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レファレンス事例詳細

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事例作成日
2020年10月21日
登録日時
2021/01/14 10:11
更新日時
2021/02/06 16:05
提供館
沖縄県立図書館 (2110045)
管理番号
0001003602
質問

未解決

1871年(明治4年)に起きた牡丹社事件に関して以下のことが知りたい。

1.宮古島の役人が遭難した際に乗っていた船の外観
2.遭難した船の種類の名称
3.当時の宮古島の役人の服装
4.当時の琉球の士族の髪型「欹髻(かたかしら)」の外観がわかる写真または絵。
回答
1.宮古島の役人が遭難した際に乗っていた船の外観
牡丹社事件における遭難船そのもの、または同型の船の外観図を見つけることはできなかったが、類似した船種が確認できる資料として以下を紹介した。

(参考資料①)里井 洋一「日本・台湾・中国教科書における台湾(牡丹社)事件・琉球処分記述の考察」
遭難した船の種類について以下のように記載されている。p.49「1871年、11月6日、大里間切与那原村謝敷築登之親雲上所有の十二反帆馬艦船が台湾南部八揺湾に漂着した。」。

(参考資料②)平野 久美子『牡丹社事件 マブイの行方 日本と台湾、それぞれの和解』
遭難した船の種類について以下のように記載されている。p.41「当時、貢納船として使われていたのは「馬艦(マーラン)船」と呼ばれる三本マストの中国式の大型ジャンク船だ…四隻の船団のうち…宮古島からの一隻は…それでもかろうじて平良港へ帰りついた。遭難に遭ったもう一隻のほうは比較的大きな十二帆反(百二十石)の馬艦船で、一石を約百八十キロとして換算すると、二十一・六トンの積載量となる」とある。

これら二点の資料から、牡丹社事件で遭難した船の種類は「十二反帆馬艦(マーラン)船」であることがわかる

(参考資料③)『沖縄大百科事典 下』
p.494「馬艦船 マーラン船」の項目で、沖縄県立博物館所蔵の馬艦船の模型の写真が確認できるが、参考資料②で言及されている三本マストの大型船ではなく、二本マストの小型船である。そして「(馬艦船は)両先島(宮古・八重山の総称)蔵元政庁の御公用船として使用された12反帆船の特例を除けば、おおかたは5~8反帆船で…」とあり、十二反帆馬艦船が宮古・八重山から本島往復用の特別型であったことがわかる。

なお、二本マストの小型馬艦船の図は以下の記事でも確認できる。
(参考資料④)インターネット記事(2021.1.7現在)『沖縄タイムス「琉球から南に行くはずが…台風で土佐へ 1000キロ流され漂着 19世紀の記録 絵図を発見」』
「船は馬艦(マラン)。当時のマーラン船は、那覇の士族や有力な農民が船主となり、八重山や宮古から王府へ年貢を運んだ。」とあり、用途から見て、牡丹社事件における宮古島の船と同様のものと推測される。「…大きさ「四丈五尺二寸」(約13メートル)、幅「七尺」(約2メートル)。琉球国内向けの小規模船で…」とある。

(参考資料⑤)三枝 大吾「沖縄県立博物館・美術館所蔵「琉球船の図」と関連資料」
pp.52-60 牡丹社事件から約70年ほどさかのぼるが、1798年に銚子に漂着した琉球船が「12反帆馬艦船」であり、これを描いた図として沖縄県立博物館・美術館所蔵「琉球船の図」が掲載されている。また、同一の船を描いたと考えられる絵図として、船の科学館所蔵「絵図 安永九年 房州朝夷浦漂着南京船図」が掲載されている。



2.遭難した船の種類の名称
以下の資料より、船の「種類」の観点からの名称が「馬艦(マーラン)船」であり、船の「役割」の観点からの名称が「貢納船」であると考えられる。

