レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/2/23
- 登録日時
- 2017/07/20 00:30
- 更新日時
- 2017/07/20 00:30
- 管理番号
- D0206114907
- 質問
-
未解決
「ファースト・シューズ」という風習の起源について知りたい。
赤ちゃんに靴を送るという「ファースト・シューズ」という風習について、その起源・由来を知りたい。欧米起源で、1990年ころ前後には日本にも取り入れられ始めていたようだ。調査したが、以下の情報しか見つからなかった。
大谷知子『百靴事典」(シューフィル、2004年)
ファースト・シューズ 【first shoes】
幼児が歩けるようになって初めて履く、初めての一歩を大地にしるす靴のこと。
ただし、これは和製英語的な言い方で、欧米では「ファースト・ステップ・シューズ」、あるいは「ファースト・ステッパーズ」と言う。
『百靴事典』WEB 版より引用 http://www.parashoe.com/words/hu.html
- 回答
-
幼児用の靴(ベビー靴)のうち、最初に履くもの(日本でいう「ファーストシューズ」)を贈答品として送ったり、実際に履いた個体を記念品としたりする習慣やその由来についての記述がないか調べました。また、照会できそうな専門家・機関なども調べました。
日本語文献を調査したところ、1980年代末から海外のサービスとして紹介している文献1】などを見つけましたが、欧米におけるその起源について言及したものは2016年の文献2】しか見当たりませんでした。
1】マッド・アマノ「「ベビーファースト・シューズ」は思い出グッズ・ビジネスの成長株(6)
ヒット商品の発想法-アメリカ編」『商店界』71(6)pp.119-118(1990.6)【Z4-148】 ※「赤ちゃんが初めてはいた靴のことをファースト・シューズと言い、アメリカでは、これをブロンズ製にして保存する、というビジネスが大評判になっている。日本でも「メモリアル・ゴールド・シューズ」の名で、すでにスタートしている。」 (p.119)
2】「はじめの一歩に!「ファーストシューズ」の選び方」『いいね』(22)pp.16-17(2016.2)【Z72-H832】 ※「ファーストシューズ専門に靴づくりを続ける靴職人」の岡林秀高氏を紹介。「ヨーロッパで靴を贈る習慣の理由は諸説ある、と岡林さん。「多くの場合、おばあちゃん、おじいちゃんがファーストシューズを贈ります。玄関に飾ると幸運を呼ぶというジンクスがあったり〔以下略〕」」と記述があります。「神戸でファーストシューズをつくり続けて50年以上になる岡林さん」と紹介されているのみで、連絡先の記載はありません。
英語の百科事典や一般的な辞書には記述が見当たりませんでした。また外国語の靴専門事典は当館に所蔵がほとんどありません。
当館に所蔵のない英語文献には、米国の製靴業界紙誌などに1910年代あたりから「first step shoes」が散見されますが、国内で所蔵の見当たらない文献ばかりなので確たることは判りません。
一方、米国のオークション・サイト「ebay」には記念のブロンズ像となった「first shoe」や「first walker baby shoes」「bronze baby shoe」などが散見され、それらの説明文には米国製であることや1930年代や1950年代のものだと書かれています。
ドイツでは乳幼児用ベビー靴を特に「krabbelshuhhe」というと日本語サイト(後述)にありましたが、これについてドイツ語百科事典や辞書には立項が見当たりませんでした。
「ファーストシューズ」を祝う習慣は、欧州の習慣というより、20世紀米国で広まった習慣ないしサービスのようにも見受けられますが、当館所蔵資料では定かにはわかりませんでした。
また、靴についての専門家について専門家事典を見ましたが理系の人しか見当たりませんでした(後述)。
貴館が典拠にした用語辞典(当館では次の書籍版を所蔵)の著者連絡先は以下のインターネットサイトにあります。
・大谷知子 執筆 『百靴事典』 シューフィル 2004.12. 【Y94-H11314】
・靴ジャーナリスト大谷知子アンオフィシャルホームページです!
