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レファレンス事例詳細

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事例作成日
2025年08月13日
登録日時
2026/03/19 10:05
更新日時
2026/03/25 11:39
提供館
京都市図書館 (2210023)
管理番号
京都市中央2025-002
質問

解決

“鱧街道(鱧海道)”と呼ばれる京への生魚の流通経路と輸送方法について知りたい。
回答
・鱧料理は、夏の京都を代表する伝統食です。鱧の普及については、京都市中京区の公家や武家の屋敷跡から鱧の骨が出土しており、室町時代末期から江戸初期には、身分の高い人たちが食していたといわれています。また鱧の「骨切り」が文献に現れるのは江戸中期であり、江戸後期には庶民の間にも広まっていたようです。【資料18】
 【資料19】には、江戸庶民のおかずを知るのに有効なおかず番付が、【資料20】には、当時の鱧の調理法などが記されています。

・近世以前から生魚は、大阪湾や大阪湾につながる瀬戸内海、紀伊水道とその沿岸周辺海峡から生魚船で「天下の台所 大坂」まで運ばれていました。江戸時代には、禁裏御所に生魚を運ぶために伏見の淀川を快速船「今井船」(俗称イマイセ)が行き来し、大坂・尼崎から横大路(草津湊)か枚方までを船運で、陸揚げ後は飛脚によるものでした。庶民一般は横大路の浜揚(魚市場)を利用し賑わいを見せました。【資料1~10】

・横大路の魚市場は安土桃山時代、豊臣秀吉が伏見に築城したのを契機として栄え、生鮮魚貝類を商う問屋が軒を連ねました。羽束師橋より南方に設けられたという公設市場は明治10年の鉄道開通とともに衰退し、現在は「魚市場遺跡碑」が残っているだけです。江戸時代の最盛期には、多くの船が淀川大坂-伏見間を行き交い交通の要衝として栄えました。【資料11~16・18】
 【資料12】に“淀川を引き舟で上ってきた生魚が横大路の草津の湊に夜を徹して陸揚げされると、待ちかまえていた走りと呼ばれる運搬人たちが、天秤棒にかついでしらじらと夜の明けそめる鳥羽街道を京に向かって走った”とあり、『拾遺都名所図会』(【資料17】)には、鳥羽作り道を京都へ走る人足の姿が描かれています。
 生命力の強い鱧を生きたまま運んだことから、京までのこの道を近年“鱧街道(鱧海道)”とも称しています。 【資料11・18】には、“鱧街道”や“鱧海道”の名称の表記がみられます。

・当時の生魚の流通については、雑喉場魚市場生魚問屋の荷主台帳(『諸国客方控』『諸国客方帳』)の史料分析により、時代や時期、旬にどんな魚を運んでいたかなどが明らかになってきています。【資料1・2】
回答プロセス
●当館所蔵資料より、京料理の鱧の歴史と流通について確認・・・【資料18~20】

●近世における生魚の流通について、“漁業史”“雑喉場魚市場”“尼崎”“摂津”“淀川”“伏見”をキーワードに京都市図書館所蔵資料を調べる・・・【資料1・2・10】

●生魚に関して淀川の物流に関する資料を調べる・・・【資料5~8】
 【資料7】に、“今井船”について、“禁裏御用の生魚輸送という特別な性格を有していた”との記述あり。

●“今井船”をキーワードに京への生魚輸送に関する資料を調べる・・・【資料3~8】
 【資料3】に、『尼崎志』の記述によれば、尼崎魚市から京都への鮮魚入荷について、“洛中洛外への魚類の需要供給は、他方若干を日本海より輸入するの外は、内海釣網のものは、多くは尼崎魚市の手より京都の口舌を養ひ”とあり、鮮魚の輸送ルートについて“尼崎から神崎川をのぼり、淀川本流をさかのぼり、山城国伏見の下流横大路に着船し、そこからは陸路を運搬したとあり、俗称イマイセあるいはイマイセ船なる三十石船があったとある”との記述がみられる。
 【資料9】に、京都最大の魚市場「錦」の魚問屋について以下の記述あり。
“上之棚、錦小路は朝廷・貴族・社寺などの御用を務め”、“五条之棚は尼崎などの瀬戸内海物を主とし、一般庶民を対象とした”、“瀬戸内海の魚は大阪八軒家から三十石船で淀川を上り、伏見の草津湊から鳥羽街道を肩に担いで走って運搬した”

