レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20170427
- 登録日時
- 2020/11/19 00:30
- 更新日時
- 2020/11/19 11:16
- 管理番号
- 0001002863
- 質問
-
解決
沖縄と豚肉料理の歴史が知りたい。
- 回答
-
以下の資料を紹介した。
①
『沖縄大百科事典 下 ナ~ン』 (沖縄大百科事典刊行事務局/編、沖縄タイムス社、 1983.5)
p371 「豚肉料理」の項に「琉球料理のなかで最も代表的な料理。豚料理の発達した理由として、安価な芋飼料に恵まれていたこと、気候が養豚に適し、沖縄の人の嗜好にあっていたこと、冊封使の接待料理として需要が大きかったこと、救荒用家畜として重要な役目を果たしていたことなどがあげられる。肉だけでなく、豚一頭を頭から足の先…余すところなく使いこなす。」「いろいろな料理に使われ、調理法や種類の多いことは琉球料理の大きな特徴となっている。」の記述がある。「豚肉の各部分、料理名に沖縄独特の名称がついていて…」の記述があり、豚肉の方言名称の図説、代表的な豚肉料理の名称が紹介されている。
②
『沖縄肉読本』 (編集工房東洋企画/編集、編集工房東洋企画、2010.1)
p12-17 「沖縄肉文化の歩み ウチナーンチュは何を食べてきたのか」に、「琉球料理の確立と首里王府による養豚のすすめ」、「戦後の豚肉の在り方」の項目がある。
p140-143 「沖縄の伝統料理と豚肉との深い関係」に、「伝統料理における2つの流れと沖縄特有の風土・気候ならではの肉の調理法」、「中国と薩摩にもたらされた琉球料理の変化と今日に伝承される沖縄の伝統料理」の項目があり、沖縄と豚肉料理の歴史についての記述がある。
③
『新沖縄文学 第54号』 (沖縄タイムス社/編、川満 信一/編、沖縄タイムス、1982.12)
p62-73 「史料にみる産物と食生活 : 「李朝実録」と「冊封使録」をめぐって」(金城須美子)に、
p64 「少くとも十七世紀までは…冊封使の食糧支給に、島内の豚だけでは足りず、永良部・大島など近隣から買い集めた実情を考え合わせれば、豚料理を基調とする食文化の形成は、それ程古くはない。・・・冊封使歓待の宴席料理(冠船料理)を『御冠船記録』で調べてみると、大かた中国の?席料理に倣い、しかも、調理人も冊封使帯同の者であれば、琉球の宮廷料理への影響も濃厚であったと考えられる。ラフテー、暖鍋(ヌンクウ)も元祖は中国である。冊封使の食糧支給の為に奨励した養豚は、甘藷の生産とあいまって、豚の繁殖をもたらし、ひいては豚肉を基調とした食文化を形成した、と考えられる。」との記述がある。
④
『沖縄の人とブタ』 (比嘉/理麻/著、京都大学学術出版会、2015.3)
p24-28 「1 沖縄における人とブタの関係 1-1 人とブタの沖縄史」に、「「李朝実録」には沖縄本島から先島諸島にかけて多種の家畜が飼育されていたことが記されている。…各島々に共通して飼われていたのはウシ、ネコ、トリである。ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジに関しては、沖縄本島だけで飼育されていた。…ブタは一五世紀後半には飼育されていた」「一八世紀半ばになると、庶民のあいだにも豚肉料理が普及するほどまでになった」等の記述があり、養豚の歴史や、中国との関係、第二次世界大戦の影響等の記述がある。
p30-33 「2 沖縄における豚肉食の重要性 2-1 豚肉食の特徴」に、「沖縄の豚肉食は、調理法と保存法において独自性が高い。沖縄の豚肉料理の特徴は、基本的に水煮してから食される点である」の記述がある。また「沖縄の豚肉料理に関しては、外来の加工品を積極的に利用する点が指摘されてきた…豚肉食の新たな形を示す最たる例として、戦時中に米兵の保存食として持ち込まれた調理済み豚肉の缶詰が沖縄料理に組み込まれ、定着している。」とあり、沖縄土産や外食産業にも溶け込んでいるとの記述がある。他にも「沖縄で仏教伝来に伴う「食肉禁忌」や「殺生禁断」の思想の不定着、中国の冊封体制、米国統治といった独自の歴史を背景として、ブタの自家生産・自家消費を通して豚肉集中型の消費が形成されてきた」等の記述がある。
p34 「一九七〇年代以降の沖縄観光は「南国」イメージによって牽引されていく…そのなかで豚肉料理も、観光の文脈で構築されたイメージと結びつきながら人気を博していった。…二〇〇〇年代にかけて、沖縄の食に対する肯定的な評価は…「長寿社会」のイメージと結びつけられることで成立した。なかでも豚肉は「長寿」と結びつく代表的な食材であった。」の記述がある。
⑤
『日本の民俗 12 南島の暮らし』 (古家 信平/[ほか]著、吉川弘文館、2009.2)
p196-278 「Ⅲ 肉食の民俗誌」(萩原左人 [著])のうち
p262-273 「4 肉正月の展開」の項に、正月の豚肉食について沖縄諸島、奄美諸島、先島諸島の具体的な事例から内容や地域的な差異についての記述がある。
⑥
『私の琉球料理』(新島 正子/著 柴田書店 1983.3)
p28 「豚の歴史」の項に「豚の歴史は古く、約三百年前には支那豚が輸入されたといいます。戦前は島豚と呼ばれる黒豚が飼われていましたが、戦後はランドレース種という白豚に変わり、飼料も甘藷(さつま芋)飼料から、次第に配合飼料に変わり、豚の味も変わってしまいました。」「沖縄の養豚は、甘藷作と結びついて発達し…」「気候が養豚に適していたこと、豚肉が沖縄の人の嗜好に合っていたこと、御冠船の接待料理として豚肉の需要が大きかったこと、救荒用家畜として重要な役目を果たしていたことなどが、養豚を盛んにし…」の記述がある。
