レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2010/09/29 12:39
- 更新日時
- 2016/07/20 10:43
- 管理番号
- 新門司分館10 新郷、宮﨑
- 質問
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山口素堂の句「目に青葉山ほととぎす初鰹」と「目には青葉山ほととぎす初鰹」とはどちらが正しいのですか。
- 回答
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正しくは、「目には青葉山ほととぎす初鰹」です。
山口素堂(1642(寛永19)年~1716(享保元)年)は、江戸時代の俳人です。松尾芭蕉とは同門で、親交があり、蕉風の確立に寄与したといわれています。
この句の「青葉・ほととぎす・初鰹」はいずれも夏の季語です。最初に「目には」とだけいってあとの「耳には」、「口には」を省略し、初夏を代表する風物三つを調子よくよみこんだのが機知にあふれて快く、大いに人気を得ました。川柳にもこの句がよく取り上げられているそうです。
この句には「かまくらにて(又は鎌倉一見の頃)」という前書がありますが、これは徒然草第百十九段の「鎌倉の海に鰹と云ふ魚は・・・・」をふまえたものということです。
青葉やほととぎすは、和歌では、古来夏の詠題としてよくうたわれています。西行は「ほととぎすきくをりにこそ夏山の青葉は花におとらざりけり」と詠んでいます。素堂の句は、この二つに初鰹を加えたところが俳諧であると評されています。
- 回答プロセス
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○自館にある俳句の本を探す→
『角川俳句大歳時記 夏』 季語~初鰹~の例句として・・・目には青葉山郭公(ほととぎす)初鰹 素堂(江戸新道)・・・とあり。
『一億人の季語入門』 第一章・・・目には青葉山ほととぎすはつ松魚 素堂・・・とあり。
○tooliキーワード検索“山口素堂”→市内で所蔵のあった本を取り寄せ。
『江戸期の俳人たち』 素堂の初鰹・・・目には青葉山ほととぎす初鰹・・・とあり。
「目には青葉」としている解釈の記載あり
・・・しかし、その謎解きを素堂が『とくとくの句合』の中で、こんな風にしています。「目には青葉といひて、耳には郭公、口には鰹と、おのづから聞ゆるにや」としている点です。「目には青葉」と、字余りのゆったりした呼吸の中に、読者は初夏の青葉の景を思い描きます。ややおいて「山ほととぎす初鰹」とテンポよくたたみかけられることによって、読者は自らの耳や口の五感が刺激されて、初夏の候を体全体に感じるようになります。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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『角川俳句大歳時記 夏』 角川学芸出版編 角川学芸出版 2006年
(442頁) - 『一億人の季語入門』 長谷川櫂著 角川学芸出版 2008年 <911.3/ハ> (16頁)
- 『江戸期の俳人たち』 榎本好宏著 飯塚書店 2008年 <911.3/エ> (10~14頁)
- 『俳諧名作集』(評釈江戸文学叢書) 頴原退蔵著 大日本雄弁会講談社 1935年 <918.5/ヒ/7> (93・94頁)
- 『日本名句集成』 飯田龍太他編 学燈社 1991年 <R911.3/ニ> (136頁)
- 『和歌・俳諧史人名事典』 日外アソシエーツ編 日外アソシエーツ 2003年 <R911/ニ> (255頁・256頁)
- 『山家集』(日本古典全書) 伊藤嘉夫校註・朝日新聞社編 朝日新聞社 1947年 <918/ニ> (52頁)
- 『方丈記 徒然草』(日本古典文学大系30) 西尾實校註 岩波書店 1957年 <918/ニ/30> (186頁)
- 『鑑賞俳句歳時記 夏』 山本健吉編 文芸春秋 1997年 <911.3/ヤ> (27頁・32頁・123頁)
- 『大辞林 第三版』 松村明・三省堂編修所編 三省堂 2006年 <R813.1/マ> (1930頁)
- 『俳諧大辞典』伊地知鉄男ほか編 明治書院 1957年 【R911.3/ハ】(421頁,422頁)
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『角川俳句大歳時記 夏』 角川学芸出版編 角川学芸出版 2006年
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000071842