レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年12月08日
- 登録日時
- 2022/12/15 19:29
- 更新日時
- 2023/02/27 21:01
- 管理番号
- 県立長野-22-171
- 質問
-
解決
須坂・中野・長野市にある越智(おち)神社もしくは小内(おち)神社について、由来などを知りたい。また、物部氏や越智泰澄(たいちょう)と関係がある神社なのか。
- 回答
-
各神社に関して記述のあった資料を紹介した。
・『長野県の地名』 平凡社 1979 (日本歴史地名大系20)【N290.3/54】
p.873 小内(おうち)神社(長野市) 越智泰澄によって勧請されたことが伝わっている。
p.909 越智神社(須坂市)
p.933-934 小内八幡神社(中野市)
p.942 越智神社(中野市)
・『日本地名大辞典 20 長野県』角川日本地名大辞典編纂委員会編 角川書店 1990 【N293/18】
p.224 小内(おうち)神社(長野市)
p.286 越智神社(須坂市)
の2社が掲載されている。この2冊は、各神社の概略がわかる資料。
・『須坂・中野・飯山の社寺』 郷土出版社 2007 【N171/48】
各神社の祭神、云われ、写真等がある。
p.50-51 越智神社(須坂市)
祭神 饒速日命(にぎはやひのみこと)
建御名方命(たてみなかたのみこと)
p.116 越智神社(中野市)
祭神 応神天皇(おうじんてんのう)
神功皇后(じんぐんこうごう)
大気都姫神(おおつけひめのかみ)
p.120-121 小内八幡神社(中野市)
祭神 御穂須々美命(にほすずみのみこと)
<越智神社> 須坂市大字幸高字屋敷添389
・『井上村誌』 井上村誌編纂委員会編・刊 1961 【N214/34】 p.182-183
祭神、由緒について書かれており、白黒の写真も掲載。
<越智神社> 中野市大字越字屋敷添740
・『越村の歴史』 越公民館編・刊 1983 【N213/64】 p.221-222
越智神社に関する史料は多く残っているとしながら、「越智神社の社号を受けた文書」、元禄7年の
「越村が評定所へ差し上げた文書」、宝永6年「出羽神主から越村への文書」の3件を紹介している。
・『むらの歴史』 金井明夫著 むらの歴史刊行会 1983 【N213/62】 p.491
「越智神社」の項目があり、式内論争について触れてる。また、祭神である「御穂須々美命」を表
した古代文字の岩がある。
・外山俊太郎著「越智神社の古代文字」 『高井』 第44号 1978 p.26-35
古代文字の成立と系列に触れつつ、祭神である御穂須々美命を解き明かす内容。
<小内(おうち)八幡神社> 中野市大字安源寺字石原572
・『神社取調帳』[最終確認2022.12.15]
この神社取調帳は、明治6年(1873)7月現在の第43区に所属する村々の神社を調査になり、社名・
勘幣年月・祭神・勧請年暦・御霊代御鏡・奉納太刀などの項目のほか、社殿などの建築物、祭日も書
かれている。
※当館が運営する「信州デジタルコモンズ」でインターネット公開。
・高見澤武著 「テレビで放映された小内八幡神社」 『高井』 第184号 2013 p.56-60
神社の由緒に触れ、神社名の変遷、社殿の造りについても書かれている。
・「小内八幡神社と青獅子」 『文化財信濃』 第30巻4号 2004 p.29-30
小内八幡神社の祭礼行事の一つである「青獅子」についてまとめられている。
<小内(おうち)神社> 長野市若穂綿内
・『ふるさとの誇り綿内誌』
長野市制100周年綿内地区記念事業実行委員会編・刊 2005 【N212/413】 p.51-54
「小内郷と埴科郷」に、小内神社の記述がある。続くp.52に「小内神社」の項目があり、「社伝に
よると、天平9年(737)に越智泰澄によって勧進され、最初は山新田の宮王の地に祀られたとい
う。」
と書かれている。
p.54「白鬚大明神」の項目にも、「泰澄(682-767)が物部氏の済生利民を祈願して妙徳山を開
き、衣冠束帯の60センチの木像の白鬚大明神を「妙徳さん」「お妙徳さん」」と呼ぶ。かって仙仁に
は大きな社殿をもつ妙徳山の里宮があったという。」とある。
・清水保著「小内神社の関係史料」 『長野』 第6号 1965 p.17-20
当該神社に関係する資料として、「日本書紀」「延喜式神名帳」「和名抄」「朝野群載」「常楽寺
文書」「片山家文書」「欅原(けやきはら)神社棟札」の7つの文献から、神社にかかわる部分を記載
している。
<古代信濃における物部氏または越智泰澄>
・『長野県上高井誌 歴史編』 上高井誌編纂会編 上高井教育会 1962 【N214/18/2】
p.105-110 「高井郡の政治」の節に国司、郡司に触れ、「郡司の氏名は判明していない。高井国
造・物部氏などは、あるいは郡司をつとめたかと思われるが、確証がない。」としている。
「物部氏・越智氏」を取り上げている項目では、
●貞観9年(867)3月 高井郡の人 物部連善常の本居を山城国紀伊郡に移したこと
(「日本三大実録十四」)
●物部氏と越智神社の関係
(『信濃』 太田亮著 磯部甲陽堂 1924 (日本国誌資料叢書)187p)(97コマ目)
※国立国会図書館デジタルコレクションインターネット公開[最終確認2022.12.15]
●綿内に古来越智山組という地域名があること(寛永6年越智山組名寄之帳)
と紹介している。
また、p.110-113に「高井郡の郷」の節に、「小内」の地名と「小内郷」の記載がある。p.147-
155では、「神社信仰と式内社」で論社について触れている。p.152-153に「越智神社」p.154-155
に「小内神社」の記載がある。
・『長野県史 通史編 第1巻原始・古代』 長野県編 長野県史刊行会 1989 【N209/11-4/1】
p.308-309 に、「科野の部民」の項目があり、表8「科野の品部」で高井郡に上述の「物部連善
常」がある。また、p.374-378の「律令制度と信濃」の節中に、「信濃国筑摩郡山家郷戸主物部東
人」と記された白布墨書銘(正倉院宝物)の写真がある。
