レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/1/20
- 登録日時
- 2017/07/20 00:30
- 更新日時
- 2017/07/20 00:30
- 管理番号
- D170113151805
- 質問
-
未解決
初夢の一富士二鷹三茄子の続きが十まであると聞いた。十番目まであれば知りたい。
所蔵する資料から「一富士 二鷹 三茄子 四扇 五煙草 六座頭」までは確認できるが、それ以降については、確認できない。
インターネット上では「九 歌舞伎」までちらほらと見受けられるが、いずれも出典・根拠等は、確認できない。
- 回答
-
初夢で見ると吉夢とされる事物を列挙したことわざ「一富士二鷹三茄子」の続きが10番目まであるか調べました。
『故事俗信ことわざ大辞典』(文献1)によると、3番までは江戸期の俳諧書などに見え、江戸時代に成立した『俚言集覧』(文献2)に収められているとありました。
同じく文献1によると、4番から6番まで(四扇五煙草六座頭)は『俚言集覧』の自筆本では欄外にあり、「四以下を付け加えたものであろう」と推測されています。
4番以下の別バージョン(四葬式五雪隠)についても文献3で「たぶん、物ずきがあとから加えた地口にすぎないであろう」とされています。
7番以降9番まではインターネット上の情報でしか見つからず、そのインターネット上の情報も当方で見つけた最古のものは2005年のものでした(後述)。
10番目以降は書籍、インターネット上、ともに見当たりませんでした。
●文献
1)佐竹秀雄、武田勝昭、伊藤高雄 編; 北村孝一 監修 故事俗信ことわざ大辞典 第2版 小学館 2012【YU7-J3525】pp.92-93
項目「一富士二鷹三茄子」に8点の江戸期俳諧書等の用例と、『俚言集覧』の例が挙げられ「補説」として次の4つの語源説がいくつか出典名とともに挙げられています。
・「駿河の名物」:『笈埃随筆』『俚言集覧』『嬉遊笑覧』
・「駿河の国で高いもの」:『甲子夜話』
・「縁起の良い物」:『続五元集』
・「徳川家康の好物」:出典なし
4番目以降については次の2項目が設定されています。4番目以降については「「俚言集覧」(自筆本)には、欄外に一から六まで挙げた書き込みがあるが、この形が広く使われたわけではなく、後に四以下を付け加えたものであろう。」と項目「一富士二鷹三茄子」にあります。
・一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭
・一富士二鷹三茄子四葬式五雪隠
2)村田了阿 著 俚言集覽 増補 名著刊行会 1978 3冊【KF3-G40】
「一富士二鷹三茄子」(p.168)の項目に「一富士二鷹三茄子四扇五多波姑六座頭」とあります。
3)大島建彦 [ほか] 編. 日本を知る事典. 社会思想社, 1994【GB8-G15】
「初夢」(p.505)に「四そうろう(葬礼)に五せっちん(雪隠、便所)などとつづけていうのは、逆夢とするのだろうが、たぶん、物ずきがあとから加えた地口にすぎないであろう」
以下、探索ポイントを説明します。
●先行するレファレンス事例
山梨県立図書館が2008年に調べていますが、『俚言集覧』を出典とする「四扇五煙草〔多波姑〕六座頭」までのものを示しています。
・“一富士二鷹三茄子”の続きを知りたい。 - 山梨県立図書館
http://www.lib.pref.yamanashi.jp/cgi-bin/refjirei/refs.cgi?c=common&n=10
4番以降の続き部分については『日本を知る事典』(文献3)の記述を紹介しています。
・レファレンス協同データベース https://crd.ndl.go.jp/reference/
「一富士二鷹三茄子」で検索すると4、5件ヒットし、『俚言集覧』の6番までを紹介しています。
●7番以降を「七丁髷、八薔薇、九歌舞伎」とする情報
冊子のことわざ辞典類に7番以下は見当たりませんでした。
検索エンジンのグーグルを使い、インターネット上の情報として比較的古いものに次のものを見つけました。
・一鷹 二富士 三茄子 の続きを、教えてください Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q117121681
「tiebukuro_seisikibanさん 2005/12/28 13:23:01
一富士、二鷹、三茄子、四扇、五煙草、六座頭、七丁髷、八薔薇、九歌舞伎・・・七以降は信じない方がいいよ。」
この2005年の情報以前の用例はないか、「丁髷」、 「薔薇」、 「歌舞伎」の3語を同時に含むテキストはないか、次の検索を試みましたが、見当たりませんでした。
・Googleブックス
・青空文庫
