レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年8月10日
- 登録日時
- 2024/01/23 16:48
- 更新日時
- 2024/07/30 12:00
- 管理番号
- 大宮-1-00097
- 質問
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未解決
『大宮市史 第4巻 近代編』に「大宮市では「市常会たより」を毎月発行して」という記述がある。この「市常会たより」はどのようなものか。また現物を閲覧することができるか。
- 回答
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戦時中、大政翼賛運動の実践のために組織されたものの一つが市常会である。
大宮町(1940年11月より大宮市、現・さいたま市大宮区)では市常会→地区ごとの町内会連合会→町内常会・部落常会→隣保班・隣組という組織構成であった。市常会は毎月27日に開催され、会長は市長、構成員は町内会連合会長(地区常会長)・各種団体長・各種公職者などであった。この市常会で決定した事項を通達するものが「市常会たより」だったと思われる。
『大宮市史 第4巻』のp413~414に「市常会たより第6号 昭和17年12月28日」の内容が掲載されている。
これが町内会などの下部組織への通達なのか、末端の市民まで回覧されたのかは不明。
現時点では大宮の「市常会たより」の現物、または写真を閲覧できるところは見当たらない。
「市常会たより」ではないが、戦時中の回覧物について記載されている資料を紹介した。
- 回答プロセス
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1.大宮市史の記述部分を確認。
・『大宮市史 第4巻 近代編』 (大宮市役所 1982年)
P.409 「なお、大宮市では「市常会たより」を毎月発行をしてこれが推進にあたっている。」との記述あり。
2.市常会とは何かを調査。
・『大宮市史 第4巻 近代編』(大宮市役所 1982年)
P.403~410 大政翼賛運動の実践の中核として市町村常会・町内常会・部落常会、その下部組織として隣保班、隣組が編成されたことが記述されている。
p.404 大宮町(1940年11月より大宮市)では、隣組のうえに町内会を置き、さらにその上に町内会連合会を置いた。市常会の会長は市長、構成員は町内会連合会長(地区常会長)・各種団体長・各種公職者など市内の要職者約60名を充てることとした。
p.405 大宮市常会は毎月27日に開催され実践項目を決定、これを各地区常会に下達し、また地区常会から市常会へ上通するようにした。
・『埼玉県行政史 第2巻』(埼玉県/編集 1990年)
P.843~ 大政翼賛会成立に伴う町内会などの地方組織の強化の経緯、常会の設置、構成、当時の状況などに関係する記述あり。
※大政翼賛運動・・・【翼賛】とは「①補佐すること②特に天皇を補佐して政治を行なうこと。」である。
第二次近衛内閣時代の昭和40年10月に大政翼賛会が発足し、「①臣道の実践に挺身する、②大東亜共栄圏の建設に協力する、③翼賛政治体制の建設に協力する、④翼賛経済体制の建設に協力する、⑤文化新体制の建設に協力する、⑥生活新体制に協力する、の6項目を主な実践要綱としている。
これを実践する運動が「大政翼賛運動」であり、その実践場が国民の「日常生活」であった。⑥の例を挙げると「防諜・防空」や「節約」、「配給」、「自粛」、「貯蓄・国債引き受け」などである。
・『日本国語大辞典 第13巻』(小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2002年) P.570
・『翼賛政治の研究』(小野賢一/著 新日本出版 1995年) P.85~149
・『「暮し」のファシズム』(大塚英志/著 筑摩書房 2021年) P.13~14
3.市常会たよりを探索。
(1)戦時中の市民生活などがわかる資料を確認する。
①『社会心理史-昭和時代をめぐって-』(南博/監修 誠信書房 1965年)
P.217~ 国民の統制に隣組をどう利用したかなどの記述あり。
P.292~ 浦和市大谷場町の隣組の内情や回覧板の内容について記載あり。
市常会たよりの写真などはなし。
②『戦時生活と隣組回覧板』」(江波戸昭/著 中央公論事業出版 2001年)
東京市(都)の隣組回報や町会記録を元に戦時の生活について解説している。隣組回報や常会記録の表紙などの写真も掲載。
埼玉県や大宮市についての記載はなし。市常会たよりもなし。
③『資料が語る戦時下の暮らし』(羽島知之/編著 麻布プロデュース 2004年)
東京都の隣組通信や隣組読本、常会の誓などの写真が掲載されている。
P34 常会の手順が手引書により細かく決められていたことや会の流れが記載されている。
大宮市についての記載はなし。
