レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年09月08日
- 登録日時
- 2024/02/23 10:40
- 更新日時
- 2024/03/11 11:13
- 管理番号
- 中央-1-0021697
- 質問
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解決
以下のことを知りたい。
①会社法390条において常勤監査役の選定は監査役会で行うことになっているが、その趣旨がよくわからない。常勤の選定を監査役会に委ねた趣旨等わかる本などの記載があれば紹介してほしい。監査役会がないと常勤監査役は置けないのか、という点も気になっている。
②会社法の内部統制システムについて、金融商品取引法の内部統制報告制度、また会社を取り巻く各概念(内部統制、ガバナンス、コンプライアンス、意思決定)と内部統制システムの関係性について把握したく、そのような点が言及されている書籍・論文等あれば紹介してほしい。
③会社法は、代表取締役等の業務執行取締役は、3ヶ月に1回以上職務執行の状況を取締役会に報告しなくてはならないと定めているが(363条2項)、これがどのような範囲や形式(資料のみか口頭か等)を用いて行われているのか、事例や書籍・論文による見解、アンケート結果等があれば紹介してほしい。
- 回答
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①~③について、回答プロセス○印の資料を紹介した。
- 回答プロセス
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●325.2あたりの本を見る
○325.24『図解とQ&Aでわかる会社役員<取締役・監査役>の法律常識と実務 事業者必携』元榮太一郎/監修 三修社 2012年
p84 取締役会での報告についてのQに対するAとして、「報告の仕方に決まりはありません。資料などで詳しい文書を作り、口頭では大枠や重要ポイントだけを報告するというやり方でもかまいません。機密性の高い事項などは、あえて回収するなど「持ち出し禁止」とすることもできます。」とある。(質問③)
p117 監査役会とは,常勤監査役とは
「また、監査役会は、監査役の中から常勤の監査役(フル・タイムで監査の職務に専念する監査役)を選定しなければなりません。」
「監査役会を設置するような規模の大きい会社の場合、監査役の全員が会社に常勤するとは限りません。しかし、適正な監査を行う観点から、監査役会は、監査役の中から少なくとも1人は常勤の監査役を選定しなければならないとされています。」(質問①)
⇒監査役会を設置するなら、その中で常勤監査役を置かなければならない、という趣旨だと解される。
×325.2『知りたいことがすぐわかる図解会社法のしくみ』中島成/著 日本実業出版社 2015年
×325.2『楽しく使う会社法 第4版』木俣由美/著 自由国民社 2022年
×325.2『最新会社法の基本と仕組みがよ~くわかる本 第2版』大村健/著 秀和システム 2016年
×325.24『改正対応!中小企業のための株式会社<株主総会・取締役会・監査役会>の議事録・登記の手続きと書式サンプル集 事業者必携』望月慎之助/監修 三修社 2020年
○325.2『会社法の基礎知識 ビジネスに・経営に必ず役立つ 第5版』井口茂/共著 鷹取信哉/共著 田中昭人/共著 自由国民社 2015年
p165「このように監査役会は、常勤監査役の職務執行に関する事項を決定し、かつ、常勤監査役を監督して、より適正な監査がはかれるようにとの目的で設置されているものです。公開会社である大会社では株主、債権者等の利害関係人が多いですから、それらの者を害さないように、より間違いのない業務執行体制を確保しようということです。」(質問①)
○325.2『Q&A中小企業経営に役立つ会社法の実務相談事例』島村謙/編著 佐久間裕幸/編著 ぎょうせい 2016年
p164-165 常勤監査役と非常勤監査役
「常勤・非常勤監査役の区分は、監査役会を設置した会社で意味のある区分です。すなわち、監査役会設置会社では、監査役の中から常勤監査役を選定しなければならないとされており(会社法390条2項2号、3項)、これにより選定される監査役が常勤監査役、その他の監査役は非常勤監査役、ということになります。(中略)
監査役会設置会社でのみ常勤監査役の選定が要求される趣旨は、監査役会の設置が強制される規模の会社では、監査役の仕事量が常勤者を必要とするとの認識によるものです。裏を返せば、監査役会の設置がない会社の通常の監査役は、必ずしも会社に常勤することは要求されていない、ということです。」(質問①)
また、p69に取締役会議事録の記載例が掲載されており、そこに「報告事項」の例がある。(質問③)
○325.2『図解いちばんやさしく丁寧に書いた会社法の本』佐藤孝幸/監修 成美堂出版 2022年
p19「内部統制システムには、法令や社会のルールをしっかり守るというコンプライアンス(法令順守)体制も欠かせません。また、コーポレートガバナンスの実現にもつながります。」(質問②)
p94「取締役会は少なくとも3か月に一度開催します。代表取締役から3か月に一度以上、業務の状況の報告を受けるためです(書面のみの報告は不可)。」(質問③)
○325.2『会社法ビギナーズ 社会人の法律レッスン 令和元年12月法改正完全対応!』デイリー法学選書編修委員会/編 三省堂 2020年