「丁髷」(ちょんまげ)は本多髷のこととされますが、『日本大百科全書(ニッポニカ)』によれば「この俗称は、江戸時代よりも、明治初期以降に行われた表現法」とのことです。
●7番以降を「丁髷」以外で設定するもの
検索式「“一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭七”-丁髷」で検索エンジンを検索しましたが、それらしいものは見当たりませんでした。
●他に参照したもの
・ウィキペディア
・ジャパンナレッジ ※当館契約データベース(館内限定)
・大曲駒村 編著 川柳大辞典 高橋書店 1962 2冊【911.4-O645s-t】
・角川書店 編 図説俳句大歳時記 新年 角川書店 1973【KG346-10】pp.280-282
・森睦彦 編 名数数詞辞典 東京堂出版 1980【UR1-67】
・森睦彦 著 数のつく日本語辞典 東京堂出版 1999【UR1-G69】
・聞蔵Ⅱビジュアル (朝日新聞) ※当館契約データベース(館内限定)
・ヨミダス歴史館 (読売新聞) ※当館契約データベース(館内限定)
・ざっさくプラス ※当館契約データベース(館内限定)
・上原靖「一富士二鷹三茄子―俗語の考察の一例(1)-(3) 」『長野県民俗の会通信』
(126、127、129)pp.5-7、3-5、3-4(1995.3、5、9)【Z8-1432】
・小野清恒「語り伝えて 伝承の呪いの言葉一富士二鷹三茄子」
『新居浜史談』(329)pp.2-4(2003.1)【Z8-B146】
・北垣恭次郎「一富士二鷹三茄子のいはれ」『日本少年』7(3)pp.47-49(1912.3)【YA5-1533】
国立国会図書館デジタルコレクション
・「一冨士二鷹三茄子」『故事俚諺教訓物語 』森脇紫逕 著 (富田文陽堂[ほか], 1912)
【特102-576】pp.15-16 [インターネット公開(裁定)]
・「一冨士二鷹三茄子の由來」『むかしの小松 第1巻 (橋北篇)』小野寺松雪堂 著 (むかしの小松刊行頒布会 1949)【a213-3】pp.223-224 [図書館送信限定]
・「一富士二鷹三茄子」『日本故事物語』池田弥三郎 著(河出書房新社, 1958)【814.4-I243n】pp.251-253 [国立国会図書館内限定]
※【 】内は当館請求記号です。
※上記で参照したウェブサイトでURLの記載のないものは次のリンク集にあります。
・人文リンク集(国立国会図書館)http://rnavi.ndl.go.jp/humanities/jinbunlinks.php
※ウェブサイトの最終アクセス日は2017年1月17日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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●“一富士二鷹三茄子”についての記載あり
1.『故事・俗信 ことわざ大辞典』尚学図書 編 小学館 1982年
2.『日本民俗大辞典』下 福田アジオ 編 吉川弘文館 2000年 4-642-01333-4
3.『これで充分ことわざ辞典』 三谷邦明 監修 日本文芸社 1999年
4-537-07107-9
4.『故事・ことわざ辞典』新星出版社編集部 編 新星出版社 1984年
5.『名数絵解き事典』増補改訂版 南清彦 著 叢文社 2001年 4-7947-0379-1
6.『民俗の事典』大間知篤三〔ほか〕編 岩崎美術社 1988年
7.『忘れないで季節のしきたり日本の心』鮫島純子 絵・文 小学館 2003年
4-09-681333-8
8.『世界大百科事典』22 改訂新版 平凡社 2007年 4-582-03400-4
●“一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭”についての記載あり
1.『日本大百科全書』2 秋庭隆 編 小学館 1995年 4-09-526102-1
2.『日本の知恵を知る故事ことわざ』谷沢永一 監修 講談社 1999年 4-06-268550-7
3.『開運!えんぎ読本』神崎宣武 編著 チクマ秀版社 2000年 4-8050-0375-8
4.『知っているとうれしいにほんの縁起もの』広田千悦子 著 2008年 4-19-862538-2
●上記資料についての記載あり
1.『山家集・金槐和歌集』日本古典文學大系29 岩波書店 1961年
●着物の柄にも吉祥柄として、“一富士二鷹三茄子”“鴛鴦”があるが、関連はないか。
1.『原色染織大辞典』淡交社 1977年
“いちふじにたかさんなすびもん”“おしどりもん”についてそれぞれ記載あり。
ただ、初夢の順番との関連等については記載なく不明。
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000218897