レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2021/07/13 14:31
- 更新日時
- 2022/03/07 13:51
- 管理番号
- 愛知県図‐03507
- 質問
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太平洋戦争中の愛知県内で製造された陶磁器製品、特に「統制陶器」や「代用陶器」と呼ばれる製品の製造やその制度について書かれた文献資料はないか。
- 回答
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「統制陶器」や「代用陶器」は、満州事変~太平洋戦争中、戦争による物資不足や経済不況の中、価格や生産数をはじめとする様々な統制下で生産された陶磁器。また、金属の使用制限を受けて、その代用として陶磁器で作られた製品のことである。
下記【資料1】~【資料8】に、「統制陶器」や「代用陶器」について記述があった。
なお、資料中では「代用品」という呼称が用いられることが多い。
【資料1】『特別展戦争とやきもの』
p4に「1938年8月に出品の公募を始めた商工省主催による「代用品博覧会」などを通じて代用品の開発が促進され、急速に流通していくことになる。この商工省による代用品博覧会には、全国から約四千点の代用品が提出され、繊維代用品のスフ・人絹、皮革代用品の鮫皮、金属代用品の陶磁器製品などが脚光を浴びるようになった。」とあり、p4-9にかけて、戦時下の物資統制の始まりから終焉までの背景と、陶磁器産業に与えた影響について書かれている。
p10以降は、「食」「住」「衣」「学校」「寺院」「戦争」における代用品のほか、戦時中に作られたやきものの写真が掲載されている。
また、代用貨幣として製造されたが、終戦により粉砕処分され日の目を見ることがなかった「陶貨」の写真も掲載されている。
【資料2】『<代用品>としてのやきもの 企画展』
p5「はじめに」に「本書は特に陶磁器<代用品>が産み落とされた情況を詳らかにすることに力点をおいている。」とあり、現在の愛知県陶磁器工業協同組合の前身組織である瀬戸陶磁器工業組合が、組合員向けに発行した「工業組合通告」「工業組合時報」及びこの2誌を統合した「工業組合通報」の内容から、代用品について考察している。
【資料3】『瀬戸市史 通史編下』
p398-407「第5章 瀬戸窯業の近代化 第三節 戦時体制下の産地」
価格制度について言及しており、p399に「価格等統制令に基づき価格が決定される製品については、瀬戸陶磁器工業組合が共同販売および共同受註を実施し、さらに具体的な価格の設定をおこなう際に必要な製品の格付けは、同組合内に設置される格付委員会がおこなうことになった。したがって以後、組合が価格を決定する品種については、格付けを拒んで、業者が直接販売することはできなくなった。」とある。
また、p407「《コラム》代用品としての陶磁器」に代用品の写真が掲載されている。
【資料4】『愛知県史 通史編8 近代 3』
p556-561「第7章 戦時経済の県民の生活 第1節 経済総動員体制と民需産業の転換 在来産業の縮小と統制」
p558に、「愛知県内の陶磁器業界は、一九三八年に入り金属の使用制限が強化されると、陶磁器による代用品の開発と増産に活路を見いだそうとした。その背景には、統制が強化され、食器生産などでは入手困難な石炭が、代用品の場合には特別配給されるという事情もあった。」とある。
【資料5】『番号の付されたやきもの 戦時下の瑞浪窯業生産』
瑞浪市をはじめとする岐阜県の戦時下における陶磁器生産に関する資料であるが、1941年から実施された「生産者別標示記号」(「統制番号」)の制定について分かりやすく解説されている。
【資料6】大森芳秋「陶磁器統制十年の回顧(一)」(『産業之日本』16(10) p48-50(コマ25-26))
陶磁器業界における統制組合の設立の経緯と、昭和8年・昭和9年(1933年・1934年)の詳述。
【資料7】大森芳秋「陶磁器統制十年の回顧(二)」(『産業之日本』16(11) p54-58(コマ28-30))
【資料6】の続きで、昭和10年~昭和17年(1935年~1942年)の詳述。
【資料8】永井精一郞「陶磁器企業の統制に就て」(『愛知商工』(180) p32-45(コマ20-26))
p34-35(コマ21)に「日、陶、連(日本陶磁器工業組合連合会)の統制内容」が10項目列記されており、以降各項目の詳述がある。
※【資料6】~【資料8】は「国立国会図書館デジタルコレクション」国立国会図書館/図書館送信参加館内公開資料。
- 回答プロセス
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1.愛知県史や、県内最大の陶磁器の産地である瀬戸市史を確認。
2.「セラミックス、窯業」(NDC:573)、「陶磁工芸」(NDC:751)の分野の資料を地域資料を中心に検索し、書架をブラウジング。
3.国立国会図書館デジタルコレクションで検索。
- 事前調査事項
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下記の資料、論文、Webページは、利用者が事前に確認していた。
