レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年11月30日
- 登録日時
- 2012/11/30 14:41
- 更新日時
- 2016/08/20 12:20
- 管理番号
- 町田-075
- 質問
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解決
神社で植えられている樹木に「ムクロジ」や「イチョウ」があるが、宗教的・縁起的な意味があるのか?
- 回答
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1.ムクロジ
ムクロジという名は、モクゲンジの中国名の音読みがこの樹に入れかわって使われた。種子を数珠にするので、寺院にはよく植えられる。食用、薬用、石けんとしても用いられた。果実を酒に漬けて飲むと、邪気を防ぐという。無患子は、昔、神巫(しんぷ)がその木でつくった棒で鬼を殺したので、鬼を追い払い、患いを無(なく)すと伝えられた。また、推古天皇の御代初めて道明寺を建てたさい、大乗経を埋めた土の上にこの木が自ら生じたとされる。
2.イチョウ
古くから防火樹、防風樹として利用され、実は食用にする。杖(つえ)銀杏、逆さ銀杏、乳銀杏、子授け銀杏、泣き銀杏、お葉つき銀杏など、イチョウについては多くの伝説が語られている。仏寺や神社に関係がある点で在家では木忌みとなっている。
- 回答プロセス
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1.ムクロジ
シリーズ自然を読む「ムクロジ」・・・http://elekitel.jp/elekitel/nature/2007/nt_62_mukuroji.htm (2013.1.19確認)
「庭園樹で、特に寺院によく植えられる。自然の樹形が保てるような広い場所に植えるのが望ましい」とある。また「種子は毎年結実する。種子は追い羽根や数珠以外に、油脂を多く含むので食用にもされた。種子からとった油は、止血、解熱、咳止めなどの薬用にされる。ムクロジの果肉には、サポニンを含んでいるので、サイカチの莢(本シリーズのサイカチを参照)と同様、水に浸して揉むことによって石けんのような作用をなし、汚れを洗いおとすので昔から使われていた」。「モクゲンジ(木欒子)は、富山県、兵庫県北部、山口県などに見られる落葉高木。種子を数珠にするので、寺院にはよく植えられ、大木がある。種子は約7ミリ、数珠のほか耳飾りにしたり、炒って食用にしたりする。ムクロジという名は、モクゲンジの中国名の音読みがこの樹に入れかわって使われた」とも。
『日本大百科全書 22』 p.611
「名は、モクゲンジ(ムクロジ科の別植物)の中国名である木欒子を誤ってムクロジにあてたため、木欒子の日本語読みモクロシからムクロジになったという。庭園、神社に広く植栽される」。また「果実を酒に漬けて飲むと、邪気を防ぐ」とある。さらに「無患子は、昔、神巫(しんぷ)がその木でつくった棒で鬼を殺したので、鬼を追い払い、患いを無(なく)すと伝えられたからという。子は種子の意味である。果皮を漢方では延命皮(えんめいひ)とよぶ。サポニンを含み、泡立つので、それを洗剤に使った。泡は消えにくいので、液状の消火器に使われている。種子は堅く、中国では唐代から数珠(じゅず)に用いられていた。日本では正月の羽根突きの球(たま)にされた。『替花伝秘書(かわりはなでんひしょ)』(1661)では、戦(いくさ)から帰陣のおりにいける花に、楠(くす)と添え物に「むくろ木」をあげている」とある。
『樹木大図説 Ⅱ』
p.1046 「その実を念珠に作る」 とある。
p.1048 「多くは寺院に植える、河内国道明寺に老樹あり、伝に云う推古天皇の御代初めてこの寺を建て大乗経を埋めた土の上にこの木自ら生ずと」とある。
2.イチョウ
『日本大百科全書 2』 p.429~
「樹皮は厚く、コルク質で気胞分があり耐火力に優れ、古くから防火樹として知られる。木は庭園樹、公園樹、街路樹、防風樹、防火樹、盆栽など広く利用され、近年は種子をとる果樹としても栽培される」。 「神社や寺院などに多くみられるイチョウは、民家に植えるのを忌み嫌うが、これは全国的である。イチョウについては多くの伝説が語られており、杖(つえ)銀杏というのは、弘法(こうぼう)大師などの高僧が携えた杖を地面にさしたのが成長して枝葉を生じたといわれ、東京・麻布(あざぶ)の善福寺にあるものなどはその一例である。また、逆さ銀杏というのは枝葉が下を向いて生えるのでいったが、イチョウの古木に生じる気根を削って煎(せん)じたものを飲むと乳の出がよくなるという乳銀杏の古木が、神奈川県川崎市の影向寺(ようごうじ)など全国各地にある。このほか子授け銀杏といって、東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の鬼子母神(きしもじん)の境内にあるイチョウは、その木を女が抱き、葉または樹皮を肌につけていると子供が授かるという。泣き銀杏というのもあるが、そのいわれはさまざまで、有名な千葉県市川市の真間山(ままさん)弘法寺(ぐほうじ)のものは、日頂上人(にっちょうしょうにん)(1252―1317)が父の勘当を受けたためにこの木の周りを泣きながら読経したからという」とある。
『樹木大図説 Ⅰ』
p.25 「お葉つき銀杏 葉なり銀杏といひ、葉縁に実がつくのは、身延山七不思議のひとつ。山梨県の上沢寺が伝えるところによると、日蓮上人が杖を地に挿しそこから再生した樹に上人の威徳によって葉上に結実したという」。
p.28 「乳銀杏 仙台市若竹の銀杏で姥銀杏ともいい、乳不足の婦人がよく願かけに訪ねてくる」
「高知県平石のものは、乳の最大のもの長4mあり、古くから信仰上保護され、幹の凹部に仏像と子安地蔵祠を祭つてある」。
p.33 「仏寺や神社に関係がある点で在家では木忌みとなつている」。
p.34 「防火、防風の役に立つ」とあり。
『日本俗信辞典 動・植物編』
p.36 「イチョウは、庭木にすると不吉である。病人ができる。人が死ぬ。この木を忌む理由として、お寺に植える木だからという。位の高い木として俗人の家には植えられぬという。神木だから俗家に植えると主人が死ぬ。代々不幸が続き、家の下に根が入ると病人が絶えぬなどという。財産が減る。
p.37 「大木になると、しばしば乳房状の木根を生ずる。その形状の類似から乳の出ない女性がこれに祈願を掛ける習俗はほとんど全国的である。こうした大木は、たいてい社寺の境内にあり、霊木となっている。
シリーズ自然を読む「イチョウ」・・・http://elekitel.jp/elekitel/nature/2004/nt_32_icho.htm (2013.1.19確認)
「公害に強いので緑化樹、防火樹、社寺境内樹として植樹される」。
「幹や枝から乳柱(気根状)をたらす乳(ちち)がある。種子が奇形的に葉に生じる(葉に実がつく)ものをオハツキ(お葉付き)イチョウ、葉縁がくっついて葉がラッパ状になったラッパイチョウなどの奇形がある」。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本語 (031 8版)
- 民間信仰.迷信[俗信] (387 8版)
- 森林立地.造林 (653 8版)
- 参考資料
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- 『日本大百科全書 2』 小学館 1995
- 『日本大百科全書 22』 小学館 1995
- 『樹木大図説 Ⅰ』 有明書房 1985
- 『樹木大図説 Ⅱ』 有明書房 1985
- 『日本俗信辞典 動・植物編』 角川書店 1982
- キーワード
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- 神社
- ムクロジ
- イチョウ
- 伝説
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 植物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000115087