レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年03月23日
- 登録日時
- 2022/09/08 14:40
- 更新日時
- 2023/10/13 13:00
- 管理番号
- 相橋-R4-018
- 質問
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解決
太平洋戦争中の日本軍の暗号(「トラトラトラ」「ニイタカヤマノボレ」など)について知りたい。
- 回答
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・海軍『新高山登(ニイタカヤマノボ)レ 一二〇八(ヒトフタマルハチ)』、「(1941年)12月8日に攻撃を開始せよ」。
※新高山(ニイタカヤマ)(玉山<ユイシャン>、3,997メートル)は、そのころ日本領だった台湾にある日本一の高山。(資料⑦『語りつごうアジア・太平洋戦争 4』より)
・陸軍『鷲』『ヒノデハヤマガタトス』、「[鷲]は進行作戦開始、[ヒノデ]は開戦日、[ヤマガタ]は八日」。
※『鷲』に相当する海軍の隠語は『新高山登レ』。
・『筑波山は晴れたり』、「引き返せ」。
※12月1日午前零時までに、武力発動の隠語『新高山登れ一二〇八』または、日米交渉妥結の場合に「引き返せ」の隠語『筑波山は晴れたり』のいずれかが下る予定だった。(資料②『暗号に敗れた日本』より)
・『ト』連送『トトトトト…………』、「全員突撃せよ」。
・『トラトラトラ!』、「我奇襲に成功せり」。
・『東の風、雨』、 日米関係の危機。
・『北の風、曇り』、日ソ関係の危機。
・『西の風、晴れ』、日英関係(タイ、マレーおよび蘭印を含む)の危機。
※外務省から出先領事館への風向き暗号「ウインド・メッセージ」。毎日の日本語の短波ニュース放送内の警報で、気象予報の放送中に2回反復する。この放送を聞いた時には、直ちに暗号書を破棄することになっていた。
・(1941年12月8日午前3時)『ハナサク、ハナサク』、「マレー上陸」。(資料①『運命のD暗号 実録太平洋戦争』より)
以下は電話での報告に使われたことがわかった。
・『キミ子さん』、「大統領」。
・『フミ子さん』、「アメリカの国務長官ハル」。
・『求婚』、「日米交渉」。
・『子供の誕生』、「危機の切迫」。
・『サンフランシスコ』、「中国問題」。(資料③『暗号戦争』より)
- 回答プロセス
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市内所蔵検索システムにてキーワード“暗号 太平洋戦争”で検索したところ、以下の資料が見つかった。
①『運命のD暗号 実録太平洋戦争』 (自館請求記号:K1-09/アオヤ)
p82-83「第二章 D暗号 ―情報戦争と南方工作 [東の風、雨]」の項に、
「天気予報に偽装してメッセージを流す方法。
日米関係が危険になれば―東の風、雨
日英関係が危険になれば―西の風、晴れ
日ソ関係が危険になれば―北の風、曇り
p87「第二章 D暗号 ―情報戦争と南方工作 [新高山登レ一二〇八]」の項に、
「連合艦隊旗艦[長門]から、十二月二日、全艦船に対しD暗号による[新高山登レ一二〇八]が発信された。この電信の意味は“開戦日を十二月八日午前零時と決める”の意味」との記載あり。
p101「第三章 真珠湾そして南方作戦 ―開戦から[緒戦の勝利]へ [トラ・トラ・トラ!]」の項に、
