レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年04月30日
- 登録日時
- 2010/04/30 10:11
- 更新日時
- 2010/06/22 13:33
- 管理番号
- 相橋-H22-009
- 質問
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未解決
ドイツの詩人、ツェーザル・フライシュレンの「心に太陽を持て」には山本有三の訳があるが、原文を強調した訳になっているようだ。原文に近い表現の訳が載っているものはないか。〔『心に太陽を持て』山本有三/著、新潮社 1989(自館請求記号:B914.6)を持って来られた。〕
- 回答
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最初の調査では山本有三以外の訳詩は見つからなかったが、追加調査によって高橋健二の訳が見つかり、また山本有三の訳で1935年(初)版と1989年版で訳し方が違うことがわかった。
- 回答プロセス
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自館OPACでキーワード“ツェーザル フライシュレン”を検索するが見つからない。
自館OPACでキーワード“心に太陽を”を検索。
『心に太陽を唇に歌を』藤原正彦/著、世界文化社 2007(自館請求記号:J916ふじわ)
P.46に質問に該当する山本有三が訳した詩が載っていた。
山本有三以外で訳した人がいないか、また別の訳があるのか調べる。
インターネット検索エンジンGoogleでキーワード“ドイツ 詩人 心に太陽を持て”を検索。
次のサイトが見つかった。
「栃木県立図書館レファレンス事例」
http://www.lib.pref.tochigi.jp/reference_ex/allr/tr137.htm (2010年4月30日現在)
「こころに太陽を・・・、くちびるに歌を・・・」の詩は山本有三の作だったと思うがその全文が知りたい。」
という質問で、回答は「『新潮日本文学アルバム 33 山本有三』(永野賢/編 新潮社 1986)
この本の巻末に「心に太陽を」(阪田寛夫/著 p97~103)というエッセイがあり(後略)」とあり。
回答に記されている資料を確認するため、自館OPACに書名“新潮日本文学アルバム 山本有三”を入れ検索。
『新潮日本文学アルバム 33』新潮社 1991(自館請求記号:910.2)
内容を確認したが、他の訳やフライシュレンについての詳細は記載なし。
同様に“ドイツ 詩集”を検索すると、次の資料が見つかった。
『口誦ドイツ詩集』山口四郎/訳、鳥影社・ロゴス企画部 2000(自館請求記号:941.6)
『ドイツ詩集 新装版』神保光太郎/編、白凰社 1996(自館請求記号:941)
『ドイツ名詩選』生野幸吉、桧山哲彦/編、岩波書店 1993(自館請求記号:B941)
『ドイツ詩集 新装』片山敏彦/著、みすず書房 1985(相模原市立大野図書館請求記号:941)
上記4点にもツェーザル・フライシュレンについての記述は見つからない。
質問者が最初に持って来た本〔『心に太陽を持て』山本有三/著、新潮社 1989(自館請求記号:B914.6)〕
の解説(高橋健二)P.235を要約すると、高橋氏は1931年(昭和6年)から1年半ドイツに留学をした際この詩と出会い、昭和10年1月から日本放送協会のラジオ独逸語講座を担当したときに、真っ先にこの詩をテキストに取り上げたとある。
『心に太陽を持て』の初版が昭和10年11月なのでテキストには山本有三訳以外のものが載っているかもしれない。
ここで質問者が指定した期限がきたので、これまでの調査結果を伝えた。
(追加調査2010年5月6日)
質問者が持ってきた①『心に太陽を持て』山本有三/著、新潮社 1989(自館請求記号:B914.6)を再度確認した。
①のP.6~7に「心に太陽を持て」の訳詩が載っている。
この訳と、②『新潮に本文学アルバム 33』新潮社1991(自館請求記号:910.2)
P.99~103(昭和10年新潮社からの初版本)とを比較すると、同じ山本有三の訳でも訳し方が違うことがわかった。
冒頭部分を比べると、
Ⅰ【1989年版】①P.6より引用。
心に太陽を持て。
あらしが ふこうと、
ふぶきが こようと、
天には黒くも、
地には争いが絶えなかろうと、
いつも、心に太陽を持て。
Ⅱ【1935年初版】②P.99より引用。
心に太陽を持て
嵐が吹かうが、雪が降らうが
天には雲、地には争ひが絶えなからうが!
