レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年08月16日
- 登録日時
- 2022/10/28 11:35
- 更新日時
- 2022/11/10 18:41
- 管理番号
- 大分県立郷土-2022-012
- 質問
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解決
生石(いくし)や生石浜(大分県)という地名について、由来がわかる資料はあるか。
- 回答
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生石の由来については、石が生きていた(血を流した)という説が多く見られた。以下の資料を紹介。
【1】『豊府聞書』戸倉 貞則/作 日名子 健二/編 日名子健二 2009.1
p102~103「生石村霊石」
【2】『豊府紀聞 上・下』市場直次郎,十時英司/編 大分県立大分図書館 1993年
下p135~136
【1】【2】それぞれに、日根野氏が植木氏に生石の由来を尋ねるという内容の漢文が載っている。それを抜き出したものが【3】に現代語訳で載っている。
【3】『浜の市 西大分商店街機関誌』西大分商店街浜の市祭り実行委員会/〔編〕 西大分商店街浜の市祭り実行委員会 2016.7
「浜の市 柞原八幡宮仲秋祭」
p5「生石大明神」
『豊府聞書』から、生石の由来となる伝説の抜き書きがある。
“あるとき、府内城主日根野吉明候が、駄原裏町庄屋の植木氏に問うて曰く。汝の隣
村を生石村言う。これ異なる成り、その故あるや、と。植木氏に問うて曰く。然痢、
霊石有り、古老の伝説に生石と名づく、これに因りて村名と為す、…(後略)”
【4】『豊後国志 巻1〜4』大分県立大分図書館(製本) 1993年
巻之四 大分郡「仏寺」霊雲寺 に生石の由来について書かれた漢文がある。【5】がこの資料を訓読したものである。
【5】『訓読豊後国志』太田 由佳/訳 松田 清/注 思文閣出版 2018.3
豊後国志巻之四 大分郡「仏寺」p194の霊雲寺に以下のように記述がある。
“(前略)…寺の側の田間に巨石有り。径一丈許り。稜岩屹立し、形は山の如し。
昔者、居民相謀りて除去せんと欲し、之を掘る。則ち盤根の地に入ること転深く、
多日功を費やす。且つ皆祟りを受くれば、懼れて瘞め、神と為して之を祭る。地を
生石と名づくるは、蓋し之に由らん。”
【6】『大分市史 下巻』大分市史編纂審議会/編 大分市 1956.3
p696~697「生石大明神」
【1】の現代語訳の引用と下記のような記述がある。
“豊府雑志には、村民がこの石を山に移そうとして根もとを掘ったところ、鍬の触れ
た箇所から生血が流出し、また、ひとりでに動き出して數回上下した。というような
神祕な傅えも記されているが、この巨石が生命あるものと考えられてきたわけである。
(中略)生石は神霊のこもるものと考えられ、石神として祭られることが多かつた。
當地の生石もその好例である。”
【7】『大分県郷土伝説及び民謡』大分県教育会/編 大分県教育会 1931年
p300~301「六 生石の起」
【4】にあったように、巨石を取り除こうとして祟られ、祀ったことが地名の起という内容になっている。
【8】『豊後伝説集』市場直次郎/編 郷土史蹟伝説研究会 1931年
聞き書きをまとめた資料。
p1「生石(大分市生石町)」
戦の際に石に矢が刺さって血が流れたという話と、異傳として、大石のもとに住んでいた兄弟がなくなり、その念が籠もっているため、割ると血が流れるという話がある。
【9】『大分今昔 再版』渡辺克己/著 大分合同新聞社 1983.8
大分合同新聞の連載をまとめた資料。
p200~201「生石かいわい」の「石の神々」
由来(言い伝え)の記述がある。なお、1964年の版にも同じ記述がある。
【10】『生石風聞録』甲斐光/編 甲斐光 1991.1
「地名の由来」の項目があり、故老の言い伝え、豊府雑志、生石子文書をもとにした記述がある。動いた、血が流れたなど説は分かれるが、石が生きているという記述が多い。また、参考意見として、【11】にあるような漢字の意味に照らした記述もある。
【11】『「和名抄」大分県古地名の語源と地誌』加藤 貞弘/口述 牧 達夫/編集・撮影 古国府歴史研究会 2003.5
p33に以下の記述がある。
“地名は、イ(斉)クシ(崖地)の、神聖なるものを祀った崖のある処、イ(接頭語)
クシ(崖)の、崖地、丘陵の先端、…(中略)この生石浜で由原神事が往古より行われて
いたのをみれば、聖なる崖地のあるイ(斉)クシ(崖地)が地名になったとみます。生
石の崖地の上に海神を祀ったという祠があります。”
【12】『西大分真発見ポケットブック みなとの力こぶ』大分市観光協会/〔編〕 元気印バイシクルフォーラム/〔編〕 大分市観光協会 元気印バイシクルフォーラム 〔2006年〕
西大分を紹介するパンフレット。「生石」と「かんたん」のうんちく話に「生石」と「かんたん」という地名の項があり、石から血が出ることや、工事の際にたたりがあったという記述がある。
- 回答プロセス
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1 地名事典、郷土の歴史事典を確認。
