レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年12月25日
- 登録日時
- 2024/03/11 14:27
- 更新日時
- 2024/03/11 14:40
- 管理番号
- R1005038-161
- 質問
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解決
動物園や水族館も「博物館」なのはなぜか。
- 回答
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●博物館法における定義
博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)第二条より、
「この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、(略)」
とあり、「育成」という言葉から、動物園、水族館等も含まれる、広義の施設を指すことがわかる。
●博物館、動物園、水族館の歴史を広く扱った図書
日本における動物園の歴史は博物館の成立史と密接に関わっているため、博物館史・動物園史を扱った図書には二者の関係を詳細に記述したものが多い。また、日本の水族館は上野動物園内に設けられた施設から始まっており、水族館に関しても同様の図書に記述がある。
以下に主な図書を紹介する。
・『新編博物館概論』鷹野光行/[ほか]編 同成社 2011.3 ISBN:978-4-88621-555-0
*p.32~イコム(International Council of Museum 国際博物館会議)やユネスコ、欧米、日本での博物館の定義について触れられる。イギリスは範囲を狭め、資料や標本を収集・保護対象としているが、ほかの組織や国では生命をもつものも博物館資料であることが示されている。
*p.111~112 慶応2年に福澤諭吉が著した『西洋事情』のなかで紹介される5種類の博物館に動物園や植物園があること、またこの動物園には水族館的性格が加味されていることが述べられる。
*p112~113 慶応3年の第4回万国博覧会に出張した田中芳男は、パリで博物館・植物園・動物園を包括したジャルダン・デ・プラントを目にし、のちに博物館を設置するための基本構想を策定した際、「博物館」「博物園」「書籍館」「博物局」の4部門が一体となったものを考えた。
*p.200~211 世界と日本の動物園・水族館の歴史の概略が記される。
*p.201 「パリでは、大革命後、1626年に開設された薬草園がジャルダン・デ・プランテ(訳せば「植物園」)と名を改め、そこへ、前述のヴェルサイユ宮殿に生き残っていた動物を移しメナジェリーを開設した。(略)このメナジェリーは博物館付属施設として設けられた動物園の最初のもので、後に博物館付属施設として開設された上野動物園のモデルとなったものである。」
*p.202~203「明治時代になってからの近代動物園の開設は、わが国における博物館の開設と軌を同じくしている。(略)1882年(明治15)3月20日に開園した博物館(現東京国立博物館)の附属動物園が、現在の上野動物園の始まりである。」
*p.205 ロンドン動物園内に造られた水族館が世界最初の水族館であることが書かれている。
*p.208 「わが国の水族館史は、1882年(明治15)に東京で建設された「観魚室(うをのぞき)」で始まる。観魚室は、パリのジャルダン・デ・プランツをモデルにして、国立教育博物館(現国立科学博物館)の付属動物園(現上野動物園)内に設けられ」
・『日本博物館成立史 博覧会から博物館へ 普及版』椎名仙卓/著 雄山閣 2022.6 ISBN:978-4-639-02812-3
日本での博覧会と博物館のつながりが記される。
・『動物園の歴史 日本における動物園の成立』佐々木時雄/著 西田書店 1975
*p.7~福沢諭吉が随行した文久2年の遣欧使節団がめぐった動物園や、それらについて彼らがどのように書き残したかについて触れている。
*p.38「日本において動物園は博物館を構成する一部分として創設された。」
・『水族館』鈴木克美/著 法政大学出版局 2003.7 ISBN:4-588-21131-5
世界と日本の水族館の始まりについて記している。
*p.44「わが国最初の水族館が、明治15年(1882)にできた上野動物園の付属水族館であったことは、今ではほとんど疑いの余地はない。」「教育博物館・動物園の誕生にあたっては、当時文部省の二人の役人、文部大丞町田久成と編輯権助田中芳男の熱心な努力が語り残されている。」
*p.45 (上野の施設について)「館長ならびに園長という職はなく、博物館も動物園も農商務省博物局の所管で、動物園はその下の天産課所属であった。博物局長は大書記官町田久成、天産課長は同じく農商務省大書記官田中芳男で(略)それぞれ、事実上の博物館長と動物園長であった。」「日本最初の上野動物園の水族館は「観魚室」と書いて「うをのぞき」と読ませた。」
