レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014/12/17
- 登録日時
- 2015/09/04 11:37
- 更新日時
- 2015/11/16 14:59
- 管理番号
- 埼久-2015-052
- 質問
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解決
玄米について以下のことが知りたい。
1:玄米食は、炊く前に煎る、十分に水に浸し発芽モードにするかのどちらかの処置をとらなければ危険なのか。
2:玄米に含まれる発芽抑制因子(アブシジン酸)は、ミトコンドリアを破壊するのか。
3:玄米を水で洗ってしっかり水を切り、容器に入れて24-48時間冷蔵庫に入れておけば、発芽モードになるのか。
4:圧力鍋で炊くと栄養素が破壊され、玄米の価値を損ねるのか。
- 回答
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回答プロセス以下の資料を紹介した。
1冊に比較的多くの情報がまとめて解説されている資料としては「発芽玄米のすべて」(大海淳著 総合労働研究所 2001 県内公共図蔵)がある。
玄米の栄養成分、発芽玄米の発芽法、調理法などが解説されている。
- 回答プロセス
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1:玄米食は、炊く前に煎る、十分に水に浸し発芽モードにするかのどちらかの処置をとらなければ危険であるのか。
「発芽玄米のすべて」(回答資料)
p133で「発芽していない普通の玄米食において、しばしばカルシウムの代謝障害が見られるのはこのフィチン酸による右のようなはたらきに原因があるのです。」と発芽していない玄米が含むフィチン酸が無機質の吸収を妨げる作用をすることを指摘している。
『現代農業 88(12)』(農山漁村文化協会 2009)
p66「玄米を炊くときは長く水に浸ける」
発芽が始まった玄米中では、生活習慣病予防に効果があるといわれるギャバやアミノ酸、糖などが増える、との記述はあるが、危険だからとは書いていない。
《国会図サーチ》を〈玄米 & 炊き方〉で検索する。
《レファ協DB》の「玄米の炊き方について書いてある本を教えてほしい。」がヒットする。(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000021629 国会図 2014/12/24最終確認)
参考資料を調査する。
『あたりまえおばさんの玄米クッキング』(小幡玻矢子著 亜紀書房 1983)
『台所は薬局食物は薬 暮しの中の玄米・自然食健康法』(内海正彦著 白揚社 1982)
『ESSE = エッセ 2002年7月』(フジテレビジョン 2002)
いずれも水に浸すことを勧めているが発芽モードに関する記述なし。
2:玄米に含まれる発芽抑制因子(アブシジン酸)は、ミトコンドリアを破壊するのか。
質問の出典を確認する。
《20代の大腸がん闘病記、幸せを考える》(個人サイト 2014/12/18最終確認)
「この発芽抑制因子の毒性が結構バカにできなくて、「細胞のエネルギー工場」と言われているミトコンドリアを傷つけるらしいです。」とあり。出典として、「発芽モード玄米調理には天日干しの生きている玄米を カタログ2011年5月4週号」が挙げられている。
《安全な食べものネットワーク》(http://alter.gr.jp/Preview2.aspx?id=7861&cls オルター 2014/12/18最終確認)
「玄米に含まれる発芽抑制因子アブシジン酸(ABA)が人間のエネルギー代謝を司る重要な細胞小器官ミトコンドリアに対する毒であり、それが失活しないままの玄米を摂ることは、人体に有害であるからです。」とあり。
根拠として、元・東京大学医学部口腔外科教室講師、西原克成医博の警告「ABA(アブシジン酸)はミトコンドリア毒なので、玄米食には注意が必要である」、アメリカ合衆国国立科学研究所会報に発表された論文「人体に対しABAの作用で、ヒト顆粒球(白血球の一種)で食作用が活発化し、活性酸素や一酸化窒素が多量に産生され、生体細胞内のミトコンドリアが損傷され、諸疾患の原因になる」の2つが挙げられている。
《玄米よりも発芽玄米のほうが安全な理由》(個人サイト 2014/12/18最終確認)
「アメリカ合衆国国立科学研究所会報に発表された論文「アブシジン酸はサイクリックADP(アデノシンニリン酸)リボースを二次メッセンジャーとするヒト顆粒球における内因性サイトカインである」(PNAS2007;104:5759-5764)によれば、【人体に対しABAの作用で、ヒト顆粒球(白血球の一種)で食作用が活発化し、活性酸素や一酸化窒素が多量に産生され、生体細胞内のミトコンドリアが損傷され、その結果、諸疾患の原因になる】ということです。」
