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レファレンス事例詳細

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事例作成日
2022年05月04日
登録日時
2022/05/14 15:11
更新日時
2022/06/17 13:59
提供館
県立長野図書館 (2110021)
管理番号
県立長野-22-024
質問

解決

北海道の土産品でよく見かける木彫りの熊について調べている。長野県には、木彫りの熊の人形はあるのか。
回答
 『松本白樺工芸品業界の歩み』 業界史編纂委員会編 松本白樺工芸連合会 1991 【N750/17】p.3-5に白樺細工の始まりについての記述があり、白樺細工は上高地からの登山者が増えた大正期に、白樺の杖が土産品として人気が出たところが発端とわかる。昭和になって、白樺の丸木を刻んだ登山人形が商品化された。大正8年の農民美術運動で数多くつくられた風俗人形である「木片(こっぱ)人形」の影響を受けたようなことも書かれている。
 p.6-8には、昭和に入って、松本での土産品としてだけでなく、東京の百貨店や文具店などに売り込みをしたり、全国各地の温泉、名所での土産品としての製造を考えていたことが記されている。また、昭和6年ごろには、北海道から台湾までの販売網があったとも書かれている。この頃の販売見本の中に「熊」もあったようだ。また、p.18の昭和10年ごろの白樺細工の写真中に、「北海道向けの白樺木彫品」の写真があり、クマが5種類ほど写っている。
 p.28の戦時下である昭和17年に発行された商品カタログに、木彫動物として、熊16種があげられているという記述があった。p.46には、戦後の様子が書かれており、進駐軍向けの土産として木彫動物も人気があったようで、東京や横須賀で露店販売をしていた記述がある。p.81に、昭和39年度の商品カタログがあり、木彫人形・動物に、熊が26種上っている。p.133の年表昭和8年に、日本アルプス農美販売購買組合により「木彫熊」が米国に初輸出される、とある。

 長野県内の他の地域の木彫には、山本鼎の提唱による農民美術運動で普及した人型の「木片(こっぱ)人形」「ライチョウ」などが多く、熊を取り上げたものは確認できなかった。
回答プロセス
1 木彫りの熊の人形とのことから、郷土分類N710(長野県の芸術 木彫)の書棚から資料を探す。山本鼎の提唱による農民美術運動に関する記述が多く、特に、古くから伝わる木彫のものというイメージのものはなかった。

2 郷土分類N380(長野県の民俗学)の書棚で探す。

3 郷土分類N750(長野県の伝統工芸)の書棚で探す。『手づくりと郷土玩具』信州郷土史研究会解説・写真 信濃毎日新聞社 1982 【N750/14】には、大正から昭和にかけて、山本鼎の提唱による農民美術運動で普及した人型の「木片人形」「ライチョウ」「ライチョウ鈴」「木曽馬」などが収録されている。このような農民美術関係の資料が多い中、『松本白樺工芸品業界の歩み』に木彫の熊をはじめとする動物があることがわかる。

4 「長野県市町村誌目次情報データベース」【最終確認2022.5.15】で、収録されている県内市町村の誌史類の目次を、「木彫」で検索する。ここでヒットした『長野県史』『上田史誌』『小諸市誌』『茅野市史』『天龍村史』『「白馬の歩み」 白馬村誌』に、「熊」の事例の記載を確認することはできなかった。

5 同じように「農民美術」でも、検索調査する。扱っている題材は「木片人形」「木製小皿」「木製菓子鉢」「木製盆」が主。

6 当館契約の「信濃毎日新聞データベース」で「木彫」「熊」(くま、クマと表記を変えて検索)等を検索すると、2010年11月27日夕刊7面、2013年5月31日夕刊7面ともに、チェーンソーによる木彫の熊の記事があった。どちらも同じ作家の手によるもの。

7 当館の蔵書検索システムで、郷土史を扱う雑誌の記事を「熊」(くま、クマと表記を変えて検索)「美術」「芸術」などで検索したが、関係記事は確認できなかった。

<調査資料>
・『信州の木彫り 農民美術とともに』 中村実著 信濃毎日新聞社2006 【N713/8】
・『白馬の木彫りと農民美術』 丸山庄司編 白馬・山とスキーの総合資料館 2014 【N784/70/4】
・『長野県史 通史編 第8巻』 長野県編 長野県史刊行会 1989 【N209/11-4/8】
・『上田市誌 別巻1総説上田の歴史』 上田市誌編さん委員会編 上田市 2004 【N221/175/29】
・『上田市誌 人物編』 上田市誌編さん委員会編 上田市 2003 【N221/175/28】
・『松本市史 第2巻 歴史編4』 松本市編・刊 1997 【N233/106/2-4】
・川添航.王嘉瑶著 「長野県上田市における『農民美術』の変容と存立構造」
    『地域研究年報』 第43号 2021 筑波大学人文地理学・地誌学研究会 【N290/207/43】
・『信濃民芸風土記』 郷土出版編・刊 1977 【N750/10】
・『信州の木彫り』 尾沢千春著 千春工房 1975【N713/1】
・『信州の伝統工芸』 信濃毎日新聞編・刊 1979 【N750/13】
事前調査事項
NDC
  • 木竹工芸 (754 10版)
  • 木彫 (713 10版)
  • 風俗史.民俗誌.民族誌 (382 10版)
参考資料
  • 業界史編纂委員会 編 , 松本白樺工芸連合会. 松本白樺工芸品業界の歩み : 長野県指定「伝統的工芸品」に輝く. 松本白樺工芸連合会, 1991.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002173739-00
      (【N750/17】)
キーワード
  • 木彫りの熊
  • 動物人形
  • 白樺細工
  • 土産品
  • 工芸品
  • 信州学
  • 産業
照会先
寄与者
備考
調査種別
文献紹介 事実調査
内容種別
郷土
質問者区分
社会人
登録番号
1000316189
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000316189 コピーしました。
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