●“横大路”“草津湊”“鳥羽街道”をキーワードに、当館所蔵資料を検索・・・【資料10~17】
事前調査事項
NDC
  • 水産業および漁業史.事情 (662 9版)
  • 内陸水運.運河交通 (684 9版)
  • 近畿地方 (216 9版)
参考資料
  • 【資料1】『大阪府漁業史』(大阪府漁業史編さん協議会/編集 大阪府漁業史編さん協議会 1997)p152~191“第2節 生魚市場”(p166~167“『諸国客方控・諸国客方帳』”、p185“尼崎・堺生魚販売に進出”、p191“尼崎と雑噺場”の項目あり) https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002571224
  • 【資料2】『雑喉場魚市場史』(酒井 亮介/著 成山堂書店 2008)p42~79“第2章 雑噺場の成立前後”、p115~119“第4章 雑噺場の客人関係”、p120~151“第5章雑噺場の集荷事情”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009630679
    ,  ISBN 978-4-425-88431-5
  • 【資料3】『畿内河川交通史研究』(日野 照正/著 吉川弘文館 1986)p184~228“第3章 過書株と船株”、p229~255“第4章 各種客船”(p244“第4節 今井船”の項目あり)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001821858
    ,  ISBN 4-642-03273-8
  • 【資料4】『近世日本の川船研究 近世河川水運史 下』(川名 登/著 日本経済評論社 2005)p599~690 “第14章 淀川・大和側の水運と川船”(p624“2手繰今井船(水学船)”の項目あり)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007689995
    ,  ISBN 4-8188-1706-6
  • 【資料5】『郷土摂津いにしえ通信 第50号(摂津市教育委員会 生涯学習部生涯学習課 2002)「シリーズ淀川を往来した船」“第3回 過書船(三十石船他)2” Web閲覧可
    https://www.city.settsu.osaka.jp/material/files/group/43/inisie50.pdf (2026年3月19日確認)
  • 【資料6】『郷土摂津いにしえ通信 第57号(摂津市教育委員会 生涯学習部生涯学習課 2003)「シリーズ淀川を往来した船」“第10回 川船のにぎわい” Web閲覧可
    https://www.city.settsu.osaka.jp/material/files/group/43/inisie57.pdf (2026年3月19日確認)
  • 【資料7】『淀川と物流』(田中 喜佐雄/著 1997) p74 “今井船”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002645951
  • 【資料8】『日本科学古典全書7 海上交通』(三枝 博音/編纂 朝日新聞社 1978) p135~707『和漢船用集』(p386、390~391“三十石舟”、“今井船”の項目あり)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001383449
  • 【資料9】『京都マネジメント・レビュー 第11号』(京都産業大学マネジメント研究会 2007)所収p33~51“歴史的商業地区再生の課題―京都錦市場商店街を例に―”井村直恵/著 リポジトリで公開あり
    https://ksu.repo.nii.ac.jp/record/2204/files/KMR_11_33.pdf (2026年3月19日確認)
  • 【資料10】『京都府伏見町誌』(伏見町役場/編纂 臨川書店 1984)p368~512“第5経済編”(p384~387“第7節 伏見船”、p412~414“第3節 当時の主要街道”の項目あり)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1970586434864565009
    ,  ISBN 4-653-01114-1
  • 【資料11】『京へと続く街道あるき』(竹内 康之/著 淡交社 2018)p40~46“鳥羽街道”、p42“横大路の町並みを歩く”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I028853552
    ,  ISBN 978-4-473-04244-6
  • 【資料12】『京・伏見歴史の旅』新版 (山本 真嗣/著、水野 克比古/撮影 山川出版社 2003) p172~173“草津の湊”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004238711
    ,  ISBN 4-634-59350-5
  • 【資料13】『街道の日本史 32 京都と京街道』(吉川弘文館 2002) p24“鳥羽作り道”、p26~27“草津湊”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003685668
    ,  ISBN 4-642-06232-7
  • 【資料14】『京都事典』(村井 康彦/編 東京堂出版 1993)p32“魚市場”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1970304959934548524
    ,  ISBN 4-490-10355-7
  • 【資料15】『昭和京都名所図会6 洛南』(竹村 俊則/著 駸々堂出版 1986)p160~161“草津の湊”“横大路”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001859179
    ,  ISBN 4-397-50132-7
  • 【資料16】『新撰京都名所図会 巻5』(竹村 俊則/著 白川書院 1975)p119~120“草津の湊”、“横大路”、“魚市場遺跡碑”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111100139563
  • 【資料17】『新修京都叢書 第7巻』 野間 光辰/編 臨川書店 1976)所収「拾遺都名所図会 巻四」p454~455“鳥羽作り道”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I30111100071989
  • 【資料18】『秘傳鱧料理 百菜』改訂(朝尾朋樹/著 京都新聞出版センター 2021) p238~239“鱧料理考”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I031637719
    ,  ISBN 978-4-7638-0754-0
  • 【資料19】『図説江戸料理事典』(松下 幸子/著 柏書房 1996) p5“庖丁里山海見立角力(ほうちょうりさんかいみたてすもう)”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002493661
    ,  ISBN 4-7601-1243-X
  • 【資料20】『料理百珍集』(何 必醇/[ほか]著、原田 信男/校注・解題 八坂書房 1980) p207~224“海鰻(はむ)百珍”
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001485296
キーワード
  • 鱧街道(鱧海道)
  • 生魚
  • 横大路(草津湊)
  • 鳥羽街道(鳥羽作り道)
  • 今井船
照会先
寄与者
備考
調査種別
文献紹介 事実調査 書誌的事項調査 所蔵調査
内容種別
郷土
質問者区分
社会人
登録番号
1000382002
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000382002 コピーしました。
アクセス数 622
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