レファレンス事例詳細

「弥栄（いやさか）」は、戦前に行われていた皇国精神の高揚等を目的とした「日本体操」または「皇国運動」（どちらも“やまとばたらき”と読む）の16番目（最終）の動作である。
二拝二拍手のあと、一人が「天皇陛下（すめらみこと）」と唱え、残りの者全員が「弥栄」を三唱し二拍手一拝をもって終了とした。この「弥栄」の複唱の際に「万歳」と同様に両手を肩より広く高く上げる動作を3度行った。
この体操は、法学者で国体学者の筧克彦により1920年代に考案された。筧は「万歳」は漢語なので、皇国にふさわしいのは大和言葉の「弥栄」であると主張し、“やまとばたらき”は主に農業教育機関系の国民高等学校や農民道場に普及していった。

●「弥栄」の動作の図解説明が掲載された資料

・『參上の一路』岩手縣立六原靑年道場 [19--]
　※巻末に“やまとばたらき”の図解付属資料あり。

・『日本体操』筧克彦∥著 春陽堂 1929
⇒p.9～47「日本体操（やまとばたらき）の動作」
　→p.45～47「16　いやさか」
　所作の説明に、〝弥栄を唱ふる時には、両足をしかと踏み直立し下腹部に力を入れ、双手を末広形に高く挙ぐ〟とあり。

・『躍動する「国体」筧克彦の思想と活動』西田彰一∥著 ミネルヴァ書房 2020
⇒p.141～173「〈やまとばたらき〉の実践と普及」
　→p.147「〈やまとばたらき〉（皇国運動/日本体操）の動作図」
　※上記資料のp.9～47の図をもとに作成された一連の動作図。

●「弥栄」の動きについて文章のみで説明のある資料

・『六原道場思い出の記 寄せられた手紙』千田みさほ∥著 2000
⇒p.37～39（主にp.39）「やまとばたらき」
　〝次は『いやさか』に移った。二拝二拍手して、「すめら命　いやさかー、いやさかー、いーやーさーかー」と両手でばんざいの動作をしながら復唱し、二拍手一拝して「やまとばたらき」を終った。〟

【参考資料】
・『皇国運動』筧克彦∥著 菱沼理弌∥著 博文館 1920