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レファレンス協同データベース

レファレンス事例詳細

事例作成日
2024年05月28日
登録日時
2024/07/04 17:52
更新日時
2025/03/05 15:31
提供館
埼玉県立久喜図書館 (2110009)
管理番号
埼久-2024-017
質問

解決

「はやい」という言葉は「速い」「早い」と意味に応じて漢字の書き分けができるが、「おそい」はslowとlateの違いを漢字で書き分けができないのはなぜか知りたい。
回答
下記の資料を紹介した。

『文字表記と日本語教育』(武部良明著 凡人社 1991)
 p402-427「3. 漢字制限と書き換え・言い換え」
  p414「(前略)このような異字同訓の制限が、後になって、行き過ぎだと考えられるに至った。そこで、当用漢字音訓表の改定に当たっては、「漢字の使い分けのできるもの」や「漢字で書く習慣の強いもの」が、積極的に取り上げられた。(中略)ただし、その場合も、「抱・いだく」「遅・おそい」が採用されながら、「懐・いだく」「晩・おそい」は採用されなかった。それは、「懐く→抱く」「晩い→遅い」でよい、と考えられたからである。」とあり。

『言葉に関する問答集 8』(文化庁 1982)
 p55-87「第二部 適切な表記の仕方」内、p65-73「三 和語の書き表し方」
  p65「(前略)漢字の字訓を用いて書き表す語の場合も、同じ字訓の漢字がいろいろあり、その書き分けが問題になる。しかし、同訓の漢字についても、書き分けるだけでなく、統合や書き換えが行われている。」とあり。
  p67-68「2 同訓の漢字の統合」の項に異字同訓漢字の統合について、例を挙げて説明している箇所あり。
  p67「(前略)「常用漢字表」を目安として漢字の字訓を用いる場合、次のような統合も必要になるのである。」とし、p68に例として「おそい 巧遅(巧みで遅い)・晩春(晩い春)→遅い春」とあり。
  p68-69「3 同訓の漢字による書き換え」の項、
  p69「前節で扱った統合も、一般に書き分けられていたものについては、例えば(中略)「晩い」を(中略)「遅い」に書き換えたと考えてもよいのである。」とあり。
回答プロセス
1 参考図書を調査する。
『研究社新英和大辞典 竹林滋〔ほか〕編』(第6版 研究社 2002)
 p1390「late」の項に「日本語では、時刻・時期が遅いことも、スピードが遅いことも「遅い」の一言で表すが、英語では前者はlate、後者はslowと区別する。」とあり。
『日本語で引ける英語表現使い分け辞典』(牧野高吉編著 東京堂出版 2011)
 p122「遅い late;slow」の項に使い分けのポイントあり。
『常用漢字コアイメージ辞典』(加納喜光著 中央公論新社 2011)
 p913-914「晩」の項に「訓―くれる・おそい」とあり。

2 《Google》(http://www.google.co.jp/ Google)を〈晩い〉で検索する。

3 文化庁の常用漢字表を確認する。
「常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)」(https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/index.html 文化庁)

4 《朝日新聞クロスサーチ》(朝日新聞社)を〈晩い & 漢字〉〈おそい & 常用漢字〉〈おそい & 当用漢字〉で検索する。

5 《Google ブックス》(http://books.google.co.jp/ Google)を〈fast early slow late 漢字〉〈晩い & 遅い & 漢字〉〈早い & 速い & 遅い & 晩い〉で検索する。

6 当用漢字音訓表の改定について調査する。
『国語施策百年史』(文化庁 2005)
 p565-567「五 「異字同訓」の漢字の用法」
  p565「(前略)異字同訓は努めて整理するということを基準の一つとして立てていた。(後略)」
 
7 6より「「異字同訓」の漢字の用法」を確認する。

8  《国立国会図書館サーチ》(https://ndlsearch.ndl.go.jp/ 国立国会図書館)を〈異字同訓〉で検索する。
「特集 異字同訓とは」(『日本語学 33巻10号』明治書院 2014年8月)
 p13「漢字制限は、一九四六年の「当用漢字表」でようやく実現され、一般社会における「日常使用する漢字の範囲」が示された。振り仮名も廃止されて、一九四八年には「当用漢字音訓表」で音と訓の使用に関しても範囲が示された。ただ、その訓の中には、同じ語に複数の漢字が対応する場合もあって、使い分けに一定の指針が求められるようになった。そのために、その「慣用上の使い分けの大体」を示したのが一九七二年の『「異字同訓」の漢字の用法』であった。二〇一〇年の「常用漢字表」改訂に伴って、「異字同訓」の漢字用法例(追加字種・追加音訓関連)が公表され、さらに、この二つを統合し整理したのが『「異字同訓」の漢字の使い分け例』(二〇一四年二月)である。」

9 8より「「異字同訓」の漢字の使い分け例」を確認する。

10 《国立国会図書館デジタルコレクション》(https://dl.ndl.go.jp/ 国立国会図書館)を〈晩い & 遅い & 書き分け〉(NDC分類:8類)で検索する。 

ウェブサイト・データベースの最終アクセス日は2024年5月28日。
事前調査事項
インターネットを調べたところ、常用漢字を決める際にlateとして使っていた「晩」という漢字に「おそ(い)」の訓読みを認めなかったという説が見つかった。出典は示されていなかった。
NDC
  • 日本語 (810 9版)
  • 音声.音韻.文字 (811 9版)
参考資料
  • 『文字表記と日本語教育』(武部良明著 凡人社 1991) ,  ISBN 4-89358-114-7
  • 『言葉に関する問答集 8』(文化庁 1982)
キーワード
  • 当用漢字音訓表
  • 異字同訓
照会先
寄与者
備考
調査種別
事実調査
内容種別
言葉
質問者区分
個人
登録番号
1000352240
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000352240 コピーしました。
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