(参考資料②)平野 久美子『牡丹社事件 マブイの行方 日本と台湾、それぞれの和解』
p.41 「当時、貢納船として使われていたのは「馬艦(マーラン)船」と呼ばれる三本マストの中国式の大型ジャンク船だ。四隻の船団のうち…宮古島からの一隻は…それでもかろうじて平良港へ帰りついた。遭難に遭ったもう一隻のほうは比較的大きな十二帆反(百二十石)の馬艦船で…」とある。



3.当時の宮古島の役人の服装
当時の宮古島の役人の写真を見つけることはできなかったが、近い時期の八重山(現在の石垣島および竹富町に属する島々などを指す)および沖縄本島(首里)の役人のすがたが確認できる資料として、以下を紹介した。

(参考資料⑥)『竹富町史 資料編 近代2 第10巻』
p.11 1872年(明治5年)の八重山の役人の肖像写真が確認できる。

(参考資料⑦)『琉球新報 2014年5月4日』朝刊1面、6面「琉球合併後の写真29枚 東京在住の収集家所蔵 庶民肖像、沖縄最古か」
1879年(明治12年)から1896年(明治29年)間に撮影されたと見られる「首里役人」、「首里上流人」、「久米士族」の写真が確認できる



4.当時の琉球における「欹髻(かたかしら)」の外観について
かたかしらの外観が確認できるものとして、以下の資料を紹介した。

(参考資料③)『沖縄大百科事典 上』
p.714 「かたかしら〔欹髻〕」の項目に、欹髻を結った男性の写真が掲載されている。また、結い方について文章で説明されている。

(参考資料⑧)嘉数 津子『琉球服装史』
p.94 下級士分の図にて、片髻を結った男性の図が確認できる。

(参考資料⑨)沖縄庶民の装い展実行委員会/編『沖縄庶民の装い』
p.2 平民男女、士族男女の図が確認できる。

(参考資料⑩)デジタルアーカイブ『沖縄風俗図絵』沖縄県立図書館 琉球・沖縄関係貴重資料デジタルアーカイブ(オンラインビューワー上ではp.21が該当)
1889年(明治22年)の出版物。当時の庶民の図の中に、かたかしらと思われる髪型の男性が確認できる。

(参考資料⑪)小波 則夫『きからじの世界』
pp.33-38 かたかしらの結い方が写真付きで説明されている。ただし、当時のかたかしらを忠実に再現したものではなく、中ゾリ(頭の中央部を剃ること)なしで結いあげる方法である。

(参考資料⑫)ラブ・オーシュリ、上原正稔/編著『青い目が見た「大琉球」』
pp.20-21、pp.32-36、p.50、p.57、p.64、pp.111-115などで、かたかしらを結った男性の図が確認できる(比較的、頭部が大きく描かれている図版ページを抜粋)。また、pp.220-221でかたかしらの結い方がイラスト付きで説明されている。