心に太陽を持てさうすりや何が来ようと平気ぢやないか!
どんな暗い日だつて
それが明るくしてくれる!
以上のように、同じ山本有三訳でも1989年版と初版では訳し方が違うことがわかった。
質問では山本有三以外の訳という限定ではなく、原文に近い表現のものということなので
初版本の訳が載っている②を紹介することで一つの回答とする。
また、翻訳ということで翻訳図書の目録から調べてみる。
直接棚を見て『翻訳図書目録 92/96 3』日外アソシエーツ/編、日外アソシエーツ 1997(自館請求記号:R027)
P.804に『はじめてであう世界の名詩3』という資料に「心に太陽を持て」が載っているという記述あり。
自館に所蔵があるかOPACで上記書名を検索。自館にあったので内容を確認した。
③『はじめてである世界の名詩 3』桜井信夫/編著、あすなろ書房 1994(自館請求記号:J911)
P.8に高橋健二の訳を見つけた。
冒頭部分を引用して比較してみる。
Ⅲ【高橋健二/訳】③P.8より引用。
心に太陽を持て、
あらしが吹こうが、雪が降ろうが、
空は雲に閉ざされ、
地上は争いに満たされようが!
心に太陽を持て、
そうすれば、なんでも来るがよい!
どんなに暗い日でも、
あふれる光で明るく照らされる!
P.11に「・・・ドイツの家庭で広く愛誦され、日本でも昭和十年(一九三五)に初訳されて以来、忘れられることがない。
ちなみに初訳は、実際には高橋健二訳を山本有三訳とし、最後の一行も『そうすりゃ、なんだってふっとんでしまう』
と改変されていたという経緯がある。・・・」という記述がある
さらにインターネット検索エンジンGoogleにて“高橋健二 フライシュレン”でキーワード検索すると次の2つのサイトが見つかった。
「世界の合唱楽譜通販のパナムジカ」http://www.panamusica.co.jp/ja/new/2007/01/#pagetop(2010年5月12日現在)
→作曲者は信長 貴富(のぶなが たかとみ)作詩/訳詞者:C.フライシュレン/信長貴富 出版社:音楽之友社
男声合唱とピアノのための「くちびるに歌を」という楽譜が2007年1月に新刊として出版されている。
「ジョバンニ・レコード」http://www.kamome.ne.jp/gvcs/10901.html(2010年5月12日現在)
→「くちびるに歌を」ツェーザー・フライシュレン/詩 信長貴冨/訳となっている混声合唱曲のCDがあった。
インターネット検索エンジンGoogleで“心に太陽を持て”のみで検索すると、次のサイトが見つかった。
「終戦前後2年間の新聞切り抜き帳」→「気ままな放談」→「読書から」の中にある「心に太陽を持て」
http://www.asahi-net.or.jp/~uu3s-situ/00/Kokoro.html(2010年5月23日現在)
上記サイトに掲載されているものは①、②と同じだった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩 (941 9版)
- 参考資料
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- 『口誦ドイツ詩集』山口四郎/訳、鳥影社・ロゴス企画部 2000 (自館請求記号:941.6)
- 『ドイツ詩集 新装版』神保光太郎/編、白凰社 1996 (自館請求記号:941)
- 『心に太陽を唇に歌を』藤原正彦/著、世界文化社 2007 (自館請求記号:J916ふじわ)
- 『新潮日本文学アルバム 33』新潮社 1991 (自館請求記号:910.2)
- 『ドイツ名詩選』生野幸吉、桧山哲彦/編、岩波書店 1993 (自館請求記号:B941)
- 『ドイツ詩集 新装』片山敏彦/著、みすず書房 1985 (相模原市立大野図書館請求記号:941)
- 『心に太陽を持て』山本有三/著、新潮社 1989 (自館請求記号:B914.6)
- キーワード
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- 心に太陽を持て
- 山本有三
- フライシュレン,ツェーザル
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000066392