1.萩谷茂行「戦時下の陶磁器産業における製造、流通への考察 -戦時統制と製品-」京都造形芸術大学学術機関リポジトリ博士学位論文、2017年度
https://kyoto-art.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=265(last access 2021/11/25)
2.企画展「戦争とやきもの-代用品・統制品の真実-」多治見市美濃焼ミュージアム、2019年
https://www.tajimi-bunka.or.jp/minoyaki_museum/archives/4850(last access 2021/11/25)
3.企画展「終戦65年企画 代用品が生み出された時」瀬戸蔵ミュージアム、江別市セラミックアートセンター他巡回、2010年
https://www.city.ebetsu.hokkaido.jp/site/ceramic/349.html(last access 2021/11/25)
※江別市セラミックアートセンター2010年度の展覧会情報
4.久保田厚子「日本の洋食器史(3)ノリタケと競った製陶所のモダンデザイン(瀬栄陶器編)」岡山県立大学デザイン学部紀要第15巻、岡山大学学術情報リポジトリ、2008年
https://oka-pu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=2288(last access 2021/11/25)
5.三井弘三 著, 概説近代陶業史. 日本陶業連盟, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001420907-00<当館資料ID:1101540460>
- NDC
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- セラミックス.窯業.珪酸塩化学工業 (573)
- 中部地方 (215)
- 陶磁工芸 (751)
- 参考資料
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【資料1】瀬戸市歴史民俗資料館 , 瀬戸市, 歴史, 民俗, 資料館. 特別展 戦争 と やきもの. 瀬戸市歴史民俗資料館, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I051948407-00<当館資料ID:1106618986> -
【資料2】瀬戸市歴史民俗資料館 編 , 瀬戸市歴史民俗資料館. 〈代用品〉としてのやきもの : 企画展. 瀬戸市歴史民俗資料館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003014328-00<当館資料ID:1108032257> -
【資料3】瀬戸市史編纂委員会 編纂 , 瀬戸市. 瀬戸市史 通史編下. 愛知県瀬戸市, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I074359491-00<当館資料ID:1110054402ほか> -
【資料4】愛知県史編さん委員会 編集 , 愛知県. 愛知県史 通史編8. 愛知県, 2019.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I088567089-00<当館資料ID:1111633034ほか> -
【資料5】瑞浪市陶磁資料館 編 , 瑞浪市陶磁資料館. 番号の付されたやきもの : 戦時下の瑞浪窯業生産 : 特別展. 瑞浪市陶磁資料館, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023624993-00<当館資料ID:1110468366> -
【資料6】大森芳秋「陶磁器統制十年の回顧(一)」『産業之日本』16(10)、名古屋経済研究所、1942-09.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1506704(国立国会図書館デジタルコレクション) -
【資料7】大森芳秋「陶磁器統制十年の回顧(二)」『産業之日本』16(11)、名古屋経済研究所、1942-10.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1506705(国立国会図書館デジタルコレクション) -
【資料8】永井精一郞「陶磁器企業の統制に就て」『愛知商工』(180)、愛知県商工館、1932-03.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1532454(国立国会図書館デジタルコレクション)
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【資料1】瀬戸市歴史民俗資料館 , 瀬戸市, 歴史, 民俗, 資料館. 特別展 戦争 と やきもの. 瀬戸市歴史民俗資料館, 1994.
- キーワード
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- 陶磁器
- 統制陶器
- 代用陶器
- 代用品
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000301714