レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月01日
- 登録日時
- 2020/09/10 14:03
- 更新日時
- 2021/02/09 11:14
- 管理番号
- 名古屋市熱-2020-003
- 質問
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解決
島崎藤村が抄録を作成した「大黒屋日記抄」の嘉永7年11月20日の記事で、安政東海地震の被害について「宮宿より吉原宿までの間無難の宿は漸く二宿のみ」とある。この無難の2宿は何処か。
- 回答
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25番日坂(にっさか)、16番由比(ゆい)の2宿の可能性が高いと思われます。「大黒屋日記抄」(『藤村全集 第15巻』所収)が根拠とする「東海道宿々損所書付」と題する資料は確認できませんでしたが、この2宿が「無事」とする資料を複数確認できたためです。但し、この2宿にも被害ありとするものも多く、35番御油、36番赤坂、37番藤川、39番池鯉鮒、40番鳴海が無事とする資料も少し存在するので、注意が必要です。
- 回答プロセス
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1 『藤村全集 第15巻』所収「「夜明け前」ノート 大黒屋日記抄」(資料1) を調査
p.273に「東海道宿々損所書付」を見ての記事とされていました。
2 『歩いて旅する東海道 五十三次+京街道四次の宿場&街道歩きを楽しむ』(資料2)を調査
大黒屋日記が対象とする区間の宿場を調べ、宮宿は東海道41番目(現名古屋市熱田区p.120)、吉原宿は14番目(現静岡県富士市p.46)と確認しました。
3 『新収日本地震史資料 第5巻 別巻5ノ1』(資料3)を調査
大黒屋日記が根拠とする「東海道宿々損所書付」を探しましたが、見つけられませんでした。但し、無事、無難の宿について次の情報が得られました。
「松平家文書」p.7 越前資料 福井県立図書館
11月18日三国与兵衛書付(御奉行雨森儀右衛門ゟ差出)
東海道地震津浪之覚(大黒屋日記の「東海道宿々損所書付」と類似名称の「東海道宿々大変の趣書付」の写し)
日坂、油井無事
「青窓紀聞 64」p.66名古屋市蓬左文庫
大垣藩士某書状
日坂差事無
「藤岡屋日記 48」東京都公文書館
p.99~p.103 11月5日品川宿役人(島田宿の者伝造申立)
日坂格別の義も無之
p.107~109東海道筋地震津波之事 11月8日届出 鳥屋佐右衛門
鳴海・池鯉鮒、藤川・赤坂・御油格別の義無之
日坂普請新ら敷故か震候得共無難に候
p.209「 嘉永7年11月4日地震ノ記」東京大学資料編さん所
p.223~224東海道大地震之旨飛脚ゟ
日坂宿 近年火後普請新敷故哉無難のよし
p.225 9日山城屋為知(ししる)
日坂無難 由井無難
p.233 仲万山上源兵衛・富山小左衛門倅義蔵聞書
由井格別之事無之 日坂格別之事無之
p.237 「文鳳堂雑纂 災変部56」国立公文書館
寅11月 島屋佐右衛門 東海道大地震
池鯉鮒鳴海 格別之儀無之
p.284「 安政元年寅十一月四日大地震大津波御届写」千葉県香取郡干潟町 平山忠義家文書
p.286 寅11月15日 定飛脚問屋 呉服町江戸屋仁三郎 東海道筋大地震
日坂 宿内普請新敷故無難 池鯉鮒、鳴海 所々損し格別の儀無之
p.287 「旭市史2巻 近世北部史料編」S48 旭市史編さん委員会
地震道中記 宮負定雄記
p.290 由井宿一軒も破損なし
p.291 日坂宿三分の二破れて旅人宿無難なり、
p.319~324「地震聞書」鎌倉市玉縄 為積家文書
p.321 各様11月11日付 …東海道筋其外共大地震ニ而、御用聞飛脚屋ゟ注進書付…
日坂 無事 由井無事
p.321~322 11月14日 田中与十郎 大変事之第
由井 日坂 無事
p.339~「諸国地震記」国立公文書館
p.342 日坂 …近年焼失致未普請…潰家等無之痛家位ニ而先は無難之
p.343 由比 無難見へ・・差支無之候
p.350~「風説帳(第一分冊) 」細川家北岡文庫 熊本大学原蔵 京都市歴史資料館収集文書
右大地震ニ付宿駅破損書之写、紀伊国屋六右衛門差出候事
由井 格別損所は無之候
4 かわら版を調査
公益社団法人全国市有物件災害共済会が運営する防災専門図書館がネット公開しているデジタルアーカイブ「火災・地震関係かわら版」の「安政東海・安政南海地震」№16「東海道大地震津波出火」を調査。
日坂と由井が無事と書かれているのを確認しました。
https://www.city-net.or.jp/htmls/pages/394_05.html
- 事前調査事項
- NDC
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- 地震学 (453 9版)
- 中部地方 (215)
- 参考資料
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島崎藤村 著 , 島崎, 藤村, 1872-1943. 藤村全集 第15巻. 筑摩書房, 1968. 所収「「夜明け前」ノート 大黒屋日記抄」
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000949975-00 -
歩いて旅する東海道 : 五十三次+京街道四次の宿場&街道歩きを楽しむ. 山と溪谷社, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026282280-00 , ISBN 9784635601092 -
東京大学地震研究所 , 東京大学地震研究所. 新収日本地震史料 第5巻 別巻5ノ1 : 安政元年十一月四・五・七日. 日本電気協会, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I064832321-00 -
かわら版「東海道大地震津波出火」
https://www.city-net.or.jp/htmls/pages/394_05.html
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島崎藤村 著 , 島崎, 藤村, 1872-1943. 藤村全集 第15巻. 筑摩書房, 1968. 所収「「夜明け前」ノート 大黒屋日記抄」
- キーワード
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- 安政東海地震
- 大黒屋日記
- 東海道
- 日坂
- 由比
- 照会先
- 寄与者
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- 防災専門図書館
- 備考
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・被害に関する現存資料は多様。当時の飛脚屋等民間発の資料は多数存在するものの、幕府の公式な統一見解がないため。
・由比は当時、由井、油井などの表記が混在。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000286937