④『武器なき戦い-情報・謀略宣伝 企画展-』(埼玉県平和資料館 2002年)
『「戦争と庶民生活-欲しがりません勝つまでは 特別企画展-』(埼玉県平和資料館 1996年)
大宮市のものではないが、隣組回覧報やチラシなどの写真が掲載されている。
⑤『大宮市史 第4巻 近代編』(大宮市役所 1982年)
P.413~414「市常会たより第6号 昭和17年12月28日」の内容あり。 宛先が町会・隣組長なのか、末端の市民にまで回覧されたものなのかは不明。
⑥『浦和市史 第4巻 近代史料編2』(浦和市総務部市史編さん室/編 浦和市 1979年)
P.745~ 本太北部『町会日誌』:毎月27日頃に常会の出席者や議題、発言記録の記載あり。
P.748~ 市常会での会議事項、提示事項の報告
P.750 町会役員会 市常会決定事項の報告
P.751 町会常会の開催通知
P.752 町会常会の開催記録
P.758 市常会協議案提出の件
P.759 町会常会の開催記録
⑦『浦和市史 第4巻 近代史料編2』(浦和市総務部市史編さん室/編 浦和市 1979年)
P.591~ 浦和市における戦時体制の解説と資料の説明あり。
P.636~ 当該資料の記載あり。 市常会たよりについては記載なし。町会長隣組長への回覧物や通知書、町会内で回覧したと思われる資料の内容が記載されている。
P.673~ 本太北部町会(浦和市)の規約第6章に町・隣組常会の開催規則が記載されている。
P.699~ 浦和市長および大政翼賛会浦和支部長の連名で出された「常会徹底事項」の内容が記載されている。宛先が町会・隣組長なのか、末端の市民にまで回覧されたものなのかは不明。所蔵は「市史編さん室」との表記あり。
⑧『「写真週報」とその時代 上・下』(玉井清/編著 慶應義塾大学出版会 2017年)
内閣情報部が編集した週刊の政府宣伝広報誌「写真週報」と当時の状況について写真を交えて解説。
⑨写真集
『埼玉の昭和-1926‐1989 写真集-』(埼玉新聞社 1990年)
市常会たよりなし。戦時中のビラ、ポスターなどの写真あり。
『さいたま市の100年-写真が語る-』(いき出版 2021年) 参考になりそうな資料なし。
『目で見る大宮の100年』(吉本富男/監修 郷土出版社 2009年) 参考になりそうな資料なし。
※埼玉県他市の写真集にもなし。
(2)大宮市史編さん時の資料の所在を探索
・さいたま市HP内「さいたま市史編さん審議会」
(https://www.city.saitama.lg.jp/006/008/002/012/004/006/p060881.html 2024.3.25最終確認)
「令和5年度 第1回さいたま市史編さん審議会 会議録」の中で、事務局の発言として「旧4市史(注:浦和市、大宮市、与野市、岩槻市)の編さん資料が与野の保管庫など各保管庫に分散している状況です。」と記載がある。
さいたま市編纂審議会が情報を持っていると思われるが、閲覧できるかは現時点では確認できていない。
(3)博物館などの資料検索、および調査協力を依頼
①埼玉県立平和資料館
内閣情報部が編集した週刊の政府宣伝広報誌「写真週報」に「常会徹底事項」や「大政翼賛会 戦う国民の覚悟 常会資料」の記事があるとのこと。また「旧白河町回覧板」を所蔵している。
※ 閲覧には事前に特別閲覧の手続きが必要。
②さいたま市立博物館 資料検索および問合せをしたが、所蔵なし。
③埼玉県立歴史と民俗の博物館 資料検索および問合せをしたが、所蔵なし。
④昭和館(千代田区九段南):デジタルアーカイブ (https://search.showakan.go.jp/ 2024.3.25 最終確認)
資料検索したが「市常会たより」の所蔵なし。
(4)インターネットにて、【常会】、【市常会】、【隣組】などのキーワードで検索
・「彩の国デジタルアーカイブ」 (https://www.eizou.pref.saitama.lg.jp/ 2024.3.24 最終確認)
映像検索、文化財検索、写真検索のそれぞれで検索したが、市常会たよりはなし。写真検索で【隣組】をキーワードに検索したところ、内閣情報部が編集した週刊の政府宣伝広報誌「週報」の写真あり。(現物の保管は埼玉県平和資料館)
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 10版)
- 関東地方 (213 10版)
- 地方自治.地方行政 (318 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 市常会
- 隣組
- 週報
- 翼賛会
- 大宮市
- 照会先
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- さいたま市立博物館
- 埼玉県立歴史と民俗の博物館
- 埼玉県立平和資料館
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000345327