(http://heartland.geocities.jp/ohya_tomoko/index.html)
以下に探索過程を説明します。
●百科事典、辞書、当館所蔵の専門事典
以下の資料にはファーストシューズにあたる記載が見当たりませんでした。
・ジャパンナレッジ Lib ※当館契約データベース
・Wikipedia
・フランク・B.ギブニー 編 『ブリタニカ国際大百科事典』 第3版 ティビーエス・
ブリタニカ 1996【YU1-2371】
・Encyclopedia Americana International ed. Scholastic Library Pub c2005
【UR17-B3】
・Collier's encyclopedia:with bibliography and index / Lauren S. Bahr editorial director;Bernard Johnston editor in chief Collier's c1995【UR17-A34】
・The new encyclopedia Britannica 15th ed. Encyclopedia Britannica c2007
【UR17-B6】
・Webster's third new international dictionary of the English language unabridged / editor in chief Philip Babcock Gove and the Merriam-Webster editorial staff
Merriam-Webster c2002【KS12-B24】
・The Oxford English dictionary 2nd ed. / Clarendon Press:Oxford University Press 1989【KS12-A41】
・パトリック・ロバートソン 著 大出健 訳 世界最初事典 講談社 1982【UR1-84】
・P.ロバートソン 著 三浦修 訳編 「世界で初めて」の事典 実業之日本社 1976
【UR1-45】
・Anglo-russkii kozhevenno-obuvnoi slovar Sostavili G. A. Arbuzov [i dr.]
Pod obshchei red. A. N. Mikhailova I. L. Kachko Glav. red inostrannykh nauchno-tekhn. slovarei Fizmatgiza, 1963【PA2-55】
※当館所蔵唯一の靴事典(英語/ロシア語)。First shoesなどの立項はありませんでした。
●習慣に言及のない「ファーストシューズ」記事
データベースWebOYAやサイトFujisan、新聞データベース(ヨミダス、聞蔵)などで検索しました。
・江島れい子「第20回消費科学講座講演より。歩き始めから約3ヶ月間の赤ちゃんのためだけに開発した「ファーストシューズ」」『繊維製品消費科学』56(8)pp.665-669 (2015.8)【Z17-199】
・「藤本美貴のこんにちは赤ちゃん13回 息子のファーストシューズは軽い・安全・可愛いが条件!」『Saita』19(3)p.25(2013.3)【Z6-B680】
・「特集 こころがかわいい ファーストシューズ」『日経マガジン』(36)p.14(2007.7.15)【Z71-V284】
・「ロイヤルファミリーの育児白書 皇室好みの子供の玩具」『婦人画報』(1235)pp.94-95(2006.6)【Z6-31】 ※「ファミリア/ファーストシューズ」あり
・「サンキュ!News 赤ちゃんの不安定な足元をカバー!機能性のあるベビーシューズに注目」『サンキュ!』11(1)p.23(2006.5)【Z71-N907】
・「サンキュ!News 人気スポーツメーカー発!ベビーグッズが話題」『サンキュ!』10(5)p.21(2005.9)【Z71-N907】
・西村知美「西村知美さんの新米ママエッセイ とろりんのよちよちママ道体験中 15回「ファーストシューズを選んで歩行準備OK!」の巻」『Saita』10(14)p.79(2004.7.22)【Z6-B680】
・「愛児の靴を金ピカに」『読売新聞』(1988.12.1)別刷p.1 ※「日本橋高島屋がユニークな新サービスを始めた。その名も「ファーストシューズ金メッキ加工」」とありますが、由来への言及はありません。
●Googleブックスで検索される記載のありそうな英語文献
Googleブックスで当館所蔵でない海外文献の記載例を見ると、1910年代から米国の製靴産業の専門雑誌などに「ファーストシューズ」についての記載が見られます。部分表示がGoogleブックスで可能です。
〈Googleブックスを"first step shoes"で検索〉以下は例示
・Shoe and Leather Reporter - 第 118 巻 1915
・Leather & Shoes - 第 58 巻 1921
・American Review of Shoes and Leather - 第 35~38 巻 1921など
〈Googleブックス"first steppers" shoesで検索〉
・Ralph B. Bryan. Hide and Leather and Shoes Encyclopedia of the Shoe and Leather Industry. Hide and leather publishing Company, 1941 p.152
●英語の記事索引を検索
・ProQuest 基本検索 当館契約データベース ※「"first step shoes"」で17件、「"first steppers" shoes」で4件ほどヒットしますが、ほとんどが買い方などの1990年以降のものか、1920年代の販売広告でした。
・Readers' guide to periodical literature. H.W.Wilson Co., 1905- 【051-R2864】
