レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/07/14
- 登録日時
- 2018/01/28 00:30
- 更新日時
- 2018/02/06 16:42
- 管理番号
- 所沢本-2017-029
- 質問
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解決
元禄10年の酒の課税に関する御触書の内容を知りたい。
- 回答
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内容については、『徳川綱吉』、『江戸の酒』 に記載があります。また冒頭や時期の一致する触書については、『京都町触集成 第1巻』に記載があります。
〇『徳川綱吉』 塚本学/著 吉川弘文館 1998年
〇『江戸の酒』 吉田元/著 朝日新聞社 1997年
〇『京都町触集成 第1巻』 京都町触研究会/編 岩波書店 1983年
- 回答プロセス
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1.所蔵資料の内容確認
△『元禄時代がわかる。』 朝日新聞社 1998年
P16「都市商工業者を主対象として元禄十年(一六九七)酒造家に統制と収入を目的として販売額五割の酒造運上を賦課し~」と記述あり。
P167「飲酒抑制」の項目に「将軍綱吉は、元禄九年(一六九六)八月に酒による不本意の行動を未然に防止するため、飲酒を慎むことを命じた。翌年十月には酒運上制を導入し、酒の価格を五割値上げさせ、その分の利益を運上金として幕府に上納させたが、酒の価格が急騰したため、宝永六年(一七〇九)に廃止された。これは、幕府財政を潤すことを主目的としていたが、社会秩序を乱す酒の消費を抑制する意図もあった。」と記載あり。
△『徳川歴代将軍事典』 大石学/編 吉川弘文館 2013年
P315「酒造制限令」の項目に「元禄十年(一六九七)、徳川綱吉は全国の酒造家より運上を課した。」と記載あり。
また参考文献として『徳川綱吉』 塚本学/著 吉川弘文館 、『酒造りの歴史』 柚木学/著 雄山閣 1987年の記載あり。
〇『徳川綱吉』 塚本学/著 吉川弘文館 1998年
P179「元禄十年十月の酒運上の創設は、九年の飲酒抑制令の延長であった。具体的な内容は、幕閣役人の案であったにしても、その冒頭に「酒商売多く、下々みだりに酒を飲み不届きなる儀」もあるので「高値になり下々酒多く飲まざるよう」との趣旨が掲げられたのは、綱吉の考えに他なるまい。」と記載あり。
△『酒造りの歴史』 柚木学/著 雄山閣 1987年
P64この元禄十年の法令(酒造統制)は、酒運上金の徴収を目的としたもので、減醸令も出されておらず、まず酒造米高の届けを確認することから着手されたことがわかる。いまその主要な点をあげると、次の諸点である。(中略)(6)五割の酒運上は、三月・五月・七月・十二月の四期に分けて納付させる。(中略)幕府の統制の主体は単なる生産数量の統制というよりは、酒運上の賦課を目的に、酒造業の実態を掌握することにあった。」と記載あり。
〇『江戸の酒』 吉田元/著 朝日新聞社 1997年
P97~98「酒株改めが実施された元禄十年には、実は飢饉による食糧不足だけが理由で酒造制限令が出されていたわけではない。調査の本当のねらいは、酒屋の造石高を把握して課税を強化し、幕府の財政を少しでも改善することにあったようだ。同年幕府は、造り酒屋に対して現行の酒価格の五割もの運上金(営業税・免許手数料など)を課すことになった。(中略)江戸では十月八日、諸大名の留守居が勘定奉行萩原近江守に呼び出され、(中略)全国すべての造り酒屋に対して運上金、つまり営業税を課すことになった。この運上金分を上乗せし、今までの五割増しの値段で販売せよ、とのことで覚書一通手渡された。「酒の商売人が多く、下々の者がみだりに酒を飲み不届きである、値段を上げて酒を多く供給しないように」とある。財政上の理由のほかにも、庶民が酒を飲むのはぜいたくだとの為政者の考えが基本になるようだ。」と記載あり。
〇『京都町触集成 第1巻』 京都町触研究会/編 岩波書店 1983年
P48~50「元禄十年」の項目に、P49「一四三【大】 覚 一酒商売多、下々猥に酒を飲、不届成儀茂仕出シ候ニ付、高直ニ成、下々酒多不飲様ニ、今度諸国運上被仰出候条、向後其酒に応し、直段五割程高ク成候積運上可差出、運上取立役人相極、追而可申触候間、其者方江罷越、酒改を請、運上之員数等可受指図候、此旨洛中洛外之酒屋并町々江可令触知者成 丑十月 備前 駿河 雑色 町代」と記載あり。なお、底本は『京都御役所向大概覚書写本(京都大学文学部国史研究室所蔵)』
→酒運上についての触書という記載はないが、『徳川綱吉』『江戸の酒』内容と冒頭や出された時期が一致する。
2.内容を確認したが記載がなかった資料
×『江戸時代の事件帳』 檜谷昭彦/著 PHP研究所 1985年
×『江戸の町役人』 吉原健一郎/著 吉川弘文館 1980年
×『近世近代史論集』 九州大学国史学研究室/編 吉川弘文館 1990年
×『元禄文化』 守屋毅/[著] 講談社 2011年
×『幕藩制社会形成過程の研究』 大舘右喜/著 校倉書房 1987年
×『ヴィジュアル百科江戸事情 第3巻』 NHKデータ情報部/編 雄山閣出版 1992年
×『江戸の食と暮らし』 洋泉社 2014年
×『京都町触の研究』 京都町触研究会/編 岩波書店 1996年
×『お江戸の経済事情 』 小沢詠美子/著 東京堂出版 2002年
×『江戸の税と通貨』 佐藤雅美/著 太陽企画出版 1989年
×『江戸の経済改革』 童門冬二/著 ビジネス社 2004年
×『江戸時代のお触れ』 藤井讓治/著 山川出版社 2013年
3.「運上」について
『徳川幕府事典』 竹内誠/編 東京堂出版 2003年
P273「運上金とは、主として諸商売や漁撈・狩猟といった生業を対象として、一定の税率で賦課され、課税額は年により増減した。広義には『小成物』に含まれるが、(中略)小成物は村に賦課される負担であり、運上金は持主・請負人が存在し個人にかかわる負担という違いがあるという。」と記載あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 個人伝記 (289 9版)
- 食品工業 (588 9版)
- 参考資料
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- 江戸の酒 吉田元/著 朝日新聞社 1997.1 588.52 4-02-259669-4
- 徳川綱吉 塚本学/著 吉川弘文館 1998.2 289.1 4-642-05210-0
- 京都町触集成 第1巻 京都町触研究会/編 岩波書店 1983.10 322.15
- キーワード
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- 酒税
- 運上
- 元禄
- 御触書
- 徳川綱吉
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000229264