レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20141225
- 登録日時
- 2015/08/21 00:30
- 更新日時
- 2015/08/21 00:30
- 管理番号
- 福参-993
- 質問
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解決
国産で電線がつくられるようになったのはいつごろか。また、最初につくった人物(もしくは会社)を知りたい。
- 回答
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参考資料1-5.および参考URL1-2.より回答。
■参考資料1.『電線史』社団法人日本電線工業会(非売品)1959
第一章 黎明時代(p1)より
「安政元年、電信機が渡来して、そこからは諸所に、国民の目の前に、長い架空電線がえんえんと張り廻らされたのである。(中略)佐久間象山は嘉永2(1849)には電信線を作り、その時使用した絹巻線は彼が作ったのであった。」とあり。さらに、「明治に入って、山田与七、吉崎牙太郎(後に沖と改名)、三吉正一等は護謨線、漆塗線、絹巻線等の製造をすでに研究していたと思われる。」とある。
■参考URL1.PDFファイル「郵政資料館所蔵資料概要 - 郵政博物館」(p107,112)
www.postalmuseum.jp/publication/research/docs/research_01_09.pdf(最終確認日2015.3.1)
佐久間象山の作った電線(絹巻線)は、「本邦最初の電信機と絹巻線製造(p4に詳細)」として、今も郵政資料博物館(前 遁信博物館)に「佐久間象山関係電気資料」として所蔵される。
また、佐久間象山以降の、国産電線を製造した会社としてしては、古川電気工業株式会社の前身のひとつである、山田与七の「山田電線製造所」がある。参考URL2.「電線製造黎明期の専門メーカー 山田電線製造所」と参考資料1.『電線史』に、山田電線製造所の歴史については以下の通り記述がある。
■参考URL2.PDFファイル「電線製造黎明期の専門メーカー 山田電線製造所」(p1-2)
http://www.kandenkyo.jp/pdf/yukari%20vol.13.pdf(最終確認日2015.3.1)
山田電線製造所は、わが国の電線製造の黎明期における専門メーカーとして電線業界の発展に大きく貢献しました。(中略)明治17年(1884)、発明家の山田与七により、横浜市高島町9丁目19番地に設けられました。
■参考資料2.『創業100年史』編集・制作:日本経営史研究所(古河鉱業)1976
「横濱電線製造株式会社への参加」(p243)には、以下のようにある。
横濱電線の前身は明治10年代に設立された個人経営の山田電線製造所で、明治16年に本邦最初の被覆線を製造、翌17年に横浜市高島町へ工場を新設移転し(中略)明治32年になってゴム被覆線製造技術を確立、電燈・電鉄各社の注文を受けて発展した。
■参考資料3.『日本の創業者』日外アソシエーツ(p367)によると、「当時、電信局の引込線や室内機械取付用に大量の輸入ゴム線が使用されていた。これを国産の漆で代用できないかと考え、専門家の意見を聞き研究に没頭、ついにゴム線の試作に成功した」とある。
ちなみに、「電線」ではじめて特許をとったのも山田与七で、参考資料4.『発明特許の日本史』(p208-209)によれば、明治25年の同年に「被覆電線」でふたつの特許を取得している(第1682・1953号)。
■参考資料5.『日本電気事業史』日本電気事業史編纂会編(電気之友社)1941
四-五-六「電線及びケーブル」(p190-191)には、いわゆる国産電線黎明期周辺の電線(及びケーブル)について、以下のようにその種類に分けて記述してあり参考になる。
・鐡線
・銅線
・被膜線
・ゴム線
・ケーブル
・海底線
■回答まとめ
日本で電線(電信線)をはじめてつくった人物として個人や藩単位で考えると、現存する資料では江戸時代の佐久間象山がその嚆矢ともいえるが、輸入に頼らない日本の電線国産化(や電信)の普及に携わるレベルで考えれば、「明治に入って、山田与七、吉崎牙太郎(後に沖と改名し沖牙太郎となる)、三吉正一等」が製造した「護謨線、漆塗線、絹巻線等」等がその後の国産化また海外への逆輸入など、日本の電気事業に大きく貢献した人物としてあげられるようだ(参考資料1.参照)。
- 回答プロセス
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質問の「電線」は、電信機利用のための電線を意味する。また、利用者が求める回答は、個人的な発明という単位よりは企業や事業レベルでの電線製造だと調査していくうちにわかったため、回答資料もその求めにあわせて準備した。
基礎的な事典(※1)類やインターネット検索からもキーワードや人物をひろって、上記の回答資料を提供。閲覧され、一部複写もされた。
※1)『日本大百科全書』16(小学館)1987
「電信」(p361)
日本でも、外国から電信機が渡来する前の一八四九年(嘉永二)、佐久間象山が電信機をつくって実験している。
その他、『明治もののはじまり事典』湯本 豪一(柏書房)2005 ほか具体的な記述はなし。
- 事前調査事項
- NDC
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- 電気回路.計測.材料 (541 8版)
- 参考資料
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- 1 電線史 日本電線工業会 1959 541/62/2
- 2 創業100年史 編集・制作:日本経営史研究所 古河鉱業 1976 560/921/S13
- 3 日本の創業者 日外アソシエーツ株式会社/編集 日外アソシエーツ 2010.3 335/13R/348
- 4 発明特許の日本史 石原 藤夫/著 栄光出版社 2008.4 507/1/94
- 5 日本電気事業史 日本電気事業史編纂会/編 電気之友社 1941 540/921/S22
- 1 郵政資料館所蔵資料概要 - 郵政博物館 www.postalmuseum.jp/publication/research/docs/research_01_09.pdf 2015.3.1最終確認
- 2 「山田電線製造所 」- 社団法人日本電気協会 関東支部 www.kandenkyo.jp/pdf/yukari%20vol.13.pdf 2015.3.1最終確認
- キーワード
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- 電線 発明 国産 絹巻線 被覆線 ゴム線 明治時代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000178717