レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012/11/10
- 登録日時
- 2013/12/28 00:30
- 更新日時
- 2013/12/28 00:30
- 管理番号
- 横浜市中央2347
- 質問
-
解決
『享保元文諸国産物帳集成』
(盛永俊太郎、安田健/編 科学書院 1985~2003)に
収録されている産物帳が刊行された当時の中国地方の地域は、
現在のどの地域を指すのか知りたい。
- 回答
-
1 『享保元文諸国産物帳集成』の刊行時期
まず、『享保元文諸国産物帳集成』の現物を確認し、収録されている「産物帳」が刊行
された時期等を確認しました。
確認したのは「第7巻 隠岐・出雲・播磨・備前・備中」(1987)です。
(1)収録されている各文献の刊行年を調べる。
目次より、収録されている各文献は次のとおりです。
・「隠岐国産物絵図」
・「出雲国産物名疏」
・「本草物産図譜」
・「島根郡東組産物絵図差出帳」
・「播磨国網干領揖東郡揖西郡産物帳」
・「備前国備中国之内産物帳」
・「備前国備中国之内領内産物絵図帳」
・「松山物産」
資料の巻末に「所在の判明した『産物帳』及び『同絵図帳』」があります。
ここに掲載されている文献は、その所在元が調べることができますので、
所在元となっている図書館、文書館等のサイトで蔵書検索ができれば、詳細な書誌事項を
調べることができ、刊行年も調べることはできます。
ただし、古い資料のため、不明な場合も多いことが予想されます。
上記より「隠岐国産物絵図」を国会図書館で検索しましたが、
書誌事項に明確な出版年の記載はありませんでした。
こちらは近代デジタルライブラリーで全文公開しております。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2541411
(2)「産物帳」が編集された時期について
巻末の「『享保元文諸国産物帳』解題」(安田 健)より、「『産物帳』の編集」という
項目の中で
「全国諸領へ『産物帳』の編集が指示されるのは、さきの公達が出てすぐに始められた
わけではない。
<略>
公達から一年後の一七三五(享保二〇)閏三月から四月にかけて、諸領の江戸留
守居達が正伯の許に呼ばれて、初めて夫々の領内の『産物帳』を編集することが
指示された。」
とあります。
また、「『産物帳』の作製とその後の行方」の「イ「『産物帳』の本帳の作成」の中に
「一七三七・八年中には、おそらく大方の領から提出されたものと思われる。」とあります。
この記載より、こちらの資料に掲載されている産物帳の時代はおおよそ1735~1738年位の
時期と推測されます。
2 江戸時代における国名から、現在の地域が分かる資料
江戸時代の中国地方各国が現在のどの地域にあたるのかは、次の資料で調べることが
できます。
(1)地名辞典類
ア 『角川日本地名大辞典』「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編纂 角川書店
中国地方から「33 岡山県」「34 広島県」等を確認しました。
(ア)地図
裏表紙見返しに「岡山県行政区画変遷要図」「広島県行政区画変遷要図」があり、
現在の県の地図に「旧国界」の境界が記載されており、現在のどの地域(県)に
あたるのかを地図で確認できます。
また、表表紙の見返しにある「岡山県現行市町村区分図」「広島県原稿市町村区分
図」と比較させることで、現行の市町村区分ではどこにあたるのかを確認することが
できます。
(イ)当時の国の郡編成
「資料編」に「国郡沿革表」が掲載されていますので、「岡山県」→「元禄郷帳」、
「広島県」→「郡名考・天保郷帳」の時の各国を編成していた郡を調べることができます。
参考:「郷帳(ごうちょう)」
江戸幕府が正保(1644~48)、元禄(1688~1704)、天保(1830~44)ごとに、
国絵図とともに作成させた一国単位の郷村高帳のことを指します。
『日本国語大辞典 第5巻(けんえ-さこい)第2版』(小学館 2001)
「ごうちょう【郷帳】」の項目より
1(1735~1738年)の時期に該当はしませんが、「元禄郷帳」「天保郷帳」が作成
された中間時期の郡編成が調べたい時期に近いということは分かります。
(2)国絵図・古地図について
現在の地域のどこにあたるのかは分かりませんが、昔の地図は次の資料でも参照できます。
ア『国絵図の世界』国絵図研究会/編 柏書房 2005
江戸時代の作成された国絵図を国別に収録しています。
1(1735~1738年)の時期に近い時代に作成された国絵図を調べることができますが、
図書に掲載されている図からは詳細な地域まで判別するのは難しいと思われます。
イ『江戸時代図誌 別巻 1 日本国尽』赤井達郎/〔ほか〕編 筑摩書房 1977
「山陰道」「山陽道」の各絵図の図が掲載されています。
また巻末に国別で「江戸時代の産物」が日本地図上に描かれています。
ただし、現行の県(地域)の境界は描かれていませんので、現在どの地域にあたるのかは
分かりません。
ウ『日本古地図集成』秋岡武次郎/編著 鹿島研究所出版会 1971
「伊能忠敬作瀬戸内海の測量中図部分」(文政四年(1821年))が収録されており、
カラーで当時の瀬戸内地方(中国地方)の地図が描かれています。
細かい地名は判別できない箇所もあります。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本史 (210 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000142767