レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/09/22
- 登録日時
- 2023/10/03 00:30
- 更新日時
- 2024/01/18 15:13
- 管理番号
- 15740607
- 質問
-
解決
マンガニーズ・ブルーという顔料の絵具について、下記の内容を詳しく知りたい。
①環境負荷ありとのことだが、人体・環境にどのような具体的影響があったのか
②偽物の見分け方
- 回答
-
お尋ねのマンガニーズ・ブルーという絵具について、以下①②のとおり調査いたしました。
①マンガニーズ・ブルーの人体におよび環境への影響
国立国会図書館オンライン等をキーワード「マンガニーズ・ブルー」、「マンガンブルー」、「マンガン青」等で検索しました。
マンガニーズ・ブルーが、人体どのような影響を及ぼすのか、参考になる資料がありましたのでご紹介します(資料1)。
なお、マンガニーズ・ブルーの環境への影響については、記述した資料は見当たりませんでした。
【 】内は国立国会図書館請求記号です。
資料1 日本美術家連盟「美術家の健康と安全」編纂実行委員会 編著, 櫻井治彦 監修『美術家の健康と安全 = Health and Safety for Artists : ハンドブック : 実作者のアドバイス 増補改訂2020年版』阿部出版, 2020.5【K2-M8】
巻末「顔料一覧」のp.141に「マンガニーズ・ブルー」の項目があり、毒性のランクは「C」となっています。ただし、具体的な症状については言及がありません。
ランク「C」は「有害性があり、毒性物質を取り扱う適切な予防処置をおこなう。」とあります。
また、以下のようなインターネット情報がありました。
情報1
「Pigment Toxicity Information」(American Institute for Conservation(https://www.culturalheritage.org/)が2017年11月に発行した『AIC News』の一部として発行された資料です。)
p.2に「Manganese Blue」の項目があり、「manganese and barium (refer to Table 2), which may affect central nervous system and lungs with overexposure.」とあります。
また、Table2「Health Hazards of Metals and Metal Compounds」によると、Manganeseは「Central nervous system damage, skin irritation, chronic inhalation can produce a degenerative nervous system disease similar to Parkinson's」、Bariumは「Soluble: eye and skin irritation; Insoluble: Pneumoconiosis」とあります。
ウェブサイト:AICNews Vol.42,No.6(November 2017) (https://www.culturalheritage.org/publications/aic-news/online-archive) p.25に「Pigment Toxicity Information」へのリンクがあります。
情報2
Steven Patterson「The history of blue pigments in the Fine Arts — painting, from the perspective of a paint maker」(『Journal & Proceedings of the Royal Society of New South Wales』 153 Part 2, 2020.12 pp.164-179)
p.174に、「Manganese blue」の項目があり、含まれているバリウムに毒性があると考えられていたとあります。
ウェブサイト:The Royal Society of New South Wales(https://royalsoc.org.au/)>Publishing>Archive(https://royalsoc.org.au/council-members-section/481-v153-2)
②偽物の見分け方
偽物の見分け方を記した資料は見当たりませんでしたが、以下に参考資料をご紹介します。
資料2
北田正弘 著『絵具の材料科学 : 基礎から文化財まで』雄山閣, 2023.3【KC412-M5】
p.185に「1.34.14 マンガニーズブルーヒュー」の項目があります。「マンガン化合物を使った古いものから、有機顔料を使って代替した絵具である」とあります。
本資料で例示として挙がっている有機物に、「銅フタロシアニン」と「塩素化銅フタロシアニン」があります。
【調査に使用した主な資料】
橋本和明 監修, 顔料技術研究会 編『色と顔料の世界 新版』三共出版, 2020.11【PA517-M19】
『Hawley's condensed chemical dictionary Sixteenth edition』John Wiley & Sons, Inc., [2016]【PA2-B83】
橋本勲 著, カラーオフィス 編『有機顔料ハンドブック』カラーオフィス, 2006.5【YU7-J191】
『Encyclopaedia of occupational health and safety』editor-in-chief, Jeanne Mager Stellman ; senior associate editor, Michael McCann ; associate editors, Leon Warshaw, Carole Brabant ; managing editor, Chantal Dufresne 4th ed. International Labour Office, c1998【SC2-A57】
日本ペイント 著, 研究開発本部 監修『塗料の性格と機能 : 21世紀への知識と応用 : やさしい技術総説』日本塗料新聞社, 1998.4【PA517-G22】
『Pigment handbook / edited by Peter A. Lewis 2nd ed』Wiley, c1988-【PA517-A4】
『Artists' pigments : a handbook of their history and characteristics / Robert L. Feller, editor』National Gallery of Art, c1986-【KC412-A1】
【調査に使用した主なデータベース、インターネット情報等】
・国立国会図書館デジタルコレクションhttps://dl.ndl.go.jp/ja/
・国立国会図書館オンラインhttps://ndlonline.ndl.go.jp/
・CiNii Research https://cir.nii.ac.jp/
・Google Scholar https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja
インターネット情報等の最終確認日:2023年9月21日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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① 環境負荷ありとのことだが、人体・環境にどのような具体的影響があったのか
WEB情報などで「バリウムベースの絵の具は環境や安全への懸念から1990年代初頭に生産中止」との記載は見つかるも詳細不明。
直接的にではないが参考になりそうな資料として以下;
論文データベースJ-Stageより
●横江昌人「環境に配慮した絵画教育―油彩画とテンペラ画の授業実践から―」大学美術教育学会『美術教育学研究』第53号(2021)、pp.305-312
⇒1980年以降の有機溶剤の健康被害が社会問題となり、溶剤の使用と管理が国連によって定められたもので運用されるようになった、という記述あり。
⇒該当部分の引用は以下の資料から;
●『美術家の健康と安全』日本美術家連盟、2017
② 偽物の見分け方
●『油彩画のファクチュール』寺田春弌、ダヴィッド社、1959
⇒顔料組成、特徴などが述べられている。「メーカーの名を付して、新色として発売されることが多い」との記載あり。
⇒このことから、代表的な絵の具メーカ―の商品の特徴を知ることで、真贋の判断に役立つのでは
上記資料については、国立国会図書館デジタルコレクションで全文検索「マンガニーズブルー」で検索してヒットしたもの。
国立国会図書館デジタルコレクションで全文検索「マンガニーズブルー」で検索すると、国立国会図書館内の閲覧に限定されますが、さまざまな美術雑誌、論文等が該当します。例えば、以下などは、新しいエピソードに触れられる可能性があるのではないでしょうか。
●谷口陽子「シリア・土器新石器時代出土の青色ビーズにおける人類最初の人造青色着色技術の解明」『Spring-8/SACLA 利用研究成果集.7(1)』
以下、調査済。
×『洋書メチエ 技法全科の研究』1928,文啓社書房
×『色彩の事典』 川上元郎編、朝倉書店、1987.12、ISBN:4254100531
×『色彩-色材の文化史』フランソワ・ドラマール、ベルナール・ギノー著、柏木博監修、ヘレンハルメ美穂訳、創元社、2007.2、ISBN:978442211923
×『トコトンやさしい染料・顔料の本』中澄博行、福井寛著、日刊工業新聞、2016.2、ISBN:9784526075261
×各種百科事典(「顔料」「無機顔料」「マンガン」「バリウム」等で調べたが、回答につながるような情報なし)
- NDC
-
- 絵画材料.技法 (724)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000339292