レファレンス事例詳細

(1)当該図録を確認。
→ p.43に「富士北麓への吟行」の表があり、旅行した年月日、滞在先、初出雑誌、歌の数、収録歌集が表になっている。

(2)初出雑誌の所蔵状況及び内容を確認。
→ 「明星」4(3)1923.9 所蔵あり。p.10-16「山影湖光その一」と題して100首収録。収録歌集『瑠璃光』も所蔵あり。（92首）
「冬柏」3(11)1932.10 所蔵なし。図録の表によると、歌集には収録されておらず、改造社版『与謝野晶子全集』に収録されているらしい。こちらも所蔵なし。
「冬柏」9(11)1938.11 所蔵あり。p.4-8「霜葉の時（一）」と題して89首収録。収録歌集『白桜集』も所蔵あり。（39首）

(3)未所蔵の「冬柏」3(11)に収録されている歌について調査。
→ 『鉄幹晶子全集 別巻8』掲載の書誌と年譜を確認。p.254：「冬柏」3(11)に「裾野の秋（一）」と題して79首収録されていることが分かった。
→ 当館蔵書検索システムで「裾野の秋」を検索。
→ ヒットしない。

(4)『鉄幹晶子全集 別巻6』昭和7年発表の全集未収録短歌を調査（※この全集の別巻1-7は拾遺篇として、全集本編に収録されていない単行本未収録作品等が年代順に掲載されている）
→ p.199-208に「冬柏」3(11)「裾野の秋（一）」79首収録。精進湖などを詠んだ歌であることを確認。

(5)(4)に掲載されていた歌を『定本与謝野晶子全集』の索引で引くと、第6巻に収録されていることが分かった。
→ 『定本与謝野晶子全集 第6巻』（講談社）「草と月光」と題する中に、「裾野の秋」79首が収録されていた（p.477-487）。凡例や解題を確認すると、「草と月光」は単行歌集には収録されず、改造社版『与謝野晶子全集 第6巻』に初めて収録された歌とのこと。

(6)これまでの調査の過程で、「明星」「冬柏」に載っていないが、精進湖来訪の折に詠まれたと思われる歌があったので、『鉄幹晶子全集』の索引で「精進」を引く。
→ いずれも『瑠璃光』『白桜集』に収録されている歌だった。

(7)『鉄幹晶子全集 別巻』の全集未収録短歌で3回の訪問の年月日の前後を確認する。
→ 1923.8の吟行の際には、「精進湖より」と題する随想、短歌などを「横浜貿易新報」「国民新聞」「九州日日新聞」「万朝報」に載せている。
1932.10には、「冬柏」3(11)に、「裾野の秋」のほかに「無題」として「湖は鶯張りの簀子ほど鳴るなり富士の山風のして」という歌が掲載されている。この歌は、『定本与謝野晶子全集 第7巻』（講談社）中、「いぬあぢさゐ」に収録されている。「いぬあぢさゐ」は単行の歌集に収録されず、改造社版『与謝野晶子全集 第7巻』に初めて収録されたもの。
1939.1.1発行の「風景」に「落葉松抄」20首が掲載されていて、「富士」「西湖」「本栖の湖」などが詠まれており、前年11月の吟行の際に詠まれたものかもしれない。当該雑誌は当館では所蔵していなかったが、NDL-ONLINEで確認すると「風景」6(13)p.24-25に与謝野晶子「落葉松抄」が収録されていた。