レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年12月05日
- 登録日時
- 2015/01/06 12:22
- 更新日時
- 2015/03/31 11:24
- 管理番号
- 名古屋市鶴-2014-046
- 質問
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解決
愛知県では、「放課」というと「学校の授業が全て終わった後」のことではなく、「授業と授業の間の休憩時間」という意味で使われている。いつ頃から使われているのか知りたい。
- 回答
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愛知県においては、明治6年頃からは確実に使われていたと言えそうです。
『名古屋教育史Ⅰ』によりますと、もともと全国的にも「放課」は休み時間の意味で用いられていた語でしたが、明治6年に刊行された『小学教師必携』により、「放課」が「授業と授業との間の休み時間」として広まったと考えられるそうです。ただし、他の地方ではこの意味では次第に用いられなくなり、現在では名古屋語として紹介されるようになったようです。
また、明治6年3月に愛知県義校規則が制定されており、学則第17章に「毎日午前十時ヨリ同十一時マテ午後十二時ヨリ同一時迄ノ両度ヲ放課トス」とあります。
- 回答プロセス
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1.学校で使用される言葉ということから、郷土コーナーの教育関係の棚を確認しました。
『名古屋教育史Ⅰ 近代教育の成立と展開<明治期~大正中期>』
→p.69-70に「「放課」の誕生」とあり、放課の意味が、今日の名古屋に住む人にとっては「授業と授業との間の休み時間」を意味するものであるが、初めから「名古屋語」だったわけではないとあります。典拠として、明治6年に刊行され、「日本に一斉教授法を紹介した書籍として知られる」『小学教師必携』が挙げられており、その中で「放課」が休み時間として示されているとありました。また、既に明治3年の飫肥藩の藩校居寮規則において、休み時間の意味で「放課」が用いられている例が示されています。
→p.47-49に明治6年3月に制定された愛知県義校規則が掲載されており、学則第17章に「毎日午前十時ヨリ同十一時マテ午後十二時ヨリ同一時迄ノ両度ヲ放課トス」とあります。
『愛知県教育史 第3巻』
→p.338に「各授業時限の間に、明治七年の教則では五分、九年の教則では一0分の「体操」時間をおくこととしたが、十五年の教則ではこれを「放課」の時間とした」とあります。また、明治15年の教則には「放課時間についても、「初等科第六級ハ毎時二三十分第五級ハ弐十分其他ハ都テ十分ノ放課ヲ与フ」と規定しているとあります。
→p.248-257に明治7年1月に布達された愛知県小学校規則が掲載されており、第二則に放課の文字はありますが5分との記述はなく、第五十九則までしかありません。
→p.208-212に明治6年3月の愛知県義校規則が掲載されています。
『愛知県教育史 資料編近代1』
→p.68-72に明治6年3月の愛知県義校規則が掲載されています。
→p.323-335に明治7年1月の愛知県小学校規則が掲載されています。p.332の愛知県小学校教科等級表に「毎日十二時放課諸科温習運動等勝手タルヘシ体操九時一時ノ外毎時五分マデトス」とありました。
→p.369-378に明治9年9月の上下等小学規則が掲載されています。p.377の凡例に「一 毎時十分間之体操時間有ト雖モ今一ニ是ヲ載セサルハ其煩ヲ省クナリ」とありました。
→p.389-403に明治15年6月の愛知県小学校教則が掲載されています。
『愛知県史 資料編34教育』
→p.7-13に明治6年3月の愛知県義校規則が掲載されています。
→p.71-85に明治6年12月(条文の最後には明治7年1月とあり)の愛知県小学規則が掲載されています。
→p.95-103に明治15年6月12日の愛知県小学校教則が掲載されています。
2.『名古屋教育史Ⅰ』で紹介されていた資料を確認しました。
郷土コーナーの言語の棚で確認したものは以下の1点です。
『笑説 大名古屋語辞典』
→p.197-198に「放課」の項目がありました。「放課」という言葉の「使われ方、意味は立派な名古屋語である」と書かれています。
国立国会図書館デジタルコレクションで確認したものは以下の2点です。
『小学教師必携』
→12コマ目に放課についての一つ書きが3つありました(『名古屋教育史Ⅰ』では1つ目と3つ目が例として紹介されています)。内容は「放課」イコール「授業と授業との間の休み時間」と明記されているわけではなく、文脈から「授業と授業との間の休み時間」と読み取れるものでした。
『日本教育史資料3諸藩の部』
→131-134コマ(p.244-251)に舊飫肥藩の記述があります。『名古屋教育史Ⅰ』に引用されていた内容は133コマ目p.249の居寮規則にありました。
3.新聞データベースを検索しました。
朝日新聞データベース「聞蔵Ⅱ」を検索したところ、以下の記事などがヒットしました。
「1999年5月15日朝刊:放課(ことばのQ&A NIE)/名古屋・共通」
「1999年10月25日朝刊34面:あなたの共通語、実は方言 広大教授が「言語地図」作成【大阪】」
「2010年12月18日朝刊33面:(つぶやき@ナゴヤ考なう)常識と思ってたら…【名古屋】」
3つの記事とも「放課」について書かれたものですが、いつから使われ始めたかについて言及して書かれた記事は見つかりませんでした。
- 事前調査事項
- NDC
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- 教育史.事情 (372 9版)
- 方言.訛語 (818 9版)
- 参考資料
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- 『名古屋教育史Ⅰ 近代教育の成立と展開<明治期~大正中期>』、名古屋教育史編集委員会/編、名古屋教育史編集委員会、2013年 (p.69-70、p.47-49)
- 『愛知県教育史 第3巻』、愛知県教育委員会/編、第一法規出版、1982年 (p.338、p.248-257、p.208-212)
- 『愛知県教育史 資料編近代1』、愛知県教育委員会/編、愛知県教育委員会、1989年 (p.68-72、p.323-335、p.369-378、p.389-403)
- 『愛知県史 資料編34教育』、愛知県史編さん委員会/編、愛知県、2004年 (p.7-13、p.71-85、p.95-103)
- 『笑説 大名古屋語辞典 改定決定版』、清水義範/著、角川書店、1998年 (p.197-198)
- 『小学教師必携』、国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/809777)インターネット公開資料【最終確認2015/01/09】 (12コマ目)
- 『日本教育史資料3諸藩の部』、国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/809556)インターネット公開資料【最終確認2015/01/09】 (133コマ目)
- 朝日新聞「1999年5月15日朝刊:放課(ことばのQ&A NIE)/名古屋・共通」、「1999年10月25日朝刊34面:あなたの共通語、実は方言 広大教授が「言語地図」作成【大阪】」、「2010年12月18日朝刊33面:(つぶやき@ナゴヤ考なう)常識と思ってたら…【名古屋】」
- キーワード
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- 放課
- 休み時間
- 学校
- 名古屋弁
- 名古屋ことば
- 方言
- 教育―名古屋市
- 言葉―名古屋市
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000165702