(参考資料⑬)那覇市歴史博物館/編『古文書に見る首里・那覇の士族社会(パンフレット)』
p.4「尚王家の子どもたち」、p.9「維新慶賀使一行」の写真、p.19「四の衣裳・肖像」の写真にて、かたかしらを結った男性のすがたが確認できる。
回答プロセス
事前調査事項
NDC
  • 九州地方 (219)
  • 衣食住の習俗 (383)
  • 各種の船舶.艦艇 (556)
参考資料
  • (参考資料①)里井 洋一. 台湾社会科教育研究(10)日本・台湾・中国教科書における台湾(牡丹社)事件・琉球処分記述の考察. 2006-03. 琉球大学教育学部紀要 / 琉球大学教育学部図書紀要委員会 編 68 p. 49~68
    https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I8690412-00
  • (参考資料②)平野 久美子. 牡丹社事件マブイの行方 : 日本と台湾、それぞれの和解. 集広舎, 2019.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I012010333-00
    ,  ISBN 9784904213728
  • (参考資料③)沖縄大百科事典刊行事務局. 沖繩大百科事典 : セット,上巻: ア-ク,中巻: ケ-ト,下巻: ナ-ン,別巻: 総索引・資料,別冊付録. 沖繩タイムス社, 1983.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I005502936-00
  • (参考資料④)沖縄タイムスインターネット記事「琉球から南に行くはずが…台風で土佐へ 1000キロ流され漂着 19世紀の記録 絵図を発見」
    https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/474949
  • (参考資料⑤)三枝 大悟/[著] , 三枝 大悟. 沖縄県立博物館・美術館所蔵「琉球船の図」と関連資料. 沖縄県立博物館・美術館, 2017-03.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I081353660-00
  • (参考資料⑥)竹富町史編集委員会, [竹富町]町史編集室 編 , 竹富町 (沖縄県). 竹富町史 第10巻 資料編 [2] (近代 2). 竹富町, 2002.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007929941-00
  • (参考資料⑦)琉球新報 2014年5月4日 朝刊1面「琉球合併後の写真29枚 東京在住の収集家所蔵 庶民肖像、沖縄最古か」
  • (参考資料⑧)嘉数 津子, 1918-2011. 琉球服装史. デザインセンター, 1960.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001225379-00
  • (参考資料⑨)沖縄庶民の装い展実行委員会 [編] , 沖縄庶民の装い展実行委員会. 沖縄庶民の装い : 明治・大正・昭和の衣の変遷. 沖縄庶民の装い展実行委員会, 2010.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I095888211-00
  • (参考資料⑩)沖縄県立図書館貴重資料デジタル書庫「沖縄風俗図会」https://www.library.pref.okinawa.jp/item/index-1104050175_1002000949.html
  • (参考資料⑪)小波 則夫. きからじの世界. 小波 則夫, 1995.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I096372070-00
  • (参考資料⑫)ラブ・オーシュリ,上原正稔編著 , 上原, 正稔 , Oechsle, Rob. 青い目が見た「大琉球」 : Great Lewchew discovered : 19th century Ryukyu in western art and illustration 改版. ニライ社, 2000.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002664315-00
    ,  ISBN 4931314422
  • (参考資料⑬)那覇市市民文化部文化財課, 那覇市歴史博物館 編. 古文書に見る首里・那覇の士族社会 : 「伊江御殿家関係資料」重要文化財指定記念企画展. 那覇市市民文化部文化財課, 2020.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030799664-00
  • (参考資料⑭)与那城町海の文化資料館 編集 , 与那城町海の文化資料館. 沖縄・与那城町の山原船 : それを船大工はマーラン船と呼んだ. 与那城町海の文化資料館, 2004.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I096249678-00
キーワード
  • 牡丹社事件
  • 馬艦船 マーラン船
  • 欹髻 かたかしら
照会先
寄与者
備考
質問1.宮古島の役人が遭難した際に乗っていた船の外観 に関する補足

小型の馬艦船について「山原船(やんばるせん)」という別称が用いられる場合がある。

(参考資料⑭)『沖縄・与那城町の山原船 それを船大工はマーラン船と呼んだ』与那城町海の文化資料館/編集
p.10 沖縄本島中部の平安座島の船大工は山原船のことを「マーランブニ」「マーランセン」と呼んでおり、「その語源は中国の福建省から伝来した唐音」とある。また、現在、泉州海外交通史博物館の敷地にて展示されている馬艦船について「その外観は、まったく沖縄の山原船と同じ」ともある。
しかし(参考資料③)『沖縄大百科事典 下』p.765「山原船」の項目では「…もともとは南洋系統もしくは中国系統が折衷された地船の系統をひくもので、1704~10年(尚貞36~尚益1)ごろに中国から導入された馬艦造(ハギ)(船)とは別系統である」と記載されている。
調査種別
事実調査
内容種別
郷土
質問者区分
社会人
登録番号
1000292344
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000292344 コピーしました。
アクセス数 4959
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