レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019.09.11
- 登録日時
- 2024/03/21 17:01
- 更新日時
- 2024/03/27 20:11
- 管理番号
- 川崎2023-004
- 質問
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解決
かつて多摩川沿線で栽培されていた菜種の品種について
神奈川県内で現存する採種用菜種は川崎市特産の「のらぼう菜」だけと思われる。
「のらぼう菜」は今は野菜として食されているが、本来は菜種油を採るための工芸作物であった。昭和中期まで、多摩川沿いには採種用菜種の栽培が盛んだったと聞いており、その頃まで、特に川崎市でどのような菜種品種が栽培されていたか調べたい。
- 回答
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「多摩川沿いの地域で栽培されていた菜種の品種」について、川崎市立図書館所蔵の地域資料からは、多摩川近隣の川崎市域で栽培されていた菜種の品種にまで触れたものを見つけることはできなかったが、当時の菜種の品種について分かったことを含め、調査結果を伝えた。
すでにご自身で「かながわの地方野菜」「川崎研究 2002 第40号」はご確認済ということだったので、当館所蔵の地域資料から川崎市域の農業を中心に探した。
『旧向丘村郷土誌 下巻』向丘村郷土誌研究会/編・発行 1978年 分類K291.1 ムカ
現川崎市高津区の向丘村郷土誌の中に食料の種類に触れた部分があり「油の原料には菜種・胡麻が作られたが、今は両方とも栽培されなくなった」との記載がある。また、「油締め(油しぼり)」の項目では「本村では以前は菜種・胡麻を栽培している農家が多かったので…」という文章と、著者が「戦後2回ばかり菜種を絞って貰い…」とある。
*館内閲覧のみ可能。
『日本の食生活全集14聞き書 神奈川の食事』「日本の食生活全集 神奈川」編集委員会/著 農山漁村文化協会 1992年 分類383 ニホ 14
「川崎近郊農村の食」の章で、多摩区菅の田代家で聞き書きした内容として「菜種を山(丘陵地)の畑につくり、南部鉄道で二つ先の長沼の油屋でしぼってもらうと5升くらいになる。」という記載があるが、品種までの記載はなかった。
『川崎市民俗文化財調査報告書-衣食住家族』川崎市博物館資料収集委員会/著・発行 1987年 分類K380.1 カワ
「川崎市の食習」の章で、麻生区古沢及び多摩区生田の農家の食生活に触れ、調味料として油は「家でとれた菜種、ゴマを油屋へ持っていき、油しめでしぼってもらった。」「菜種を菜種油と交換していたのは昭和35年頃までである。」との記載がある。
『神奈川県植物誌2018下』奈川県植物誌調査会/編・発行 2018年 分類K472.0 カナ
1085pから1121pまでアブラナ科の項があり、県内の分布図とともに各植物の概要が載っている。調査期間は2013年~2017年であり、希望の時期とはずれているが、かつての栽培品の逸出の場合もあり、参考になるかと思われる。
*館内閲覧のみ可能。
このほか、図書館所蔵の次の資料等を確認したが、いずれも農業や菜種について触れている部分があるものの、問合せ内容に適うものではなかった。
・「柿生村岡上村郷土誌」義胤小学校/編・発行 1969
・「ふるさと川崎の自然と歴史 上」高橋嘉彦/著 多摩川新聞社 2000
・「いなだ子ども風土記その1」いなだ子ども風土記編集委員会/編 川崎市立稲田図書館 1969
・「王禅寺村」浜田利明/著・発行 1988
・「民俗かわさき物語」白井禄郎/著 川崎市立稲田図書館 1970
・「かわさき農ート」セレサ川崎農業協同組合/著・発行 2013
・「かながわ ゆかりの野菜」神奈川県園芸種苗対策協議会/編・発行 2017
・「故郷と玉川(農民史)」原 藤次/著・発行 2000
・「日本人は植物をどう利用してきたか」中西弘樹/著 岩波書店 2012
・「多摩川の植物図鑑」多摩川流域水辺の楽校協議会/編・発行 2012
・「未来にむかってSUGE創立140周年地域資料集」川崎市立菅小学校/編・発行 2014
・「郷土史資料覚書」上田 恒三/著・発行 2006
・「やさしい川崎の歴史 第5版」小塚 光治/著 川崎歴史研究会 1990
ほか
国立国会図書館オンラインで探したところ、多摩川沿岸の資料は見つけられなかったが次の資料が見つかった。それぞれ菜種についての項がある。いずれもインターネットが利用できるようであればご自宅からも閲覧可能。(閲覧日:2019.9.11)
・「農作園芸栽培法大全」 博文館/編・発行 1911
「第2編工藝作物第5章油蠟料類」の中に「第1油菜、蕓薹」の項がある。1911年ごろの菜種の種類や品種名が確認できる。
・「菜種及菜種油に関する調査」農林省農務局/編・発行 1939
昭和14年に発行された本で、12pから菜種の品種分布状況の項がある。14p第9表「菜種品種別策付見込割合(昭和12年及昭和5年比較)」には各県の情報があり、神奈川県についても数種掲載されている。
- 回答プロセス
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郷土資料の中から、農作物について記載のあるものを中心に探した。川崎市域及び多摩川沿岸の隣接地域、神奈川県内の資料なども探し、最終的には国立国会図書館デジタルによって、全国のデータの中から参考になりそうなものを紹介した。
- 事前調査事項
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「かながわの地方野菜」「川崎研究 2002 第40号」は確認済み。
- NDC
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- 日本 (291 9版)
- 衣食住の習俗 (383 9版)
- 植物地理.植物誌 (472 9版)
- 参考資料
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旧向丘村郷土誌研究会 編. 旧向丘村郷土誌 下巻. 旧向丘村郷土誌研究会, 1978.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001406434 -
聞き書神奈川の食事. 農山漁村文化協会, 1992. (日本の食生活全集 ; 14)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I14111100574425 -
川崎市博物館資料収集委員会 編. 川崎市民俗文化財調査報告書 : 衣・食・住・家族. 川崎市博物館資料収集委員会, 1987.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I14111100574163 -
神奈川県植物誌調査会 編. 神奈川県植物誌 2018 下. 神奈川県植物誌調査会, 2018.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I029417054 , ISBN 978-4-9910537-1-9
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旧向丘村郷土誌研究会 編. 旧向丘村郷土誌 下巻. 旧向丘村郷土誌研究会, 1978.
- キーワード
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- 菜種
- 多摩川
- 川崎
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000347811