レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年08月10日
- 登録日時
- 2017/08/10 12:00
- 更新日時
- 2018/12/21 14:03
- 管理番号
- 19877
- 質問
-
未解決
「贅沢で怠惰な生活に慣れ,かつ体格が大柄なアメリカ人は潜水艦の激務には耐えられない」という記述がある本を探してほしい。太平洋戦争中、日本海軍が言っていたらしい。
- 回答
-
該当する記述がある本は見当たらなかった。
なお、次の2点の資料に似た趣旨の記述あり。
・「証言録」海軍反省会6 戸高一成/編 PHP研究所 2014.5 397.21
p.145
http://ur0.pw/Fi70
に次の記述あり。
「・・・贅沢な生活に慣れているアメリカ人が、あの窮屈な潜水艦内で、
遠く故国を離れて、長い間苦労し、作戦というようなことには向かないのではないかと、
または好まないのではないかということで、
アメリカの潜水艦乗員のファイティングスピリットを
下算(げさん)していたところがあるのではないかと。・・・」
・海底戦記 伏字復元版 中公文庫 山岡荘八/著 中央公論新社 2000
本書は、山岡荘八が昭和17年にマレー半島の潜水艦基地を取材し、伊号潜水艦の活躍を小説化したもの。
p.148に次の記述あり。
「敵中なればやむなしで、艦長がやかましく叱って廻りましたよ。
心を鬼にしてというところでしょうが、あのやかましさが結局艦全体を救ったのでしょうな。
敵の中ですからその暑さに負けて浮き上がったらやられています。
アメリカの潜水艦がやられるのはそれでしょう。あれだけの忍耐は、口ではいうが絶対に人間では出来ない。
神様でなければ出来ない。日本人でなければできない!」
(追記)
「アメリカ人は贅沢な生活に慣れておるから、あの狭い船の中で、暑い所で、長期の作戦行動をやることは、とても堪えられるものではない」
という記述が、次の3点の資料にあり。
・両大戦間の日米関係 海軍と政策決定過程 麻田貞雄/著 東京大学出版会 1993.12
p.218
「・・・当時、ひろく日本海軍に「アメリカ潜水艦怖るに足らず」との自負心が浸透していた。その裏には「アメリカ人は贅沢な生活に慣れておるから、あの狭い船の中で、暑い所で、長期の作戦行動をやることは、とても堪えられるものではない」という盲信があった、と豊田副武大将は述懐している。」
・最後の帝国海軍 豊田副武/記述 国本隆 1984
p.174
・最後の帝国海軍 豊田副武/述 世界の日本社 1950.4
p.188
- 回答プロセス
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下記(1)、(2)の当館所蔵資料を調査したが、
米国の潜水艦に対する日本海軍の発言についての記述は見当たらなかった。
(1)太平洋戦争中の日本海軍の潜水艦に関する資料
・伊四〇〇型潜水艦最後の航跡 上巻 ジョン・J.ゲヘーガン/著 草思社 2015
・伊四〇〇型潜水艦最後の航跡 下巻 ジョン・J.ゲヘーガン/著 草思社 2015
・海軍特殊潜航艇 日本海軍潜水艦戦史 勝目純也/著 大日本絵画 2011
・日本海軍潜水艦物語 鳥巣建之助/著 光人社 2002
・消えた潜水艦イ52 NHKスペシャル・セレクション 新延明/著 日本放送出版協会 1997
・伊号第27潜水艦の活躍 暗号長の潜水艦戦記 吉田菊芳/著 戦誌刊行会 1995
(2)アメリカの潜水艦に関する資料
・アメリカ潜水艦隊の戦い フリント・ホィットロック/著 元就出版社 2016
・米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方 L.デビッド・マルケ/著 東洋経済新報社 2014
- 事前調査事項
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ネット上やツイッターに質問の記述がよく引用されている、とのこと。
- NDC
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- 各種の船舶.艦艇 (556)
- 戦争.戦略.戦術 (391)
- 日本史 (210)
- 参考資料
- キーワード
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- 潜水艦
- 太平洋戦争
- 日本海軍
- 海軍-日本-歴史
- 太平洋戦争(1941~1945)
- 日本-対外関係-アメリカ合衆国-歴史
- アメリカ合衆国-対外関係-日本-歴史
- 対米観
- 先入観
- 士気
- 通念
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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国立国会図書館レファレンス協同データベース事業サポーターの方から
次の情報をいただいた。
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類似した記述のある資料がありましたので参考までにお知らせします。
Google書籍検索で「贅沢 米国 潜水艦」で検索したところ、以下の資料がヒットしました。
中山定義 著『一海軍士官の回想 : 開戦前夜から終戦まで』(毎日新聞社、1981)p22
麻田貞雄 著『両大戦間の日米関係 : 海軍と政策決定過程』(東京大学出版会、1993)p218
うち、『一海軍士官の回想』は所蔵がなく確認できていません。『両大戦間の日米関係』については、現物を確認したところ、以下の記述があります。
「アメリカ人は贅沢な生活に慣れておるから、あの狭い船の中で、暑い所で、長期の作戦行動をやることは、とても堪えられるものではない」
この記述は豊田副武『最後の帝国海軍』(世界の日本社、1950)からの引用(p188)のようです。別の版の『最後の帝国海軍』(國本隆、1984年)を確認したところ(p174)、同じ記述でした。
なお、世界の日本社版は国立国会図書館デジタルコレクションに収録されています。(参加館公開資料)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1162051
また、『両対戦間の日米関係』当該部分の注には、他の関係資料として前掲『一海軍士官の回想』の他、いくつかの資料が挙げられています。
1.防衛庁防衛研修所戦史部『戦史叢書 潜水艦史』(朝雲新聞社、1979)p27-54
2.福留繁『史観真珠湾攻撃』(自由アジア社、1955)p124
3.中村菊男編『昭和海軍秘史』(番町書房、1969)p219
4.池田清『海軍と日本』(中央公論社、1981)p21
うち、1と2を確認しましたが、関係する記述が見当たりませんでした。(同じ文章の別部分の記述の注のようです。)3と4は所蔵がなく、現物を見ることができないので確認できていません。
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※なお当館に次の所蔵があり、内容を確認したが、関係する記述は見当たらなかった。
・4.池田清『海軍と日本』(中央公論社、1981)p21
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000220192