*p.144~154 博物館法制定以前の昭和初期における、動物園や水族館を博物館とみなすかいなかの議論について触れられる。
・『博物館の歴史 THE HISTORY OF MUSEUM』高橋雄造/著 法政大学出版局 2008.5 ISBN:978-4-588-37116-5
*p.204~212 フランス革命の結果として誕生した、近代的な公共施設としての植物園と動物園および水族館の歴史について述べられる。
・『日本博物館発達史』椎名仙卓/著 雄山閣 1988.7 ISBN:4-639-00733-7
戦前における博物館令制定の運動や、昭和27年の博物館法施行直後の博物館協会や日本動物園水族館協会からの改正意見について触れる。
・『改正博物館法詳説・Q&A 地域に開かれたミュージアム』博物館法令研究会/編著 水曜社 2023.3 ISBN:978-4-88065-541-3
*p.100「問10 歴史博物館や美術館と、動物園や水族館といった施設は、その役割が異なると考えられるが、どのように考えるか。」という問いに対し、博物館法制定時より博物館の類型の一つとして認識されており、関係団体・関係者も自らを博物館と自認していると回答している。
●東京国立博物館、上野動物園による周年史
・『上野動物園百年史 [本編]』東京都/著 恩賜上野動物園/編集 第一法規 1982
パリで開かれた第4回万国博覧会への参加が日本の博物館建設への契機となったことが冒頭で述べられ、以降博物館以前の組織の変遷にも触れられる。
*p.275 昭和26年に博物館法が公布されるが、公立博物館は教育委員会の所管に属することや、利用に対する対価を原則徴収してはならないという点に懸念があったことがわかる。
・『東京国立博物館百年史』東京国立博物館/編集 第一法規出版 1973
東京国立博物館、上野動物園の歴史が詳細な資料とともに述べられる。
●インターネット上の情報
・文化庁博物館総合サイト
https://museum.bunka.go.jp/
改正された博物館法の施行に際し、法改正の概要や博物館についてまとめたもの。
トップページでは「「博物館」と聞いて何が思い浮かびますか?土器や土偶を展示する考古資料館も、絵画や古美術を展示する美術館も、動物園も水族館も実は博物館なんです。」としている。
・「日本の動物園・水族館は博物館ではないのか? : 博物館法制定時までの議論を中心に」瀧端真理子 追手門学院大学心理学部紀要 8 33-51, 2014-03-01
(追手門学院大学機関リポジトリ
https://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000145OTEMON_403140305 より2023年12月13日最終閲覧)
動物園・水族館の法的根拠を考えるために、博物館法制定時までの議論を『博物館研究』掲載記事及び、『社会教育研究資料ⅩⅣ』収録資料を中心に検討した論文である。資料をもとに、昭和3年に設立された博物館事業促進会が設立時から動植物園、水族館を博物館類似施設と捉えていたことなどが示される。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 博物館 (069 10版)
- 動物学 (480 10版)
- 参考資料
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- 『新編博物館概論』 鷹野光行/[ほか]編 同成社 2011.3 , ISBN 978-4-88621-555-0
- 『日本博物館成立史』 椎名仙卓/著 雄山閣 2022.6 , ISBN 978-4-639-02812-3
- 『動物園の歴史』 佐々木時雄/著 西田書店 1975
- 『水族館』鈴木克美/著 法政大学出版局 2003.7 , ISBN 4-588-21131-5
- 『博物館の歴史』高橋雄造/著 法政大学出版局 2008.5 , ISBN 978-4-588-37116-5
- 『日本博物館発達史』椎名仙卓/著 雄山閣 1988.7 , ISBN 4-639-00733-7
- 『改正博物館法詳説・Q&A』博物館法令研究会/編著 水曜社 2023.3 , ISBN 978-4-88065-541-3
- 『上野動物園百年史』東京都/著 第一法規 1982
- 『東京国立博物館百年史』東京国立博物館/編集 第一法規出版 1973
- キーワード
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- 博物館
- 動物園
- 水族館
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 団体・施設に関すること
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000347267