※1915/18~1945/46の巻を項目「SHOES」で引いてみましたが、関係ありそうな記事は次のものくらいしか見当たりませんでした。
・Baby steps out. M. Hack and D. Weiner. il Hygeia 18:368-9 Ap '40
※この書誌データは上記資料からの転記。当館未所蔵。Googleブックスでスニペット表示が示されるので参照しましたが、『Hygeia』は理系の雑誌なので習慣についての記述はなさそうに思われます。
●得られた情報から実物情報をオークションサイトで探す
文献3】でファーストシューズのブロンズ像化が流行だ、とあったので、それらの現物から情報が得られないか、米国オークションサイトのebayを検索しました。
「first shoe baby bronze」で検索したところ数十件の結果が得られましたが、そのうちいくつかの説明文には作られた年代があるようです。
・eBay:Electronics, Cars, Fashion, Collectibles, Coupons and More (http://www.ebay.com/)
●靴の専門家を探す
・ 紀田順一郎 井上如、勝又浩、末吉哲郎 編 『現代日本執筆者大事典』 日外アソシエーツ; 紀伊国屋書店 (発売), 2015.7【GB13-L221ほか】
※次の索引(http://www.nichigai.co.jp/sales /genshitsu5.html)から「靴」で7件ヒットしましたが、そのうち靴の図書などを執筆しているのは、西脇剛史(アシックス・スポーツ工学研究所所長)の1名でした。連絡先は同研究所となっています(第3巻 p.33)。
●業界・専門便覧、業界紙誌などから照会先を探す
次の業界名鑑類も参照しましたが、研究系の機関は見当たりませんでした。
・グリーンデザイン 調査・編集 『靴・バッグ有力企業名鑑』エフワークス 2015【D4-L446】
・『「新」靴の商品知識』改訂22版 エフワークス 2015【DL731-L166】
・ポスティコーポレーションシューズポスト [編]『Shoes book』ポスティコーポレーションシューズポスト 2017【Z43-168】
このような専門名鑑、専門誌紙類を出版している出版者に照会するのも一考かと考えられます。例えば次のようなサイトがあります。
・エフ ワークスウェブ-靴の専門誌・靴見本市-(http://www.f-works.com/)
次の名簿は毎年更新されていますが、靴を専門にする機関は見当たりませんでした。
・専門図書館協議会調査分析委員会 編『専門情報機関総覧』専門図書館協議会;図書館流通センター (発売) 2015【UL2-L6】
●想定される国・地域から照会先を探す
やや古いですが、次のような機関総覧から主題および地域で照会できる図書館・資料室などがリスト化されており、現在でも参照できます。
・東京都立中央図書館 編『情報収集・問題解決のための図書館ナレッジガイドブック』 ひつじ書房 2005【UL2-H10】
仮に「ファーストシューズ」を米国の習慣・サービスとした場合、上記で「東京アメリカンセンター、レファレンス資料室」として紹介されている機関はおそらく次のサイトの機関に引き継がれていると思われるので、照会するのも一考かと思われます。
・アメリカンセンターJAPAN>ACJについて (https://americancenterjapan.com/about/) ※「リサーチとレファレンス・サービス」というページへリンクがあります。
●ドイツ語「Krabbelschuhe」
次の個人サイトに「はいはい靴」にあたる言葉が紹介されているため、以下の百科事典などを参照しましたが、立項がありませんでした。
・ ドイツより、素敵なものに囲まれて>娘のファーストシューズ☆2016年05月17日(http://sutekigerm.exblog.jp/25808571/) ※「靴文化のドイツではハイハイする頃から靴下の上に柔らかい革製のKrabbelschuhe「クラベル・シューエ(ハイハイ+靴)」というものを履かすのが普通です。」とあり。
・Brockhaus Enzyklopadie in 30 Banden / [redaktionelle Leitung, Annette Zwahr] 21 vollig neu bearbeitete Aufl. F.A. Brockhaus, c2006 30 v.【YU111-B464】
・Oxford-Duden German dictionary:German-English English-German / edited by the Dudenredaktion and the German Section of the Oxford University Press Dictionary Department;chief editors W. Scholze-Stubenrecht, J.B. Sykes 3rd ed. / edited by M. Clark O. Thyen. Oxford University Press 2005【YU111-B357】
・herausgegeben von Jurgen Stalph [et al.]. Grosses japanisch-deutsches Worterbuch = Iudicium c2009-【KS272-B48】
・国松孝二 [ほか] 編 小学館独和大辞典 第2版 小学館 1998【KS272-G9】
※【 】内は当館請求記号です。
※上記で参照したウェブサイトでURLの記載のないものは次のリンク集にあります。
・人文リンク集(国立国会図書館)
http://rnavi.ndl.go.jp/humanities/jinbunlinks.php
※ウェブサイトの最終アクセス日は2017年2月20日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000218916