「七時四十五分、先頭を飛ぶ淵田はカフク岬からオアフ島内に侵入し、西海岸にまわりこむとモールス信号で[ト]連送を命じた。即ち、“全員突撃”の意味である。続いて七時五十二分、前方にひろがる静かな真珠湾を確認した淵田は、[トラトラトラ!]“我奇襲に成功せり”を発信すると、それは機動部隊旗艦の[赤城]はもちろん、三五〇〇海里離れた広島の柱島に停泊する連合艦隊旗艦[長門]でもキャッチされていた。」との記載あり。
p113「第三章 真珠湾そして南方作戦 ―開戦から[緒戦の勝利]へ [ニミッツ登場]」の項に、
「さらに航空兵力として第三飛行集団(俗称[隼兵団])そして第五飛行集団(高兵団)が協力することとなった。十二月二日、陸軍参謀本部は南方軍宛に次の電報を発信した。
一、大陸命第五六九号“鷲”発令セラル
二、[ヒノデ]ハ[ヤマガタ]トス(“鷲”は進行作戦開始、[ヒノデ]は作戦開始日、[ヤマガタ]は八日の意) なお、この“鷲”に相当する海軍の隠語は“新高山登れ”である。」との記載あり。
p115「第三章 真珠湾そして南方作戦 ―開戦から[緒戦の勝利]へ [香港島攻略戦]」の項に、
「十二月八日午前三時、マレー上陸を知らせる[ハナサク、ハナサク]の暗号電文の報告で」との記載あり。
以下は市内他館に所蔵あり
②『暗号に敗れた日本 太平洋戦争の明暗を分けた米軍の暗号解読』 (市内図書館請求記号:210.75)
p50「第一章 米大統領は日本の開戦意図に気がついていた 一・二 日米交渉から開戦へ パープルによる暗号解読」」の項に、
「参謀総長から南方軍総司令官に発せられた開戦日時の決定は、[大陸命第五八六号 鷲(注:作戦開始)発令。『ヒノデ 注:作戦開始日』は『ヤマガタ 注:八日』]の隠語であった。」との記載あり。
p55-56「第一章 米大統領は日本の開戦意図に気がついていた 一・二 日米交渉から開戦へ ホワイト・ハウス戦争閣議」の項に、
「大統領を含む政策決定者が日本政府の最終意図を知った一一月一九日には、[非常事態の場合の特別メッセージ放送に関し]の東京回章二三五三号も解読された。[非常事態(わが外交関係断絶の危機)における国際通信の途絶の場合には、次の警報が毎日の日本語の短波ニュース放送のなかに加えられる。
(一)日米関係が危険になった場合…東の風雨、
(二)日ソ関係が危険になった場合…北の風曇、
(三)日英関係がが危険になった場合…西の風晴、
この警報は、天気予報として放送の中間と最後に加えられ、二回繰り返す。この警報を聞いたならば、すべての暗号書などを処分する。これは、今のところ、完全に秘密にしておかれたし。以上は至急通信である。]
さらに[断交の恐れの通信要領]では[わが外交関係が危険になりつつある場合には、左記を日本の一般海外向け放送の最初と最後に加える。
(一)日米関係……『東』、
(二)日ソ関係……『北』、
(三)日英関係(タイ、マレーおよび蘭印を含む)……『西』、
前記は放送の最初と最後で五回繰り返す]、-中略- 米軍呼称隠語風向き暗号電[東の風は米国、北の風はソ連、西の風は英国]は、日本が平和か戦争かの最終決定を周知させる引き金を果たす鍵となるものとみられていた。」との記載あり。
p60「第一章 米大統領は日本の開戦意図に気がついていた 一・二 日米交渉から開戦へ 機動部隊の出撃」の項に、「まさにこの日の午後七時(日本時間二六日午前九時)、日本海軍の機動部隊 -中略- は単冠湾外において第一警戒航行序列を組み、北太平洋を電波管制のもと、東京放送(X日を一二月八日午前零時と定めることを意味する武力発動の時機隠語[新高山登れ一二〇八]または一二月一日午前零時までに日米交渉妥結の場合に引き返せの隠語[筑波山は晴れたり]のいずれか)傍受に神経を集中しながらハワイに向け東進を開始したのである。」との記載あり。
③『暗号戦争』 (市内図書館請求記号:B391)
