 勉誠社(制作), 勉誠出版(発売) 2022
p117-137 「神奈川県の公文書管理-公文書館における評価選別を中心に-」関根豊
→神奈川県個別の事例にはなりますが、地方自治体における公文書管理制度の沿革や現行制度の体系等について詳細に解説されています。
・『文書館のしごと アーキビストと史料保存』 新井浩文 /著 吉川弘文館 2024
p122-128「行政文書の劣化状態調査 3 調査結果 (1) 各時代の行政文書の特徴」
→日本における明治時代から現代に至るまでの行政文書の変遷について、主に紙質などの観点から解説されています。
〇その他参照資料
・『文書館 文庫クセジュ』 ジャン・ファヴィエ /著, 永尾信之 /訳 白水社 1971
・『アーカイヴズ 記録の保存・管理の歴史と実践 文庫クセジュ 1042』 ブリュノ・ガラン /著, 大沼太兵衛/訳 白水社 2021
・『公文書管理 民主主義の確立に向けて』 日本弁護士連合会法律サービス展開本部自治体等連携センター/編 明石書店 2019
・『未来への記録 リスクを回避するための自治体の文書管理』 関東弁護士会連合会/編集 第一法規 2020
・『行政情報法制の現代的構造 学術選書 218』 友岡史仁/著 信山社 2022
以上、よろしくお願いいたします。