レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年9月17日
- 登録日時
- 2022/09/23 16:47
- 更新日時
- 2023/03/05 11:53
- 管理番号
- 島根郷2022-013
- 質問
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解決
三刀屋で、松江藩の御留土を産出していたと聞いたことがある。この歴史や現状を知りたい。
※三刀屋は旧島根県飯石郡三刀屋町、現在は島根県雲南市に合併されている。
- 回答
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当館所蔵の下記資料を紹介し、回答とした。
〇【資料3】p.808-809「御代焼」および、p.968-969「御代焼」によると、三代地区の陶土・陶業は以下のような経緯がある。
・三代産陶土は良質で、江戸時代には、楽山、布志名の御用土(別名「お止め土」)として、松江に送られていた
・御代焼の始まりは、天保13年、萩藩から松江藩に招かれた陶工、唐津屋五助が、三代の陶土に着目し、開窯したと伝えられている
・五助は主に日用雑器を作っていた
・五助は安政6年に三代で亡くなる。その後、原田惣之助→新田仙吉→舟木体十郎と、職人によって受け継がれる
・【資料3】の出版時は舟木体十郎の子、舟木哲郎が継いでいる。
・哲郎氏は、各展覧会に出品し、優秀な成績をおさめるほか、昭和57年には県伝統工芸の指定をうけ、町庁舎の陶画なども手がけた。
〇【資料4】は1936年発行の復刻版である。
p.24-27「陶土」に、以下の内容が書かれている。
・1770年頃、字楓垣に瓦製造所があったが、この土地の土は瓦に適さず苦心していた。それを聞いた加茂町の行商人が、布志名へ土を持って行き、陶業者の澤藤右衛門に試してもらったところ、製陶には非常に適しているとわかった
・上記のことが、松江藩に伝わり、「御用」と指定された
・明治維新後も、三代の陶土は楽山・布志名のみに提供する特約であったが、この両窯の衰退に伴い、ほかの製陶業者にも販売するようになった
・明治30年頃、字姫原にも土脈が発見されたが、この土脈は一定せず、10年くらいで廃止された
・p.26に大まかな産出量がある。これによれば、1年間の産出量は、江戸時代=1200~1300俵、明治時代=上土5000俵、下土2000俵、大正元~4年=産出量少
・p.27には、陶土採掘業者一覧がある
p.473-474によれば、三代の字矢ノ尻に赤瓦を生産する瓦工場があった。寛政年中に、舟木保次郎と佐藤六右衛門が創業し、1936年事時点でも生産が続いていた。
〇【資料5】
・p.23「地形と地質」
神原地区と三代地区の境界一帯は花崗岩系の赤土が主体で、赤土の間に、「陶土に適する地層が多少あり、大正の中頃まで玉湯町の布志名焼へ」粘土を出荷していたとある
p.201-205「三代瓦の歩み」
・ここでは瓦座の創業者は舟木保蔵、佐藤六左ヱ門となっている。根拠となる古文書の解読が掲載されている
・2000年現在の状況も記述があり、「瓦土の乏しいことが三代瓦の最大の問題点で」、「農家の副業として今後何年生産にたえる瓦土が埋蔵されているか心細い」とのこと
〇【資料6】
・p.15 雲善窯・土屋幹雄氏の話では、同窯や丸三窯で三代の土が釉薬に使われていたのは、「戦争前まで、企業整備になる前までぐらい」。陶土自体は「その頃には、三代の土じゃなくて、ほとんどが石見の白土」であったとのこと。
・p.39 雲寅窯・舟木康定氏のところでは、三代の土は江戸時代頃に使用しており、その後、石見地方、地元の布志名、再び石見地方と陶土の仕入れ先が変わったとのこと。
〇【資料7】p.52-53には、島根県出雲市の出西窯が紹介されている。
「出西窯の土は、耐火度が低い出西氷室の土、主となる加茂三代の赤土、耐火度の高い出雲・大津の土の三種を混ぜて」と書かれており、三代の赤土に関しては、現在でも使っている窯があるとうかがえる。
- 回答プロセス
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1.【資料1】を見るが、陶土や製陶についての記述はなかった。
2.島根県における陶芸・製陶の歴史から調査したところ、【資料2】に以下の記述を見つけた。
・p.79-80「御代焼(みしろやき) 大原郡加茂町三代」
この地域にあった土が「豊富で良質であったため、江戸時代には楽山、布志名の御用土として舟で松江に送られ、明治以降はさらに広く出雲一円の窯場に送られ」た
・p.150には、三代の土が楽山、布志名におさめられていた根拠となる古文書の抜粋がある
以上から、旧飯石郡三刀屋町ではなく、旧大原郡加茂町三代ではないかと推測。
※楽山(現松江市西川津町)、布志名(現松江市玉湯町)はともに松江藩の御用窯があった地域。現在でも窯元がある。
3.【資料3】にあたったところ、p.808-809に「御代焼」の概略がある。また、p.1234-1235の地図によれば、三代地区は斐伊川をはさんで、旧三刀屋町の北に隣接している。
このことより、旧大原郡加茂町三代地区の陶土や「御代焼」について、調査を進めた。
- 事前調査事項
- NDC
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- 陶磁工芸 (751 8版)
- セラミックス.窯業.珪酸塩化学工業 (573 8版)
- 参考資料
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【資料1】三刀屋町誌編さん委員会 編 , 三刀屋町誌編さん委員会. 三刀屋町誌. 三刀屋町, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069457850-00 (当館請求記号:092.95/21 ※貸出禁止資料) -
【資料2】伊藤菊之輔 著 , 伊藤, 菊之輔, 1896-. 島根の陶窯. 伊藤菊之輔, 1967.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001112225-00 (当館請求記号:郷貸出751/イ67) -
【資料3】加茂町誌編纂会 編 , 加茂町 (島根県). 加茂町誌. 加茂町, 1984.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001711079-00 (当館請求記号:092.93/31 ※貸出禁止資料) -
【資料4】野津左馬之助 編 ; 島根県大原郡教育会 , 野津左馬之助 , 島根県大原郡教育会. 大原郡誌 全 複刻. 名著出版, 1972.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069430344-00 (当館請求記号:092.93/4 ※貸出禁止資料) -
【資料5】三代郷土誌編集委員会 編 , 三代郷土誌編集委員会. 三代郷土誌 : ふるさと二千年. 三代郷土誌編集委員会, 2000.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069525776-00 (当館請求記号:092.93/94 ※貸出禁止資料) -
【資料6】出雲玉作資料館友の会 編 , 出雲玉作資料館友の会. 布志名の焼物 : 歩みと想いを語る. 玉作資料館友の会, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025087202-00 (当館請求記号:郷貸出751.1/タ13) -
【資料7】陶工房 56. 誠文堂新光社, 2010-03. (SEIBUNDO mook)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I052290243-00 , ISBN 9784416810101 (当館請求記号:097.5/276 ※貸出禁止資料)
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【資料1】三刀屋町誌編さん委員会 編 , 三刀屋町誌編さん委員会. 三刀屋町誌. 三刀屋町, 1982.
- キーワード
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- 陶土--島根県
- 陶芸--歴史--島根県
- 御代焼
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000321680