p69-70「第一章 マジックの日々 4 東の風、雨」の項に、「事態緊迫時の特殊メッセージの放送に関し通報する。外交関係断絶の危険が迫った時、国際通信が杜絶した時には、毎日の日本語短波放送中に次のような警報を含める。
(1) 日米関係の危機……東の風、雨
(2) 日ソ関係の危機……北の風くもり
(3) 日英関係の危機……西の風、晴
本信号は気象予報の放送中にそう入し、二回反復する。この放送を聞いた時には、直ちに暗号書を破棄せよ。
この風向き暗号(ウインド・メッセージ)は、日本から見て、ほぼコンパスの方位に合致していた。すなわちアメリカは東方に、ソ連は北方に、イギリスは西方に位置していた。」との記載あり。
p71「第一章 マジックの日々 4 東の風、雨」の項に、
「ハルがこの最後通牒を野村、来栖両大使に手交した一一月二六日、東京から連絡をスピードアップするため、電話を使って報告するようにとの指令が来た。もちろん隠語を使用しての会話である。たとえば大統領はキミ子さん、ハルはフミ子さん、日米交渉は求婚という意味深長な言葉で、危機の切迫は子供の誕生、中国問題はサンフランシスコというように。」との記載あり。
p111「第一章 マジックの日々 6 パールハーバー」の項に、「九分後、指揮官機から[全軍突撃せよ]を意味する<ト・ト・ト>が打電された。つづいて七時五三分、第一発が投弾される二分前[我、奇襲に成功せり]を意味する<トラ・トラ・トラ>という隠語電報が発信された。<赤城>の艦上では南雲司令長官が草鹿参謀長の手を黙って握りしめた。」との記載あり。
Webcat Plus(http://webcatplus.nii.ac.jp/ 2022/03/23 最終確認)にてキーワード“太平洋戦争 日本軍の暗号”で検索したところ、以下の資料が見つかった。
④『暗号学 歴史・世界の暗号からつくり方まで 鍵を守れ!』 (自館請求記号:J80)
p44「7 大日本帝国海軍(ていこくかいぐん)の暗号 [新高山登(ニイタカヤマノボ)レ]とは?」の項に、該当の記載あり。
p44「7 大日本帝国海軍(ていこくかいぐん)の暗号 [一二〇八]の不思議(ふしぎ)」の項に、該当の記載あり。
p45「7 大日本帝国海軍(ていこくかいぐん)の暗号 トラトラトラ」の項に、該当の記載あり。
後日、“太平洋戦争”“戦史”の書架を確認したところ、以下の資料が見つかった。
⑤『徹底研究太平洋戦争 海軍編1』 (自館請求記号:391.207)
p20-21「真珠湾攻撃一九四一年一二月八日 〈御前会議、開戦を決定〉」の項に、
「同日(一二月二日)午後八時、真珠湾へ向けて航行中の機動部隊司令部が受信したその内容は、『ニイタカヤマノボレ一二〇八(ヒトフタマルハチ)』 これは、[開戦日は一二月八日と決定した。全艦隊は予定どおり攻撃作戦を実行せよ]という命令である。同じ日、陸軍も杉山元参謀総長から南方軍総司令官寺内寿一大将宛てに暗号電文[ヒノデハヤマガタトス]を発信した。[ヒノデ]は開戦日、[ヤマガタ]は八日を意味していた。」との記載あり。
p24「真珠湾攻撃一九四一年一二月八日 〈トラトラトラ!〉」の項に、
「奇襲でいけると判断した彼は上空に一発放つと同時に、作戦成功を確信し、午前七時五二分、[トラトラトラ](我奇襲二成功セリ)を打電し、これはただちに[赤城]から東京の大本営、および広島湾柱島停泊中の連合艦隊旗艦[長門]艦橋の山本司令長官に伝えられた。」との記載あり。
後日、こどものほんのコーナーの“日本の歴史・太平洋戦争”の書架を確認したところ、以下の資料が見つかった。
⑥『アジア・太平洋戦争 (ポプラディア情報館)』 (自館請求記号:J21)
p10-11「Ⅰ アジア・太平洋戦争のはじまり ハワイ・真珠湾の奇襲攻撃」の項に、