「生活の知恵」の項に「一昔前まで、旧の正月やお盆には、大ていの農家で豚を屠ってごちそうするのがならわしでした…多量の豚肉は塩漬(スーチキー)にして貯蔵され…ラード作りも昔は大切な仕事でした」等の記述がある。
➆
『琉球料理』(新島正子/著 新島料理学院 1971.4)
p39 「沖縄の豚の歴史」の項に、「沖縄の豚の歴史は古く、もともと沖縄に棲んでいた野猪から改良されたものです。約三百年前には、支那豚が輸入され、又、大正初期にはイギリス産のバークシャーが輸入され…現在では、島豚は姿を消し、ランドレース種…という白豚が飼育され…養豚はますます盛んになって…質量共に全国でも屈指の養豚県となっています。」の記述がある。
⑧
『季刊銀花 第82号』(文化出版局 1990.6)
p25-29 「沖縄、食の知恵-過去、現在、そして…」(尚弘子/著)のうち
p27 「節目料理としての豚肉の利用法」の項に、「先人たちの知恵の結晶ともいえる沖縄の豚肉料理の特徴は、豚の心臓、肺臓、肝臓…耳や足まで巧みに調理し、豚一頭余すところなく利用したことにある。…沖縄の豚肉料理は、普段の質素な食生活の中で不足しがちな、蛋白質と脂肪を補うのに大切な役割を果たしてきた」の記述がある。
⑨
『聞き書 沖縄の食事』(「日本の食生活全集沖縄」編集委員会/編 東京 農山漁村文化協会 1988.4)
p328 「2、豚料理」の項に「沖縄で肉といえば豚肉を指すほど、じつに豚肉をよく使う。沖縄の食生活は…豚料理が中心になっている…大正末期ころまで、那覇、首里でも多くの主婦たちが副業に一、二頭の子豚を飼育し、…利殖を図っていた。しかし、農村地区では行事食にしか豚肉は食べられず、豚料理はなによりのごちそうである」の記述があり、以下、豚肉料理の紹介がある。
⑩
『全集日本の食文化 第8巻 異文化との接触と受容』 (監修/芳賀登 石川寛子 雄山閣出版 1997.10)
p215-240 「沖縄の肉食文化に関する一考察-その変遷と背景-」(金城須美子/著)のうち
p216-228 「肉食の実態」の項に、「沖縄先史時代の動物性食料」「一五世紀以降の肉食の実態」「戦後の肉食の実態」「八重山の肉食の実態」の見出しがあり、沖縄の肉食の変遷と背景について考察している。
p236 「一八世紀頃まで主流を占めていた牛肉食が廃れ、豚肉食になった原因」を挙げ、
p238 「豚肉を基調にして発達した琉球料理の完成は案外に遅く、一八世紀以降であろう。冠船料理あるいは日本料理を基盤にしながらも、沖縄の産物や気候風土に適した調理法を考案し、今日の琉球料理に仕上げたものと思われる。しかし、こうした琉球料理も一般庶民のレベルまで普及するのは明治以降であろう。」の記述がある。
まとめとして「豚の飼育は一四世紀以降で庶民の食生活に豚肉食の風習が定着するのは一八世紀半ばであり…豚肉が肉食文化の主流になった背景には冊封使の存在がある。冊封使達の供応には豚が必要であった。そのため王府は養豚を奨励し、その結果、豚の繁殖をみたこと。冊封使や進貢使を通して中国文化の影響を受け、豚の活用法、料理法などを学んだこと。王府の牛の屠殺禁止令によって牛肉を食べることができなくなったことも要因のひとつである。」の記述がある。
【参考資料】
①
『復活のアグー』 (平川宗隆/著、ボーダーインク、2016.2)
→ 該当する記述はない。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 歴史 (2)
- 参考資料
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- 沖縄大百科事典 下 ナ~ン 沖縄大百科事典刊行事務局/編 沖縄タイムス社 1983.5 (p371)
- 沖縄肉読本 編集工房東洋企画/編集 編集工房東洋企画 2010.1 , ISBN 4-938984-73-1 (p12-17、p140-143)
- 新沖縄文学 第54号 沖縄タイムス社/編,川満 信一/編 沖縄タイムス 1982.12 (p64)
- 沖縄の人とブタ 産業社会における人と動物の民族誌 比嘉 理麻/著 京都大学学術出版会 2015.3 , ISBN 4-87698-075-8 (p24-28、p30-32、p34)
- 日本の民俗 12 南島の暮らし 古家 信平/[ほか]著 吉川弘文館 2009.2 , ISBN 4-642-07879-5 (p196-278)
- 私の琉球料理 新島 正子/著 柴田書店 1983.3 , ISBN 4-388-05385-6 (p28)
- 琉球料理 新島 正子/著 新島料理学院 1971.4 (p39)
- 季刊銀花 第82号 文化出版局 1990.6 (p27)
- 聞き書 沖縄の食事 「日本の食生活全集沖縄」編集委員会/編 農山漁村文化協会 1988.4 (p328)
- 全集日本の食文化 第8巻 異文化との接触と受容 監修/芳賀登 石川寛子 雄山閣出版 1997.10 , ISBN 4-639-01468-6 (p215-239)
- キーワード
-
- 豚
- 豚肉
- 料理
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000289641