p82-83「内部統制システムの整備」において、会社法が定める内部統制システムの内容についてまとめている。(質問②)
○325.2『教養としての「会社法」入門』柴田和史/著 日本実業出版社 2022年
p200-204 内部統制システム
内部統制システムの定義や、取締役会規則・就業規則との相違、内部統制システムを設ける理由、具体的な内部統制システムの内容などについてまとめている。(質問②)
○325.2『ここだけ押さえる!会社法のきほん スイスイわかる!グッと深まる! 第2版』神田秀樹/監修 ナツメ社 2021年
p88-89「「監査役会」の機能を抑えておこう」
常勤監査役が必要な理由については書かれているが、常勤の監査役の選定を監査役会に委ねる趣旨については書かれていない。(質問①×)
p82-83「「取締役会」の仕組みと機能
「取締役の決議への参加は、テレビ会議や会議用電話によるものでもかまいません。また、一定の条件を満たせば、書面やメールでの同意でも議案を可決することができます」とあるが、参加する側がテレビ会議や書面参加でもOKということで、開催自体の形式についてははっきり書かれていない。(質問③△)
p210-211「大会社は内部統制システムが必須」
内部統制システムの4つの目的と6つの基本要素を、図式化して分かりやすく解説している。(質問②)
×325.2『図解わかる会社法 最新版』横浜パートナー法律事務所/監修 新星出版社 2023年
p142-143「公開会社、大会社では監査役会も設置が義務」
常勤監査役が必要な理由については書かれているが、常勤の監査役の選定を監査役会に委ねる趣旨については書かれていない。(質問①×)問②③に関する記述は見当たらず。
○325.24『取締役の法律知識 第4版』中島茂/著 日経BP日本経済新聞出版本部 2021年
「第3章 監査役型の会社と取締役」
p95-96「監査役会」
常勤監査役が必要な理由については書かれているが、常勤の監査役の選定を監査役会に委ねる趣旨については書かれていない。(質問①×)
「第6章 取締役会の運営方法と取締役」
p156 「開催の頻度」
p157-158 「議事の進行」(報告事項について記載あり)
p160-161 「書面会議」
本来は一同に会して審議、決議を行うべきだが、例外として書面による決議を認める制度がある、と書かれているが、あくまでも議案の決議に関することのようで、ただの報告事項がこれに当てはまるかは定かでない。
p161-162 「テレビ会議・電話会議」
通信手段を用いた取締役会の開催は、「即時性」と「双方向性」とが充たされる限り可能、と書かれている。(質問③△)
「第7章 取締役の善管注意義務」
p203-214「「内部統制システム」を整備する義務」
内部統制システムについて、コーポレートガバナンスとの違いや、法的根拠など詳しく書かれている。(質問②)
●インターネットを見る
○「報告事項3」(企業法務サポートJP)
https://www.kigyo-houmu.jp/knowledge/147.php(2024.3.1最終確認)
業務執行状況の報告について、「報告の内容としては、経営計画、人事・組織・労務に関する事項、事業計画、営業に関する事項、月次決算に関する事項、設備投資の進捗状況、新製品の開発状況、重要計画の変更、借入金の実施状況等多岐にわたる内容が報告事項として報告がなされます。」と記述している。(質問③)
・「取締役会での報告は何をすべきですか?」(日本の人事部)
https://jinjibu.jp/qa/detl/17795/1/(2024.3.1最終確認)
「人事のQ&A」において、「取締役会で人事部はどういう報告をすべきなのか」との問いに対し、2件の回答がある。人事部に関してのみだが、取締役会での報告の例が分かる。(質問③)
●国立国会図書館デジタルコレクションを見る
以下はすべて個人・図書館送信資料
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-1-」『旬刊商事法務』958号 1982.11.25 p858-863
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725619(2024.3.1最終確認)
6-8コマ 取締役会の開催回数、なぜ三月に一回必要なのか(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-2-」『旬刊商事法務』959号 1982.12.5 p909-915
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725620(2024.3.1最終確認)
9-12コマ 取締役会にどれだけの時間をかけるか、誰が何を報告するか、営業以外の報告事項(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-3-」『旬刊商事法務』960号 1982.12.15 p962-968
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725621(2024.3.1最終確認)
12-15コマ 営業報告書や附属明細書とのつながり、どうやって報告事項を集めるか(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-4-」『旬刊商事法務』961号 1982.12.25 p1007-1012
