レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年11月21日
- 登録日時
- 2023/11/21 14:40
- 更新日時
- 2023/12/06 20:36
- 管理番号
- 2023-041
- 質問
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江戸時代になぜ男性の日傘が禁止となったのか知りたい。
- 回答
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近世日本履物史の研究に以下の記載がありました。
コマ番号 29 / 112
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この時は町人のはき物より日傘の流行の方がやかましかったことは前年すなわち寛延二年五月の触に
近来男女に不限、青張紙の日傘指候者多く相見候
とある。日傘は元来天和元禄の際には子供用であったものが、寛延の際には成人の男女にまで用いられ、その流行から幕府の目にとまるところとなり、これをさせば人込の多い所では他人の迷惑となるし、尚かつ異様であるからいけないというのであった。この禁令が翌三年になっても履行されなかったことは
今以有之候 弥々以可為無用候
となった。当時は田沼意次の悪政が行われた時代であったから、禁令がいかにきびしく発せられても効力は薄かったし、事実宝暦の落首をみると
丁子茶と五寸模様に日傘
朱塗りの櫛に花のかんざし (賤のおだ巻)
とも角、世の中の流行は悪政と共に華美となり、まことに貴賤の別なくうたわれたこの唄の通り日傘の流行は物すごかった。
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石元明 著『近世日本履物史の研究』,雄山閣出版,1963. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/9544374 (参照 2023-11-21)
- 回答プロセス
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国立国会図書館デジタルコレクションを確認すると、
御触書集成 第2 (御触書宝暦集成)に以下の記載がありました。
コマ番号 157-158 / 312
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八七四 寛延二巳年五月
近來男女ニ不限、靑紙張之日傘指候者多ク相見候、人込等之場所ニても不宜、其上異様成者候間、不可然事ニ候、右體之儀装止候様可致旨申渡ス、
五月
八七五 寛延三午年八月
(略)
一 去年中も申渡候管笠之代り靑紙ニて張候小傘をさし候者、今以有之候、彌以可爲無用候、
(略)
八七六 寛延三午年八月
(略)
一 此間申渡置候靑紙張之日傘之儀、彌以無用可致候、此以後不相用者有之におゐては、奉行所より嚴敷可咎旨申渡、
八月
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高柳真三, 石井良助 共編『御触書集成』第2 (御触書宝暦集成),岩波書店,昭和10. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/1232551 (参照 2023-11-21)
御触書集成 第5 (御触書天保集成 下)に以下の記載がありました。
コマ番号 205 / 483
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五三六六 天保二卯年八月
近來武家之内ニは日傘相用候ものも間々有之哉ニ相聞、如何之事ニ候、向後は急度用ひ申間敷旨、向々え寄々可被逹置候、
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高柳真三, 石井良助 共編『御触書集成』第5 (御触書天保集成 下),岩波書店,昭和16. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/1229693 (参照 2023-11-21)
徳川禁令考 前集 第5にも以下の記載がありました。
コマ番号 186 / 254
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寛延三午年八月
三一六六 町人はき物幷日傘之儀ニ付町觸
(略)
一 此間申渡置候靑紙張之日傘之儀、彌以無用可致候、此以後相用者於有之ハ、御奉行所より嚴敷御咎も可有之候間、猶又申渡置候様ニ被仰渡候、
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司法省大臣官房庶務課 編 ほか『徳川禁令考』前集 第5,創文社,1959. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/2993974 (参照 2023-11-21)
神戸市立図書館所蔵の「廣瀬尚美著『江戸庶民の暮らしと文化 「徳川禁令考」から読み解く』雄山閣,2022.3(3823)」に以下の記載がありました。
p.40
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寛延三午年(一七五一)八月には「町人はき物并日傘之儀ニ付町触」が出される。
(略)
一、先日から申し渡してあるように、青紙張りの日傘は、以降、使ってはならない。今後、使った者は、奉行所からきついお咎めがある。
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【記載のなかった資料】
高柳真三, 石井良助 編『御触書集成』第1 (御触書寛保集成),岩波書店,昭和9. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/1232548 (参照 2023-11-21)
高柳真三, 石井良助 編『御触書集成』第3 (御触書天明集成),岩波書店,昭11. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/1230282 (参照 2023-11-21)
高柳真三, 石井良助 共編『御触書集成』第4 (御触書天保集成 上),岩波書店,昭和12. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/1232566 (参照 2023-11-21)
寺島良安[著]; 島田勇雄, 竹島淳夫, 樋口元巳訳注『和漢三才図会』5, 平凡社, 1986. p.86-87(傘)【N080=2=462】
- 事前調査事項
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国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで閲覧可能な、
大日本百科事典 第15に
「天保の改革のときに男子日傘は一時禁止された」
との表記がありました(コマ番号109 / 795)。
『大日本百科事典』第15,小学館,1970. 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/2525997 (参照 2023-11-21)
- NDC
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- 法制史 (322)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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※神戸市外国語大学の学内者は、神戸市立図書館所蔵の図書を無料で取り寄せることができます。
資料到着までの所要日数は7~10日、貸出期間は2~3週間です。
ただし、貸出中の図書や予約が多い図書はさらに日数がかかります。
https://www.kobe-cufs.ac.jp/library/guide/ill/index.html
※国立国会図書館デジタルコレクションは、個人利用登録をすることで
「送信サービスで閲覧可能」な資料も利用できるようになります。
2023年1月18日から印刷(プリントアウト)機能も追加されました。
https://www.kobe-cufs.ac.jp/library/news/post_111.html
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000341265