文学事典等で、J.D.サリンジャーに「ブラス・ファミリー」、「グラス・ファミリー」という作品があるかどうか調査しましたが、見つかりませんでした。ただし、『研究社英米文学辞典』第3版(研究社 1985)、『集英社世界文学大事典』(集英社 1997)により、サリンジャーは「Glass家という架空の一家の年代記を、肉親関係、特に兄弟姉妹間の異常とさえ思える親密さを問題に取り上げながら、書き続けた」ことがわかりました。
J.D.サリンジャーについての研究書を調査したところ、『J.D.サリンジャー論』(桐原書店 1995)、『イエローページサリンジャー:作品別(1940~1965)』 (荒地出版社 2000)の中に「グラス家物語」に関する記述がありました。これにより、「グラス家物語」とは作品名ではなく、ある作品群の総称のようなものであるとわかりました。
「グラス家物語」とされるのは、「Franny(フラニー)」、「Raise High the Roof Beam Carpenters (大工よ、屋根の梁を高く上げよ)」、「Zooey(ズーイ)」、「Seymour: An Introduction(シーモア・序章)」、「Hopworth 16, 1924(一九二四年ハプワース十六日)」の5作品です。日本語訳は、『サリンジャー作品集 4~6』 (東京白川書店 1981)に収録されています。