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レファレンス協同データベース
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レファレンス協同データベース

レファレンス事例詳細

事例作成日
2020/03/08
登録日時
2020/03/06 12:01
更新日時
2020/03/08 16:50
提供館
尼崎市立歴史博物館 地域研究史料室 “あまがさきアーカイブズ” (5000006)
管理番号
178
質問

解決

尼崎藩の初代藩主・戸田氏鉄(うじかね)が築いたという万丈堤防(ばんじょうていぼう)について知りたい。
回答
元和3年(1617)に近江国膳所(ぜぜ)から尼崎に移封され、初代尼崎藩主となった戸田氏鉄は、当時水害が多く低湿地が広がっていた神崎川水系下流域、現尼崎市域の小田地区南部の治水のため、左門殿川(さもんどがわ)開削等の土木工事を行なったとされます。
万丈堤防も、そういった治水事業のひとつとして、氏鉄が設けたものであると伝えられています。常光寺の東側の神崎川堤防から南西方向に延び、長洲(ながす)の南側付近から南進して尼崎城下北東に位置する大物(だいもつ)に至る堤防であったと考えられ、長洲付近から大物にかけての部分は長洲堤とも呼ばれていました。明治期の地形図には、部分的に万丈堤防の姿が描かれています。
『小田村勢』(小田村、昭和7年・1932、改訂版昭和11年・1936)は、堤防の南側に位置する今福・杭瀬・梶ヶ島といった村々を水害から守るため、北側の長洲村民の反対を押し切って氏鉄が堤防を築いたとしています。大正期には、大雨で堤防北側の常光寺の田地が冠水し、「バンジョ堤」(万丈堤防のこと)を切って水を抜こうとする常光寺側と、堤防を守ろうとする南側の杭瀬村民が衝突する事件もあったと記録されています。

なお、15世紀(室町時代)の史料に、摂津国楊津荘(やないづのしょう)内の「万町堤」を記録するものがあります。これが「万丈堤防」のことであるとすれば、氏鉄が入封する以前の中世に、すでにこの堤防が築かれていた可能性があります。原形となる堤があり、氏鉄がこれを強化する改築工事を実施したとも考えられます。
これは、同時期に氏鉄が行なったと伝えられる左門殿川開削についても同様で、氏鉄入封以前の慶長10年(1605)摂津国絵図に左門殿川の流路が描かれていることから、『尼崎市史』第2巻(八木哲浩-あきひろ-執筆)は、氏鉄がまったく新たに河川を開削したのではなく、すでに存在していた神崎川の分流を拡幅・改修したものであろうと指摘しています。

都市化が進んだ今日、万丈堤防の痕跡はその多くが失われていますが、杭瀬北新町付近の道路に沿った高低差などに、わずかにその名残りを認めることができます。
回答プロセス
1 戸田氏鉄の万丈堤防築造について記す文献

◆伊藤信『戸田氏鉄公』大垣市,1934
◆『小田村勢』小田村,1932 改訂版1936

2 万丈堤防の痕跡を読み取ることができる近代の地形図

◆大日本帝国参謀本部陸軍部測量局明治18年測量 二万分の一仮製地形図「尼崎」
(『明治前期関西地誌図集成』柏書房,1989,収録)
◆大日本帝国参謀本部陸軍部明治42年測図 二万分の一地形図「尼崎」
(『尼崎市史』第3巻付図)

3 万丈堤防をめぐる大正期の紛争及び関連する村道認定石柱(大正15年・1926設置)について記す文献

◆中村光夫「万丈堤防と村会認定の石柱」
 尼崎市立地域研究史料館紀要『地域史研究』第119号(2019)掲載
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/publishing/bulletin/contents/pdf/00119128.pdf

なお、大正15年設置の村道認定石柱については、尼崎市立地域研究史料館レファンレス事例068参照。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000161140
 
