レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年10月02日
- 登録日時
- 2024/10/29 11:59
- 更新日時
- 2024/12/27 13:40
- 管理番号
- 2501
- 質問
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解決
絵本『たまねぎ』(福音館書店)の中で、1年目のタネまきではねぎぼうずになることなく収穫できるのに、2年目ではねぎぼうずができるのはなぜか。絵本は北海道が舞台となっている。
- 回答
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『たまねぎ』(E62/ハナ/)
『タマネギ大事典』(626.5/ノウ/A)
『世界大百科事典 18』(031/ヘイ/)
『タマネギの絵本』(626/タマ/)
『はじめての野菜づくり大図鑑131種』(626.9/ホウ/A)
下記の資料も参考になります
『野菜園芸大百科 19』(626.0/ヤサ/A)
(追記日2024年12月27日)
- 回答プロセス
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①「626」(園芸)の棚をブラウジングより『タマネギ大事典』(626.5/ノウ/A)を確認
→p.25-26 「形態的特性」に「また暖冬異変などで、苗が大苗になりすぎてしまってから寒波が襲来したばあいなどは、冬の寒さに感応して花芽分化し、抽台することがある。これを不時抽台という。」 また「収穫期に達するころから休眠に入り、…(中略)…休眠が覚醒して萌芽してくる。この萌芽球が冬季に長期間の低温に遭遇すると、花芽が形成され、春とともに抽台、開花、さらに結実して一生を終わる」の記載あり
→p.25 「第3図タマネギの一生」の図あり 苗が低温にあうと不時抽台するが、収穫後に休眠から覚醒したあとに萌芽して抽台し、ねぎぼうずができるという流れが絵で解説されている ここで抽台の意味を調べてみることにする
②『世界大百科事典 18』(031/ヘイ/)にて抽台について確認
→p.303「ちゅうだい」の項目に「生長点部に花芽が分化すると、やがて花蕾(からい)をつけた茎(花茎、とう)が伸長し、葉の節間も長くなる。この現象を抽だいといい、〈とう立ち〉ともいう。」また「これが起こると、葉菜類では結球しなかったり、根菜類では根の肥大が停止して、商品価値があるものを生産できなくなる。しかし種子の収穫が目的の採種栽培では抽だいさせることが必要である。」の解説あり これより、花蕾をつけた茎がのびることを抽だいといい、これがねぎぼうずであること、また商品となる部分の生長が停止することがわかる
さらに「花芽が分化しなければ抽だいも起こらないが、花芽の分化に必要な日長、温度条件は種類によって異なる」との記載があり、この項目は野菜一般についての解説のため、たまねぎの場合について調べることにする
③タマネギの花芽の分化について、ふたたび『タマネギ大事典』(626.5/ノウ/A)を確認
→p.29-30 「生理、生態的特性」の「3.花芽分化と抽台」に「タマネギは、生育途中で低温に遭遇すると花芽分化し、抽台する。だいたい10℃前後またはそれ以下の低温に一定期間おかれることによって花芽が分化し、抽台をはじめる」「一般に大苗になるほど低温の影響を受けやすく、抽台の危険も大きいが、大苗ほど収量も多い」との記載あり
→p.117-123 「タマネギの品種の特性と作型利用 北海道」に「一方で、旺盛な生育は不時抽苔の危険性を高めることにつながり、過去の低温年には抽台株が多発したこともある」など、絵本の舞台である北海道での抽台について記載あり
④「626」(園芸)の棚をブラウジングより『タマネギの絵本』(626/タマ/)を確認
→p.34 「とう立ちと花」の項目に「タマネギのタネをとるときには、とう立ちして、開花させて、タネができるようにするよ。球を太らせて収穫するには、とう立ちが多くては収穫が少なくなるし、品質もよくないので、とう立ちができにくいように、品種の選び方や、苗のつくり方、肥料のやり方などをくふうするんだよ。」ここより、球を収穫するときはとう立ちしないように育て、タネをとる時にはとう立ちさせるようにしていることがわかる
→p.34 「花芽ができるのは」の項目に「生長して葉鞘部の太さが1センチ以上、葉数が12~13枚に大きく生長して、10~15℃の低い温度に20日以上あうと花芽ができるよ。…(中略)…栄養が悪いと早くタネをつくって、つぎの世代をふやそうとするからなんだね。」との解説あり 低温や栄養状態の悪い状況など、花芽ができる詳細な条件についての記載あり
葉鞘部(ようしょうぶ)とは→p.6-7 葉鞘について タマネギの球と、そこから伸びる葉の根本の部分を「葉鞘」と解説する絵あり
「さやみたいで、若い葉を包むようになっている」の記載あり
→p.34-35「タネとりでは」に「 北海道でのタネとりは、4月下旬~5月上旬に母球を植えると、7月中旬~8月上旬に開花し、9月上中旬ごろ、花の中央部に黒いタネがみえるので、刈りとって乾かそう。」と解説されている