長野県内に関する主だった古文書類を年代順に掲載した資料に『信濃史料』があり、この索引で人名、および地名で「物部」「越智」「泰澄」を調べたところ、次の史料の記載があった。『信濃史料』は長野県立歴史館のサイトでインターネット公開している。[最終確認2022.12.15]
・『信濃史料 第2巻(神代~)』
p.103-104(「続日本紀」 巻16が出典)(4,5コマ目)
天平十八年六月
廿一日、従五位下物部依羅朝臣人会、信濃守トナル、
p.109-110(天平勝實四年の「白布墨書銘」(正倉院御物)が出典)(10,11コマ目)
信濃國筑摩郡山家郷戸主物部東人、戸口小長谷部[※「尸」の下に「エ」]麿、調幷庸一端、
(長四丈二尺廣二尺四寸)主当(國醫師大初位上威上連柑足郡司大領外正七位他田舎人國麻呂)
p.146-147(「新抄格勅符第十巻抄」(神事諸家封戸 神封部)が出典)(47,48コマ目)
(天応元年十月)十四日、高井郡墨坂神・越智神ニ封戸各一戸ヲ充ツ
※参考として、「延喜式」十 神祇十 神名下も引いている。
p.267(「日本三代実録」 巻14が出典)(68コマ目)
貞観九 高井郡の人、従八位上物部連善常、山城国紀伊郡ニ本居ヲ改ム、
- 回答プロセス
-
1 須坂・中野・長野市にあるとのことから、まず、神社の所在を確認する。『長野県の地名』 『日本地名大辞典 20 長野県』で、字、小字を確認する。これが市町村合併前の旧・村名の手掛かりになる。
2 郷土分類N171(北信地域の神社)の書棚で、『須坂・中野・飯山の社寺』 を調べる。
3 利用者が既に調べたという『中野市誌 歴史編 前編』中野市誌編纂委員会編 中野市 1981【N213/59/2】、旧版の『須坂市史』須坂市史編纂委員会編 須坂市 1981 【N214/50、新版の『須坂市誌 第2巻 地誌・民俗編』須坂市史編纂委員会編 須坂市 2014【N214/119/2】『須坂市誌 第3巻 歴史編1[原始・古代・中世]』須坂市史編纂委員会編 須坂市 2017【N214/119/3】を再度両方を調べた。
4 1で確認した所在地から旧村の史誌、区誌を調査する。
5 当館所蔵の郷土史研究の雑誌記事を各神社名で検索し、確認する。
6 物部氏、および越智泰澄とかかわりに触れている神社は、長野市若穂綿内の小内神社だけのようだが、念のため、『信濃史料』の索引で人名、および地名で「物部」「越智」「泰澄」を調べ、内容確認していく。
<調査資料>
・『信州休日の寺社巡り 東北信編』北沢房子著 信濃毎日新聞社 2003 【N170/23/1】
・『長野県神社百年誌』 長野県神社庁 1964 【N170/7】
巻末に神社名鑑があるが、宮司、禰宜、氏子総代の名前があるのみ。
越智神社(須坂市幸高)越智神社(中野市屋敷添)
小内八幡神社(中野市安源寺)小内神社(若穂町綿内)
- 事前調査事項
-
『中野市誌 歴史編』『須坂市史』須坂市史編纂委員会編 須坂市 1981 【N214/50】には掲載がなかった。
- NDC
-
- 神社.神職 (175 10版)
- 各宗派.教派神道 (178 10版)
- 参考資料
-
-
日本歴史地名大系 20. 平凡社, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005629726-00 , ISBN 4582490204 (【N290.3/54】) -
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編纂. 角川日本地名大辞典 20 (長野県). 角川書店, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002055045-00 , ISBN 4040012003 (【N293/18】) -
湯本軍一 監修 , 湯本, 軍一. 須坂・中野・飯山の社寺 : 北信濃の信仰と文化 : 保存版. 郷土出版社, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008524335-00 , ISBN 9784876638925 (【N171/48】) -
井上村誌編纂委員会/編 , 井上村誌編纂委員会. 井上村誌. 井上村誌編纂委員会, 1961-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059196390-00 (【N214/34】 p.182-183) -
越公民館. 越村の歴史. 越公民館, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001742405-00 (【N213/64】 p.221-222) -
金井明夫 著 , 金井, 明夫, -1980. むらの歴史. むらの歴史刊行会, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001751746-00 (【N213/62】 p.491) - 外山俊太郎. 越智神社の古代文字. 高井 第44号(1978) p. p.26-35
- 高見澤武. テレビで放映された小内八幡神社. 高井 第184号 (2013) p. p.56-60
- 小内八幡神社と青獅子. 文化財信濃 第30巻4号(2004) p. p.29-30
-
長野市制100周年記念事業綿内地区実行委員会/編 , 長野市制100周年記念事業綿内地区実行委員会. ふるさとの誇り綿内誌 : 長野市制100周年綿内地区記念事業. 長野市制100周年記念事業綿内地区実行委員会, 2005-03.
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https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I015698166-00 (【N208/28a/2】)
-
日本歴史地名大系 20. 平凡社, 1979.
- キーワード
-
- 越智神社
- 小内八幡神社
- 小内神社
- 物部氏
- 越智泰澄
- 式内社
- 論社
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000325834