「日本とアメリカのあいだでは、戦争をさけるための交渉が、まだつづいていました。交渉が成立すれば、作戦は中止になるはずでした。そして、機動部隊が、ハワイまでの距離の半分くらいまですすんだ12月2日、[ニイタカヤマノボレ 一二〇八]という暗号電文がとどきました。[12月8日に攻撃を開始せよ]という意味です。艦隊は、進路を南にむけ、ハワイを目ざして急進撃していきました。-中略- 日本軍の雷撃機がはなった魚雷が、軍艦に命中して、大きな水柱があがりました。火薬庫が爆発し、燃料が燃えあがりました。滑走路にならぶ飛行機を爆撃し、つぎつぎふきとばしました。指揮官機から、[トラトラトラ」(われ奇襲に成功せり)という電信が発信され、報告をまっていた機動部隊や連合艦隊では、いっせいに喜びの声があがりました。」との記載あり。
⑦『語りつごうアジア・太平洋戦争 4 ニイタカヤマノボレ1208 -日本軍がハワイを攻撃-』 (自館請求記号:J21)
p137「真珠湾の奇襲 日米開戦きまる」の項に、
「この日、ハワイにむけ、太平洋のあらなみをけたててすすむ南雲機動部隊は、[ニイタカヤマノボレ一二〇八]という暗号電報をうけとりました。[十二月八日に攻撃を開始せよ]という命令です。新高山(ニイタカヤマ)(玉山<ユイシャン>、三九九七メートル)は、そのころ日本領だった台湾にある日本一の高山でした。」との記載あり。
p140-143「真珠湾の奇襲 [われ、奇襲に成功せり]」の項に、
「淵田中佐はうしろをふりむいて、水木一等兵曹に[ト連送]の無電発信をめいじました。[トトトトト…………]“全機突撃セヨ”の命令です。ときまさに、ハワイ時間、十二月八日午前七時四十五分、日本時間の八日午前三時十五分でした。 -中略- [トラトラトラ………]“ワレ、奇襲に成功せり”の暗号電報です。南雲中将は旗艦[赤城]の艦上で、連合艦隊司令長官山本五十六大将は広島で、[トラ]無電をキャッチして、にっこりしました。」との記載あり。
①④を提供した。市内他館資料の②③を案内した。
以下は該当なし。
⑧『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 上』 (自館請求記号:210.7)
⑨『徹底研究太平洋戦争 海軍編2』 (自館請求記号:391.207)
p248-256「第2部 太平洋戦争海軍の戦闘の総括 暗号についての考察」の項はあるが、該当の記載なし。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210)
- 戦争.戦略.戦術 (391)
- 言語 (80)
- 参考資料
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- 『運命のD暗号 実録太平洋戦争』 青山元/著 戎光祥出版 2012
- 『暗号に敗れた日本 太平洋戦争の明暗を分けた米軍の暗号解読』 原勝洋/著 北村新三/著 PHP研究所 2014
- 『徹底研究太平洋戦争 海軍編1』 三野正洋/著 大山正/著 光人社 2003
- 『暗号戦争』 デイヴィッド・カーン/著 早川書房 1986
- 『暗号学 歴史・世界の暗号からつくり方まで 鍵を守れ!』 稲葉茂勝/著 今人舎 2016
- 『アジア・太平洋戦争 (ポプラディア情報館)』 ポプラ社 2006
- 『語りつごうアジア・太平洋戦争 4 ニイタカヤマノボレ1208 -日本軍がハワイを攻撃-』 和歌森太郎/(他)編 岩崎書店 2000
- キーワード
-
- 太平洋戦争
- 暗号
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000320984