「たねたまねぎ」 を春に植え、夏にねぎぼうずができて花が咲き、秋にたねができるという絵本『たまねぎ』のとおりの流れ
→p.35 「葉が倒れるのはなぜ」の項目より「球ができあがると葉がしぜんと倒れてくるよ。…(中略)…葉鞘部は中空で、重い葉を支えることができないから、しぜんに葉が倒れて収穫してもいいことがわかるんだ。…(中略)…北海道のように春まき栽培では緑色の葉が、からからに枯れたあとに収穫しているよ。」と記載あり これも絵本の流れと同じ
以上より、たまねぎを収穫する1年目はとう立ち(抽台)しないように育て、たまねぎの種子をとる2年目には、とう立ちして、開花させて、種子ができるようにするとわかる
とう立ちする条件は10~15℃かそれ以下の低い温度に20日以上あうことのため、たまねぎを収穫するときはこれを避け、種子をとるためにねぎぼうずを作るにはこの条件に合わせ、「たねたまねぎ」を植えることが判明する
現在のたまねぎの種子のとり方についてさらに確認してみる
⑤「626」(園芸)の棚をブラウジングより『はじめての野菜づくり大図鑑131種』(626.9/ホウ/A)を確認
→p.28 「タネの取り方」の項目 「固定種や在来種などの野菜からは翌年のタネを取ることができます。」
→p.16-17 「タネまき」の項目 「京野菜など各地の気候風土に適応した「在来種」、遺伝的に安定した「固定種」、さまざまな特性を持つ「F1種(一代交配種)」に大きく分けられます。一般的なF1種は、病気に強い、収穫量が多くなるなどのメリットがあります。ただし、その特性は一代限りで、タネを取って翌年まいても多くの株に違う特性が出てきます。固定種や在来種は、育てやすくタネを取って翌年まいても同様の特性が出ます。ただし、在来種は、栽培地域以外だと、その特性が出にくい場合もあります」 の記載あり
これより、収穫したたまねぎから種子をとるのは、在来種か固定種のたまねぎであることがわかる
⑥再び『タマネギ大事典』(626.5/ノウ/A)を確認
→p.104「F1育種が主流に」に「北海道向けの春まき品種としては、…(中略)…1976年に育成した‘オホーツク’が実用的F1品種の最初である…(中略)…1994年には9割を超えるようになった」 の記載あり
これより、F1種が主流となり現在では「たねたまねぎ」を植えてタネをとるやり方は少数となっていることが判明
『たまねぎ』の絵本は初版の出版年が1977年のため、現在主流のF1種ではなく、北海道の在来種か固定種のたまねぎを栽培していて、2年目に「たねたまねぎ」を植えて種子をとっているとわかる
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本語 (031 9版)
- 蔬菜園芸 (626 9版)
- 参考資料
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花田 弥一/さく. たまねぎ 第2刷. 福音館書店, 2016-02. (かがくのとも特製版)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I12111000100350291 -
農文協 編. タマネギ大事典 : タマネギ/ニンニク/ラッキョウ/シャロット. 農山漁村文化協会, 2019.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I029438449 , ISBN 978-4-540-18165-8 -
世界大百科事典 18 (チキン-ツン) 改訂新版. 平凡社, 2007.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009140539 , ISBN 978-4-582-03400-4 -
かわさきしげはる へん , たざわちぐさ え. タマネギの絵本. 農山漁村文化協会, 2005. (そだててあそぼう ; 61)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007698999 , ISBN 4-540-04164-9 -
北条雅章 著. はじめての野菜づくり大図鑑131種. 新星出版社, 2024.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033371182 , ISBN 978-4-405-08573-2
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花田 弥一/さく. たまねぎ 第2刷. 福音館書店, 2016-02. (かがくのとも特製版)
- キーワード
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- たまねぎ(タマネギ)
- ねぎぼうず(ネギボウズ)
- 抽台(チュウダイ)
- とう立ち(トウダチ)
- 不時抽台(フジチュウダイ)
- たね(タネ)
- 在来種(ザイライシュ)
- 固定種(コテイシュ)
- F1種(エフワンシュ)
- 北海道(ホッカイドウ)
- A
- 一般書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000358748