4 摂津国楊津荘内の「万町堤」について記す中世史料

◆尼崎市教育委員会所蔵天龍寺関係文書のうち応永27年(1420)「天龍寺寿寧院領所領目録(前欠)」1帖
 「某院(寿寧院)院領年貢・公事書上」として次の2つの文献に翻刻
 (1)『兵庫県史』史料編中世九
 (2)天野忠幸・樋口健太郎「尼崎市史古代・中世史料補遺(4)」
   尼崎市立地域研究史料館紀要『地域史研究』第117号(2017)掲載
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/publishing/bulletin/contents/pdf/00117083.pdf
◆寿寧院文書のうち長禄2年(1458)「足利義政御判御教書」
次の2つの文献に翻刻
 (1)『天龍寺文書の研究』思文閣出版,2011
 (2)天野忠幸・樋口健太郎「尼崎市史古代・中世史料補遺(4)」
同前

5 戸田氏鉄の左門殿川改修について記す文献

◆『尼崎市史』第2巻

6 現在も残る万丈堤防の痕跡を記録する文献

◆『一駅ウォーク』その3,あまがさき市民まちづくり研究会,2013
p12に「万丈堤」と題して次のように記している。
「(国道)2号線の東長洲の交差点を北に上がると、長洲公園の向かい側の、歩道橋のたもとから商店街の一筋北に北東に向かう道があります。よく見るとこの道は、周囲より高くなっています。この道が万丈堤の名残です」
事前調査事項
NDC
  • 近畿地方 (216 10版)
  • 河海工学.河川工学 (517 10版)
参考資料
  • 伊藤信 編輯 , 伊藤信. 戸田氏鐵公. 大垣市, 1934.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077379524-00
      (当館請求記号 289.5/A/イ)
  • 小田村役場 編 , 小田村役場(兵庫県川辺郡). 小田村勢 昭和7年刊. 小田村役場, 1932.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I045979347-00
      (当館請求記号 318.6/A/オ-1)
  • 兵庫縣川辺郡小田村役場編 , 兵庫縣川辺郡小田村役場. 小田村勢. 兵庫縣川辺郡小田村役場, 1936.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I010268712-00
      (当館請求記号 318.6/A/オ-2)
  • 参謀本部陸軍部測量局. 尼崎 第四軍管兵庫縣攝津國川邉郡 [1886]. 大日本帝國參謀本部陸軍部測量局, 1886. ([假製地形圖] ; 大坂近傍 第4號)
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008030305-00
      (地域研究史料館所蔵地図)
  • 地図資料編纂会編集 , 地図資料編纂会. 明治前期関西地誌図集成 : 1884(明治17)年〜1890(明治23)年. 柏書房, 1989.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I008471518-00
    ,  ISBN 4760105158   (当館請求記号 290/6.0/チ 明治18年測量仮製地形図収録)
  • 明治42年測図地形図 尼崎市. 尼崎市史 第3巻付図1. 尼崎市, 1970.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001209935-00
      (当館請求記号 219/A/ア-3)
  • 中村光夫「万丈堤防と村会認定の石柱」
    尼崎市立地域研究史料館紀要『地域史研究』第119号(12019)掲載
      (逐次刊行物)
  • 兵庫県史編集専門委員会 編 , 兵庫県. 兵庫県史 史料編 中世 9・古代補遺. 兵庫県, 1997.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002640256-00
      (当館請求記号 219/H/ヒ-18)
  • 天野忠幸・樋口健太郎「尼崎市史古代・中世史料補遺(4)」
    尼崎市立地域研究史料館紀要『地域史研究』第117号(2017)掲載
      (逐次刊行物)
  • 原田正俊 編 , 原田, 正俊, 1959-. 天龍寺文書の研究. 思文閣出版, 2011.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011187548-00
    ,  ISBN 9784784215713   (当館請求記号 211.4/A/ハ)
  • 尼崎市/編 , 尼崎市. 尼崎市史 第2巻. 尼崎 尼崎市, 1968.
    https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I024502588-00
      (当館請求記号 219/A/ア-2)
  • あまがさき市民まちづくり研究会編,一駅ウォーク その3,尼崎 あまがさき市民まちづくり研究会, 2013   (当館請求記号 219/A/ア)
キーワード
  • 戸田氏鉄
  • 万丈堤防
  • 尼崎藩
  • 神崎川
照会先
寄与者
備考
調査種別
事実調査
内容種別
郷土
質問者区分
社会人
登録番号
1000275426
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000275426 コピーしました。
アクセス数 5477
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