レファレンス事例詳細

１　平光同塵について県内の新聞記事を調べたところ、岐阜タイムス（現在の岐阜新聞）昭和31年6月18日付で「岐阜県の詩集・戦後編　スフィンクス　平光同塵・著」との記事があり、詩集の紹介と著者略歴が記載されている。「岐阜市長森水海道出身、本名吾一、岐中、東大卒、医博。九大医学部解剖学部長在任中、生体解剖の罪に問われ、戦犯として巣鴨に幽閉される。「詩魔」同人、日本詩人クラブ会員。」とあり。

２　本名の平光吾一で調査したところ、以下の資料に記載があった。
・『昭和人名辞典　第3巻（近畿・中国・四国・九州篇）』　（日本図書センター，1987　『大衆人事録　第14版』（帝国秘密探偵社，1943）を底本とする復刻版）…福岡p.53
　…　平光吾一　従四勲三　医博　九州大学医学部教授　…（中略）…　［閲歴］岐阜県武右衛門二男明治20年11月生る　大正5年東大医科神経科卒業　同学助手　東京高師　北大教授等歴職　昭和4年現職　先に臨時附属医学専門部主事たり　欧米各国に留学　大正12年学位を受く　歌集「世界を巡る」の著あり　趣味和歌油絵

　なお、上記で言及されている歌集『世界を巡る』は、平光五位地の筆名で、九大医学部短歌会より1938年に刊行されている（九州大学図書館などで所蔵）。また平光五位地名義の著作は他に『戰雲 : 歌集』（平光吾一，1945　九州大学図書館蔵）がある。　


３　ウェブサイトで「平光吾一」を検索したところ、日本脳神経血管内治療学会のホームページで公開されている機関誌「脳神経血管内治療誌　JNET」Vol. 3-2 (2009, Sep)中の論文「Zu¨rich大学病院におけるvon Monakowとその弟子達」で、略歴が記載されていた（http://www.jsnet.umin.jp/sozai/JNET/3-2/3-2-131.pdf　2009年10月確認）。　これによると生没年は、1887～1967となっている。

４　日本詩人クラブ会員との岐阜タイムス記載をもとに、同クラブのウェブサイトを確認。「沿革」＞「昭和40年代（1965～1974）」のページに、「（昭和42年）1967　…（中略）…　５月、平光吾一逝去。）との記載がある（http://homepage3.nifty.com/japan-poets-club/history/histol40.htm　2009年10月確認）。

５　平光吾一が戦犯に問われた生体解剖事件の経緯については、『文藝春秋』昭和32年12月号p.204-214に[戦争医学の汚辱に触れて　生体解剖事件始末記」として平光自身の手記が掲載されていた（『「文藝春秋」にみる昭和史　第1巻』（文藝春秋，1988）p.624-634にも収録）。　なお、これによると平光自身は解剖には関与していない。
　同事件を扱った資料としては他に以下の資料がある。
・上坂冬子『生体解剖　九州大学医学部事件』（毎日新聞，1979　７書庫：916／カ）
・東野利夫『汚名「九大生体解剖事件」の真相』（文藝春秋，1979　所蔵せず）

６　県内発行の雑誌で平光吾一の関連記事や著作を調査したところ、以下の2件が該当。
・「生体解剖事件と平光吾一博士」（『濃飛人』188号（1957.12）p.22-25）…　内容的には『文藝春秋』とほぼ重複。
・平光吾一「二人の医聖」（『濃飛人』237号（1962.8）p.10-11）
　…　岐阜出身の医者2名についての略伝。註に「筆者は…（中略）…現在は武蔵野市吉祥寺の珠光会診療所院長」とある。

７　肖像写真については、『スフィンクス』の冒頭に写真が掲載されている（「福岡新三浦にて　1953.4.26」とあり）。また『文藝春秋』掲載の記事にも写真が掲載されていた。