レファレンス事例詳細

一口に「食の違い」と言いましても様々なものがあるかと思います。また、関西と関東とはどこを指すのか、どこで線引きするのかも難しい問題ではないでしょうか。上記を踏まえて調査いたしましたところ、下記資料が参考になるかと思いますので、ご紹介いたします。

『東京と大阪・「味」のなるほど比較事典』宮本又次著、文芸春秋
味の好み、料理法、食べ方、呼び名など、東京と大阪の違いとその背景について書かれています。一例といたしましては、関東は濃口醤油、関西は淡口醤油が主流と言われますが、その背景について「では、関東ローム層に覆われた東京の土地では、どういう現象が起きるのか。地味に優れず、加えて荒川水系の水質も良くないために、野菜が育ちにくい。味は劣る。そこで、東京では醬油をドバッと使って、野菜を煮つめることになる。味を醤油でごまかし、色も黒っぽくしてしまう。近辺でとれる魚は、大味な赤身魚で生臭い。これもまた、醤油等での味付けが必要になる。使用する醤油は濃口であるから、大根も魚も真っ黒に煮詰まり、「辛く濃い味」になる。(中略)大阪は畑地で、淀川水域の土壌も恵まれていた。そこでは、良質の野菜が育つ。瀬戸内海でとれる魚は繊細な味の白身魚で、料理をする大阪人は素材の持ち味を活かそうと考える。自然のものを最高の状態で提供しようとするから、醤油は極力使わない。使用する場合でも、淡口醤油(薄口ではなく淡口の方がしっくりくる)だ。」(P.25)と述べられています。

『関西と関東』前垣和義PHP研究所
第４章が「食物史から見た関西と関東」になっており、年中行事と東西の食べ物、魚食・野菜から見た関西と関東など、幅広く書かれています。また、第1章は「関西と関東の概念と境界」となっており、関西と関東とはどこを指すのかから考えられるのであれば参考になるのではないかと思います。

『東西の食文化 : 日本のまんなかの村から考える』大石貞男著、農山漁村文化協会
「Ⅳ　東西食文化の接点として」では、米の食味のちがいや、おにぎりとおむすび、うどんとそばなどについて書かれています。また、食文化のちがいを眺める際には、九州、四国、中国、沖縄、北海道などもそれぞれ独自の文化県、食文化圏を形成してきているので、単に東西という分け方以外にも、太平洋圏と日本海圏というような南北の線も引ける(P.144)と書かれています。

『日本の東西「食」気質』山口米子著、三嶺書房
そばとうどん、牛鍋とすき焼、うなぎのかば焼、うす味とこい味など代表的な東と西の違いに着目し、さまざまな食の地域性と食文化の背景について書かれています。

上記の資料は日本十進分類法上382.1、383.8に分類されておりますので、当館含め図書館で資料をお探しになられる際は、382.1、383.8周辺を見ていただきますと参考になる資料が見つかるかと思います。