2 「生石」で所蔵検索し、該当資料を確認。
3 2の資料にあった参考文献、大分県史の参考文献を確認。
4 伝説・民話の棚や大分市の棚を見る。
- 事前調査事項
- NDC
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- 地理.地誌.紀行 (290 10版)
- 伝説.民話[昔話] (388 10版)
- 参考資料
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【1】戸倉貞則 作 ; 日名子健二 編 ; 日名子健二(1950-) , 戸倉, 貞則 , 日名子, 健二(1950-, ) , 日名子, 健二(1950-, ). 豊府聞書 : 元禄十一年戸倉貞則作. 日名子健二, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I087190798-00 -
【2】市場直次郎,十時英司 編 , 市場, 直次郎(1904-, ) , 十時, 英司. 豊府紀聞 上・下. 大分県立大分図書館, 1993.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I087039890-00 -
【3】西大分商店街浜の市祭り実行委員会 〔編〕 , 西大分商店街浜の市祭り実行委員会. 浜の市 : 西大分商店街機関誌. 西大分商店街浜の市祭り実行委員会, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I087361249-00 -
【4】豊後国志 巻1〜4. 大分県立大分図書館. (豊後国志および豊州雑志 ; 1)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I086569211-00 -
【5】[唐橋君山] [纂輯] , [田能村竹田], [伊藤鏡河], [古田寛斎] [校正] , 太田由佳 訳 , 松田清 注 , 竹田市 企画・編集 , 唐橋, 君山, 1736-1800 , 田能村, 竹田, 1777-1835 , 伊藤, 鏡河, 1752-1829 , 古田, 匡方 , 太田, 由佳, 1982- , 松田, 清, 1947- , 竹田市. 訓読豊後国志. 思文閣出版, 2018.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028984707-00 , ISBN 9784784219346 -
【6】大分市史編纂審議会 編. 大分市史 下巻. 大分市, 1956.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001351079-00 -
【7】大分縣教育會 編. 大分縣郷土傳説及び民謡. 大分縣教育會, 1931.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001423223-00 -
【8】郷土史蹟伝説研究会 編 , 郷土史蹟伝説研究会. 豊後伝説集 増補. 郷土史蹟伝説研究会, 1932.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001881941-00 -
【9】渡辺克己 著 , 渡辺, 克己, 1913-. 大分今昔 2版. 大分合同新聞社, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001664943-00 -
【10】甲斐光 編 , 甲斐, 光, 1923-. 生石風聞録 : 郷土の歴史を訪ねて. [甲斐光], 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002121792-00 -
【11】加藤貞弘 口述 ; 牧達夫 編集・撮影 , 加藤, 貞弘 , 牧, 達夫. 「和名抄」大分県古地名の語源と地誌. 古国府歴史研究会, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I087056581-00 -
【12】大分市観光協会 〔編〕 ; 元気印バイシクルフォーラム 〔編〕 , 大分市観光協会 , 元気印バイシクルフォーラム. 西大分真発見ポケットブック : みなとの力こぶ. 大分市観光協会, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I087384096-00
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【1】戸倉貞則 作 ; 日名子健二 編 ; 日名子健二(1950-) , 戸倉, 貞則 , 日名子, 健二(1950-, ) , 日名子, 健二(1950-, ). 豊府聞書 : 元禄十一年戸倉貞則作. 日名子健二, 2009.
- キーワード
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- 大分県‐‐地名
- 大分市
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000323137