レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年09月15日
- 登録日時
- 2023/11/08 12:15
- 更新日時
- 2023/11/29 21:32
- 管理番号
- 県立長野-23-120
- 質問
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未解決
昭和39年(1964年)頃に長野県小谷村(おたりむら)の野天風呂を訪れた。山の中腹にあり、屋根も脱衣所もなく木枠の湯舟のみだったが、見晴らしがよかったと記憶している。この温泉は今のどこか知りたい。
- 回答
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確定できる資料は見つけられなかった。
『小谷村誌 社会編』小谷村誌編纂委員会編 小谷村村誌刊行委員会 1993【N231/46/3】p.251-256に、温泉の項目があり、小谷温泉、姫川温泉、島温泉、来馬温泉、下里瀬温泉、奉納温泉、猫鼻温泉の記述がある。
<小谷温泉>
1500年代に温泉として発見されていた記述がある。各旅館ごとに源泉が異なること、以前は各旅館とも外湯施設で自由に入湯できるようになっていたので、湯治と温泉巡りを楽しんでいた、との記述もあった。いつ頃まで、外湯として利用していたかの記述がないので断言はできないが、別の旅館の風呂を利用した可能性もある。
なお、小谷温泉の近くに、村営雨飾荘があり露天風呂もあるが、昭和49年以降開鑿、設置されたもの。
<姫川温泉>
姫川沿いに源泉を2キロ引湯して作られた温泉郷とあり、昭和33年に開業している。
<島温泉>
明治時代には湧出があり、大正期に営業が開始された温泉。昭和10年頃、新しい源泉を見つけ現在に至っているとあった。
<来馬(くるま)温泉><下里瀬(くだりせ)温泉>
ともに、昭和40年代に開削された温泉なので、問い合わせの露天風呂には該当しない。
<奉納(ぶのう)温泉>
村有林堂津岳林道終点付近の湯沢に、昔から湧出していた温泉を引湯し、昭和49年に開業している。源泉の様子については書かれていないが、利用したとすれば源泉と思われる。
<猫鼻温泉>
昔から自然湧出していたが、交通の便が悪いため放置されていた、とあり、平成に入り、露天風呂として開業している、ともあった。
『小谷民俗誌』小谷村教育委員会編・刊 1979 【N382/42】p.28-31に温泉の項目があり、小谷温泉、島温泉、姫川温泉、下り瀬温泉、奉納温泉、来馬温泉の記述がある。
この中で奉納温泉について、「昭和49年に引湯するまでは、湧出地に木槽を作って傷の手当や胃腸病の治療などに利用している」とあった。
『中土誌』中土小中学校編 小谷村教育委員会 1970 【N231/11】p.210に「奉納の湯」があり、
(-前略-)土谷川の支流湯沢のところにある。二カ所から湧出しているが、いづれも水が混じるため
稍ゝ温度が低い。したがって夏の入浴には適するが、山奥で不便のため今だに開発されていない。発見
の年時はわからないが、相当昔から里人には知られている。
とあった。ここでいう源泉は、現在の国土地理の地図によると(https://maps.gsi.go.jp/#15/36.821207/137.975707/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f0)のあたりかもしれない。
また、「松葉の湯」について
清水山の下区沖の松葉沢にある。昭和の初頭ごろまでは湯屋もあり、村民に利用されていたのが、今
はその形跡もない。
とあった。昭和39年頃の記述はないため、詳細は不明。
清水山の下区沖は、上記と同じように国土地理院の地図で見ると「沖」と表示のあるあたりかと思われる。『中土誌』によると、清水山周辺は地滑りが多く、昭和35年に大きな地滑りがあったようで、中谷川方向に崩れている。
『小谷温泉賛歌 山田寛・雪の中の青春』山田旅館記念誌刊行委員会著 山田旅館 1999【N289/ヤマダ】
p.214に、戦時中にブナ林の切り出しがあった旨の記述があった。物資が不足した時代に、ブナでベニヤを作る等の事業があったため、県内でもあちこちの山で切り出しがあったらしい。
ブナは成長が遅いため、現在とはかなり見晴らしの様子も違っていたと思われる。
- 回答プロセス
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1 郷土分類N231(北安曇郡)の資料から小谷村に関するものを探す。『小谷村誌 社会編』から、村内の温泉を確認する。
2 郷土分類N292(長野県の地誌)で、小谷村の温泉を探す。
3 昭和39年頃の温泉ということから、郷土分類N380(長野県の民俗)の書棚周辺で小谷村に関する風俗習慣関係の資料で、古い温泉を調べる。
4 『小谷民俗誌』に記載のあった二つの温泉の場所について、現在の地図で確認する。
<調査資料>
・『信州の日帰り温泉100 上』 長野こまち 2004 【N292/247/1】
・『私の小谷温泉』深田志げ子著 山と渓谷社 2015 【914.6/フシ】
・『山旅湯旅 山と温泉はセットで』丸山晴弘著 ケイシイシイ 1989【N292/66】
・『小谷発見 小谷村30周年記念』小谷村30周年記念誌編集委員会編 小谷村 1988 【N231/49】
・『信州の温泉 ふるさとガイド』小岩井孝著 郷土出版 1977 【N292/17】
・『信州白馬山麓 小谷の本』長野県小谷村観光連盟 2007 【N292/375】
・『小谷の民俗 信越国境・戸土・横川地区』小谷村教育委員会編 柳沢書苑 1972 【N382/17】
・『北アルプス 小谷ものがたり』尾沢健造著 信濃路 1975 【N231/19】
・『信濃温泉案内』下平廣惠著 信濃郷土史出版 1946 【N290.2/162】
- 事前調査事項
- NDC
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- 中部地方 (215 10版)
- 日本 (291 10版)
- 風俗史.民俗誌.民族誌 (382 10版)
- 参考資料
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小谷村誌編纂委員会 編集 , 小谷村教育委員会. 小谷村誌 社会編. 小谷村誌刊行委員会, 1993.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I068423023-00 (【N231/46/3】) -
長野県北安曇郡小谷村教育委員会 編 , 小谷村教育委員会 (長野県). 小谷民俗誌. 小谷村教育委員会, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001430712-00 (【N382/42】)
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小谷村誌編纂委員会 編集 , 小谷村教育委員会. 小谷村誌 社会編. 小谷村誌刊行委員会, 1993.
- キーワード
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- 小谷村
- 北安曇郡
- 温泉
- 露天風呂
- 野天風呂
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000340777