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725622(2024.3.1最終確認)
10-13コマ 個別的重要事項の報告、商法264条と265条による報告(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-5-」『旬刊商事法務』962号 1983.01.15 p68-74
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725623(2024.3.1最終確認)
35-38コマ 議事録への記載方法、議事録と企業秘密の保持(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-6-」『旬刊商事法務』963号 1983.01.25 p122-132
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725624(2024.3.1最終確認)
10-17コマ 業務執行状況の報告とは、株式および従業員の状況、その他の会社の状況の報告、営業の経過および成果の報告、資金に関する状況の報告(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-7-」『旬刊商事法務』964号 1983.02.05 p178-186
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725625(2024.3.1最終確認)
14-20コマ 親子会社に関する状況の報告、過去三年間以上の営業成績、会社が対処すべき課題、役員に関する状況(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-8-」『旬刊商事法務』965号 1983.02.15 p254-263
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725626(2024.3.1最終確認)
p28-32 四七条関係の報告、四八条関係の報告、報告制度のもつ意味(質問③)
○稲葉威雄 他「取締役の業務報告に関する諸問題-9完-」『旬刊商事法務』966号 1983.02.25 p310-317
https://dl.ndl.go.jp/pid/2725627(2024.3.1最終確認)
20-23コマ 取締役会議事録作成上の問題点、取締役会と企業秘密、議事録の原案の作成、添付書類について(質問③)
★主として、商法260条3項が要求している報告(業務執行状況に関する報告)と、264条・265条が要求している報告について4人の識者が全9回にわたって論じている。
○成毛文之「取締役会の運営と報告事項について」『東京株式懇話会會報』429号 1987.6 p2-18
https://dl.ndl.go.jp/pid/2779329(2024.3.1最終確認)
10-11コマに、業務執行状況報告についての具体例あり。(質問③)
●内部統制に関する本を見る
○336.84『なるほど、これが「内部統制」か! ミドルマネジメントのためのERM(統合的リスク管理)事始め』水島正/著 金融財政事情研究会 2008年
p87-98 第5章 内部統制をめぐる日本の法制度
「会社法」と「金融商品取引法」が求める内部統制について整理されている。
○336.84『内部統制制度の運用と課題 会社法と金融商品取引法の相互関係の再検討』宝印刷株式会社総合ディスクロージャー研究所/編 酒巻俊雄/[ほか]執筆 中央経済社 2009年
p41-62 第3章 会社法と金融商品取引法の内部統制の関係
○336.84『図解これならわかる!内部統制のしくみと実務 図解だから「内部統制」の重要ポイントが一目でわかる!』石島隆/監修 ナツメ社 2008年
p16-17「関連法にはどんなものがあるの?」
金融商品取引法と会社法が求めている内部統制の違いがまとめられている。
p58-59「コーポレートガバナンスとの関係は?」
コーポレートガバナンスと内部統制は重なり合う部分もあるが、内部統制はコーポレートガバナンスを支えるしくみと言える、とまとめている。
×336.84『最新内部統制の評価と監査がよ~くわかる本 社内体制をどこまで整備すべきか?』岡林秀明/著 秀和システム 2008年
×336.84『内部統制システム構築の実務 平成26年改正会社法対応』中村直人/著 山田和彦/著 後藤晃輔/著 商事法務 2015年
●オンラインデータベースを見る
○こんなときどうするネット―会社の法律Q&A―
会社法務、企業トラブル全般、人事・労務管理、税務など会社の日常業務で起こりうる「こんなときどうすればいいの?」という疑問や問題を解決する事例を収録している。
- 事前調査事項
- NDC
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- 商法.商事法 (325 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 会社法
- 常勤監査役
- 内部統制
- 取締役会
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000346533