レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年05月14日
- 登録日時
- 2016/09/25 16:16
- 更新日時
- 2016/10/31 10:44
- 管理番号
- 【9】中2016-014
- 質問
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解決
高村光太郎『智恵子抄』の2番目に収められている「或る夜のこころ」の「或る」とは、いつのことか。また、この詩の制作年はいつか。
- 回答
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「或る夜のこころ」の制作年は大正元年(1912)8月18日。作中の「或る夜」はそれ以前と思われるが、正確にいつかは分からない。
次の資料を提供した。
『道程』/911.5ア/ 高村光太郎・著 日本図書センター 1999 【資料3】p.158
- 回答プロセス
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1.所蔵資料から調べる。
1)「智恵子抄」や高村光太郎の詩を収録している資料を見る。
『高村光太郎』/911.5タ/ 福田清人/編著 清水書院 1984 【資料1】
p.177「作品と解題・智恵子抄」を見ると、詩集『智恵子抄』は明治45年7月から昭和16年6月までの30年におよぶ、智恵子に関しての作品を集めた詩集であると分かる。【事項1】
『現代日本文学大系27 高村光太郎・宮沢賢治』/918.6ゲ/ 筑摩書房 1969 【資料2】
p.19に「或る夜のこころ」があり、もとは『道程』に収録されていたことが分かる。
巻末の「著作目録」に『道程』は大正3(1914)年10月に自費出版で出された、とある(p.435)。
巻末「高村光太郎年譜」で大正3年(1914)を見ると、『道程』が最初の詩集であったこと、同年12月長沼智恵子と結婚したことが分かる(p.428)【事項2】。
2.『道程』収録資料を調べる。自館OPACで書名「道程」著者「高村光太郎」で検索する。
『道程』/911.5ア/ 高村光太郎/著 日本図書センター 1999 【資料3】
目次の「一九一二年」群に「或る夜のこころ」が含まれ、pp.154-157 にある本文をみると、作品末に「八月十八日」とある。【事項3】
『現代詩大事典』/R911.5ゲ/ 安藤元雄/著 三省堂 2008 【資料4】pp.408-411に「高村光太郎」の項目があり、参照するが、「或る夜のこころ」の作品解題はなし。
2.インターネットで検索する。
1)google(https://www.google.co.jp/)でキーワード「或る夜のこころ」+「高村光太郎」で検索する。
「青空文庫」の『智恵子抄』で、「或る夜のこころ」の制作年は大正元年八月とわかる。
(URL:http://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/46669_25695.html 2016年10月25日最終確認)
【事項3】より「或る夜のこころ」の制作日は大正元年(1912)8月18日と判明したが、「或る夜」がいつかはまでは特定できなかった。
《2016年10月25日追記・補足資料》
青空文庫の本文の底本あり。
『智恵子抄』/S911.5タ/ 高村光太郎/著 新潮社 1990 【資料5】p.19
2番目に「或る夜のこころ」が収録されており、詩の最後に日付「大正元・八」とある。
書名「道程」著者名「高村光太郎」で自館OPACで検索する。
『新選名著複刻全集近代文学館 23巻 道程』名著複刻全集編集委員会/編 日本近代文学館 1979 【資料6】
pp.150-153 にある本文をみると、作品末に「八月十八日」とある。
《2016年10月25日追記・「或る夜」について》
『高村光太郎詩集』/S911.5タ/ 高村光太郎/著 角川春樹事務所 2004年 【資料7】
「高村光太郎略年譜」に1911(明治44)年12月に長沼智恵子を知り、恋愛に入るとあり、また1911(大正元)年8月に偶然智恵子と会い、この頃から、のちに『智恵子抄』に収めた初期恋愛詩を書きはじめた、という記述あり(p.247)。
『高村光太郎全集 第1巻』/918.6タ/ 高村光太郎/著 筑摩書房 1976 【資料8】
p.162に「或る夜のこころ」が収録されている。「後期」に同詩について、大正元年9月『スバル』に発表され、同年8月18日作、「(N女史に)」の献辞があったことが記載されている。
『高村光太郎 智恵子と遊ぶ夢幻の生』/911.5タ/ 湯原かの子/著 ミネルヴァ書房 2003 【資料9】
光太郎が長沼智恵子と出会ったのは1911(明治44)年12月であり、1914(大正3)年から生活を共にしたが、『智恵子抄』はあくまでも現実とは一致しないという説もある(pp.74-75)。
また、光太郎が初めて智恵子を意識した詩は1912年7月25日の「N-女史に」で、のちに「人に」と改題され『智恵子抄』冒頭に収録されたとある(p.84)。
『近代詩鑑賞辞典』/R911.5ヨ/ 吉田精一・分銅惇作/編 東京堂出版 1976 【資料10】
p.238「高村光太郎」の項で、『道程』は結婚記念の目的で自費刊行されたとある。
【事項】1-2、【資料】7-10により、「或る夜のこころ」は出会って間もないころの智恵子に贈られた詩である。作中に「7月」とあることから、「或る夜」は1912年の7月と考えるのが自然だが、文学作品としてみる場合は必ずしも事実と一致しないために、特定できない。
- 事前調査事項
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質問者は「或る夜のこころ」は大正初期の作品と記憶していた。
- NDC
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- 詩歌 (911)
- 個人伝記 (289)
- 参考資料
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- 【資料1】『高村光太郎』福田清人/編著 清水書院 1984
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【資料2】高村 光太郎/著 , 宮沢 賢治/著 , 高村‖光太郎 , 宮沢‖賢治. 高村光太郎・宮沢覧治集. 筑摩書房, 1969. (現代日本文学大系27)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I012794694-00 -
【資料3】高村光太郎 著 , 高村, 光太郎, 1883-1956. 道程. 日本図書センター, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002853569-00 , ISBN 4820518615 -
【資料4】安藤元雄, 大岡信, 中村稔 監修 , 大塚常樹, 勝原晴希, 國生雅子, 澤正宏, 島村輝, 杉浦静, 宮崎真素美, 和田博文 編 , 安藤, 元雄, 1934- , 大岡, 信, 1931- , 中村, 稔, 1927- , 大塚, 常樹, 1955- , 勝原, 晴希, 1952- , 國生, 雅子, 1956-. 現代詩大事典. 三省堂, 2008.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009251237-00 , ISBN 9784385153988 -
【資料5】高村 光太郎/著 , 高村‖光太郎. 智恵子抄. 新潮社, 1979. (新潮文庫 988)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I004090339-00 -
【資料6】高村光太郎/著 , 高村‖光太郎 , 日本近代文学館. 道程 : 抒情詩社版. 日本近代文学館, 1980. (新選名著複刻全集近代文学館)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I046927610-00 -
【資料7】高村光太郎 著 , 高村, 光太郎, 1883-1956. 高村光太郎詩集. 角川春樹事務所, 2004. (ハルキ文庫)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007456158-00 , ISBN 4758430837 -
【資料8】高村 光太郎/[著] , 高村‖光太郎. 高村光太郎全集 第1巻. 筑摩書房, 1976.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000051363-00 -
【資料9】湯原かの子 著 , 湯原, かの子, 1948-. 高村光太郎 : 智恵子と遊ぶ夢幻の生. ミネルヴァ書房, 2003. (ミネルヴァ日本評伝選)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004240543-00 , ISBN 462303870X -
【資料10】吉田精一 編 , 分銅惇作 編 , 吉田精一 , 分銅惇作. 近代詩鑑賞辞典. 東京堂出版, 1977.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I038538828-00
- キーワード
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- 智恵子抄
- 高村光太郎
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査 書誌的事項調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000197358