レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年10月29日
- 登録日時
- 2020/01/15 17:59
- 更新日時
- 2020/03/26 09:52
- 管理番号
- 相-190017
- 質問
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解決
海外における「祖霊」の捉え方について
日本では先祖を祀るとご利益がある、といわれるし儒教の国ではその傾向がみられるように感じるが、海外では必ずしもそうではないく、アフリカなどでは祖霊が悪いものと捉えられている場合もあるらしい。海外における事例や精神性を民俗学や宗教学など、多様な文献があれば知りたい。
- 回答
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次の文献、情報を紹介しました。
・『祖先崇拝の論理』マイヤ-・フォ-テス著 ぺりかん社 1980
p.48に「個人とその宿命神である祖霊との特殊な関係においては絶対的基準に照らして正しいかどうかという意味での道徳は、全く問題にならない。肝心なのは祖霊への奉仕と服従である。」とあり、西アフリカのタレシシ族の祖先崇拝について論じられています。
・『祖霊(ブガ)の世界』飯島茂著 日本放送出版協会 1973
p.134に「カレン族は祖霊ブガに対して、“血のつながり”による敬愛の情を持つというよりは、かれらはひたすら祖霊ブガのたたりに恐れおののき、またおびえている」とあり、タイ国北部の山地民・カレン族の“祖霊(ブガ)”を核として形成された世界についての記述があります。
・『神々と精霊の国』星野紘著 日本放送出版協会 2015
「第二章 祖霊崇拝」の「一 祖霊」p.217に「祖霊とは古の時代に活躍した勇者たちのことであり、今やその土地の精霊となって、そこに暮らす人々を守ってくれている。(中略)人間はそのことに感謝し、祖霊に対して祈りを捧げ、定期的に追善供養を営む。このように、人間と祖霊は相互関係にある」とあり、西シベリアの原住民ハンテ・マシン族の祖霊の捉え方について記述があります。
・『祖先崇拝の研究』前田卓著 青山書院 1965
主として日本人の祖先崇拝を論じていますが、古代ギリシャ、ローマや中国、インド等の事例も取り上げています。
「第一章 祖先崇拝の宗教的内容」の「第三節 祖霊の世界」p.39~46に「原始人や未開人は、死霊の宿る場所について、死体が未だ家に置かれている間は霊魂も家に留まっているものと考え、また森やその他の土地に死体が埋葬されると、死霊もそこに宿るものと考えた」「古代のローマ人と同じく中国人も、墓地を祖霊の宿る場所と考えていた」とあります。
「第四節 盂蘭盆」p.47~55に「盂蘭盆は(中略)古代のローマのパレンタリアと同じように祖先をこの世に招いて、家族成員と共同の饗宴を催すのであるが、それには家族の全成員が、万障くり合わせて家に居ることが祖霊にとってもまた最も望ましいこと」とあります。
「第五節 庇護神としての祖霊とそのたたり」p.56~62に「祖霊は生存者の生活を見守り(中略)援助、保護してくれるものであるとの信仰は、ギリシャやローマ、インド、中国等の国々において広く見出すことが出来た」「古代のギリシャ、ローマにおいては生存者が
祖霊に対する供養を怠れば、祖霊は直ちに墓地を抜け出して怨霊となり(中略)生存者達を苦しめた」とあります。
・『新版 アフリカを知る事典』小田英郎[はか]監修 平凡社 2010
p.253~254に「祖霊」の項に「アフリカの伝統的な世界観においては(中略)死者の霊を祖霊」といい「死者は夢に現れたり、病気や事故などの災厄を送ったりして生者に合図し、さらに、夢、占い、憑依(シャーマニズム)などを通じて自分の意志や要求を告げる」とあります。
・田原範子「移動に住まう人びとはどこに埋葬されるのか:東アフリカ・ナイロート系アルル人のティポ,ジョク,アビラをめぐって」国立歴史民俗博物館研究報告,169,2011,p.167-207.
https://rekihaku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1974&item_no=1&page_id=13&block_id=41
p.173に「ルオ人が母村で埋葬されない場合には,その霊(または悪霊)が一族みんなを悩ませる」という主旨の証言をオティエノの弟はじめ親族から引き出している」という記述があります。
・佐藤敦「【研究ノート】セネガル共和国・セレール人のコスモロジーと死生観」千葉大学人文社会科学研究,27,2013,p.192-204.
http://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900117194/
p.201に「通常、生者は日常的に墓地に足を向けることはない。…(中略)…日常的に墓地に向かうことは死者の魂を揺さぶることになり、また生者である自己の死に対する防衛のためにも避けられるべきである。」という記述があります。
・吉村郊子「遺された/生きる者にとっての,墓 : 牧畜民ヒンバの事例から」 国立歴史民俗博物館研究報告,181,2014,p.81-109.
p.101に「墓に近づくのはとても怖しいことであるというつよい警告のニュアンスが感じられた…(中略)…しかしながら,その後,カオコランドで長く生活していくうちに,実はそうした墓に対する姿勢(思い込み)は,必ずしもヘレロやヒンバ一般に広くみられるものではない」とあります。
またp.102に「“本来あるべきところに,ある”墓ならば,ヒンバの人びとはそれらを畏れるそぶりをみせることはない。一方,そうではない現象が起こった場合,すなわち,“本来そこにあるべきではないものが,ある”ことを,人びとはつよく畏れて警戒することがあった。」とあります。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 原始宗教.宗教民族学 (163 10版)
- 風俗史.民俗誌.民族誌 (382 10版)
- 民族学.文化人類学 (389 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 祖霊崇拝
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000272588