元の論文は「Abscisic acid is an endogenous cytokine in human granulocytes with cyclic ADP-ribose as second messenger」(http://www.pnas.org/content/104/14/5759.short 2014/12/21最終確認)と思われる。
否定する見解
《食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会 第82回会合議事録》
p19、29にアブシジン酸は人体に影響なしという記述あり。ただ、再調査が必要というようなことも書かれている。(EPA:米国環境保護庁)(http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20100623id1 食品安全委員会 2014/12/21最終確認)
《食品安全関係情報 米国環境保護庁(EPA)、植物調節剤、S-アブシジン酸の残留基準値設定免除に関する規則改定》
概要を見ると、「米国環境保護庁(EPA)は3月12日、植物調節剤、S-アブシジン酸(ABA)の残留基準値設定免除を暫定的免除から恒久的免除に変更し、公表した。EPAが評価を行った結果、当該農薬への全体的な暴露によって、幼児や子供を含めた消費者に危害が生じる可能性はないという結論に至ったため(後略)」とのこと。(http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03090380108 食品安全委員会 2014/12/24最終確認)
3:玄米を水で洗ってしっかり水を切り、容器に入れて24-48時間冷蔵庫に入れておけば、発芽モードになるのか。
「発芽玄米のすべて」(回答資料)
p139に「玄米は、27~30度の水に浸漬すると、24~28時間で発芽します」とあり。
『現代農業 88(12)』(農山漁村文化協会 2009)
p67「玄米を炊くときは長く水に浸ける」果皮を除いた場合だが、水温によるが最短30分程度で発芽玄米に変身、とあり。
p69石野太生輔「もっちり玄米ご飯の炊き方」4時間吸水で「半吸水」状態。この状態で炊くと弾力のあるご飯が炊け、8時間くらい吸水させると少し柔らかめに炊ける。「もっと長く浸けて「発芽玄米」にしてもいい(自然に発芽が始まる)。」とあり。
4:圧力鍋で炊くと栄養素が破壊され、玄米の価値を損ねるのか。
「発芽玄米のすべて」(回答資料)
p116「たとえば、圧力釜を使って炊いた玄米ではビタミンB1の60%が失われたり、ただでさえ少ないカルシウムの排出量が増加したりして」とあり。
『現代農業 88(12)』(農山漁村文化協会 2009)
p70-71の炊飯では圧力鍋を用いている。栄養素については記載なし。
『マクロビオティック料理 玄米食養家庭料理800種』(桜沢里真著 日本CI協会 1981)
p27-28に玄米の炊き方について解説あり。圧力鍋を使用する方法と普通の釜で炊く方法があるが、栄養素の違いについては記述なし。
『あたりまえおばさんの玄米クッキング』
p15-22「おいしい玄米の炊き方」に「圧力鍋でも、厚手の鍋でもよい」とあり、栄養素については記述なし。
『台所は薬局食物は薬 暮しの中の玄米・自然食健康法』(内海正彦著 白揚社 1982)
p161-163に玄米の炊き方について記載あり。圧力釜を使ったほうがおいしく炊ける旨記述あるが、栄養素については触れていない。
『ESSE = エッセ 2002年7月』(フジテレビジョン 2002)
p41に料理研究科の枝元なほみが紹介する玄米の炊き方あり。「イチ押しは圧力鍋」とあるが栄養価についての記述なし。
その他調査済み資料
『玄米黒酢農法』(池田武、吉田陽介著 農山漁村文化協会 2004)
『ミヨビ農法 天然型アブシジン酸を使いこなす』 (禿泰雄著 農山漁村文化協会 2011)
『マクロビオティックの考え方 陰陽の研究』(三木利夫著 正食出版 1988)
『ときどきベジタリアン食のすすめ ビーガン,マクロビオティックから統合栄養学まで』(蒲原聖可著 日本評論社 2011)
『発芽生物学 種子発芽の生理・生態・分子機構』(種生物学会編 吉岡俊人責任編集 文一総合出版 2009)
『米の事典 稲作からゲノムまで』(石谷孝佑編 幸書房 2009)
- 事前調査事項
- NDC
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- 食品.料理 (596 9版)
- 作物栽培.作物学 (615 9版)
- 参考資料
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- 「発芽玄米のすべて」(大海淳著 総合労働研究所 2001)
- キーワード
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- 玄米食
- 食品安全
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000179393