レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年08月30日
- 登録日時
- 2021/10/07 13:29
- 更新日時
- 2021/10/20 14:45
- 管理番号
- 奈県図情21-010
- 質問
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解決
大和川水系に初めて鮎が放流された年を知りたい。
- 回答
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当館資料には、大和川水系に初めてアユが放流された年について、断定できる資料はありませんでした。
おそらく1951年に初めて大和川水系にアユが放流されたと思われますが、資料によっては1954年(本流・支流での放流を対象にしていると思われます)となっています。大和川水系のどこを起点にするかで最初の放流年が違ってくるようです。
以下の資料に記載がありましたので参考にしてください。
・「大和川の自然環境と水産・その変遷」(『産業研究所報 2号』 所収)
大和川水系の範囲である、奈良県と大阪府の漁業面から見たアユの放流が記載されています。
p.40に、1951年に初瀬川(大和川の上流部における名称)で、アユが75匹放流されたことが載っています。
1951年に新漁業法に基づいて漁業権が設定され、その免許が与えられると、漁業協同組合は増殖を義務付けられたので、この年から各地で漁業権の対象となる魚種について放流がなされてきたようです。
奈良県下で初めてアユの漁業権を免許されたのが、初瀬川水域漁業協同組合なので、初瀬川で漁業権免許制度の下、初めて大和川水系にアユが放流されたことになります。
奈良県下の他の漁業協同組合では、大和川水域河川漁業協同組合で1967年、1968年と放流したのが続くようです。
なお、大阪では、大和川漁業協同組合(大阪府下)の漁業権魚種が載っており、1951年にアユが含まれていますが、「大和川本流には1960年の中頃までかなりの海産天然アユが溯上していた」ため、「(その時点では)大和川本流へのアユ放流は行われていない」(p.35)と書かれています。
また、p.37には、大和川支流の大阪府下の石川(石川漁業協同組合区域)で、1954年にアユの漁業免許を取得して以降「毎年放流をつづけた」とあります。大阪府下の地域では石川が最初となるようです。
つまり、漁業権免許制度の下、本流では1967年が記録されている最初の放流であり、上流部で1951年、支流で1954年が最初の放流ということになります。
・『淡水魚研究入門 : 水中のぞき見学』
第4章 4. ワーストワンといわれた大和川へ天然アユが溯上した(p.315-320)のところに、
「1954年から2004年にかけて、(大和川の)支流の石川や本流下流域に琵琶湖産のアユが放流されていた」とあります。
・『朝日新聞』2006年02月03日 夕刊1総合
「水質浄化、上々か 大和川に天然アユ遡上 初確認、「耳石」で判別 【大阪】」
→こちらの記事には、「大和川と支流には50年代半ばから琵琶湖産アユが放流され」たと書かれています。
・ウェブページ「大和川の水環境 大和川天然アユ研究会会長 大阪教育大学名誉教授 長田芳和先生」
( https://www.kkr.mlit.go.jp/yamato/environment/approach/addition/kouryukai2011_no07.html )
→「1965年、昭和40年くらいから(大和川の)天然アユの遡上が急激に減り、あまり減るので昭和42年、昭和43年に渡り王寺町の漁業組合の方がアユを1万尾ずつ放流し」たとあります。
なお、『ここまでわかったアユの本 : 変化する川と鮎、天然アユはどこにいる?』という資料には、「石川千代松さん(元東京大学)は、琵琶湖のアユ(湖産アユ)を河川に放流すると大きくなることを発見した。1913年のことである。これをきっかけにして、全国各地の川に湖産アユが放流されるようになった。」
とあります。大和川水系ではありませんが、全国的に放流されたのがこの頃で、大和川にも放流された可能性がなくはありません。
ただ、大和川水系での放流の記録としては1913年~1950年のものは当館資料では見つけることができませんでした。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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奈良市史、奈良県史(それぞれ自然編)
- NDC
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- 河海工学.河川工学 (517)
- 漁労.漁業各論 (664)
- 参考資料
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御勢 久右衛門 , 御勢 久右衛門. 大和川の自然環境と水産・その変遷. 1999. 奈良産業大学産業研究所報(2) p. 1~56
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I6406657-00 -
長田芳和 編著 , 長田, 芳和, 1943-. 淡水魚研究入門 : 水中のぞき見学. 東海大学出版部, 2014.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025748735-00 , ISBN 9784486020165 -
高橋勇夫, 東健作 著 , 高橋, 勇夫 , 東, 健作. ここまでわかったアユの本 : 変化する川と鮎、天然アユはどこにいる?. 築地書館, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008079020-00 , ISBN 4806713236
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御勢 久右衛門 , 御勢 久右衛門. 大和川の自然環境と水産・その変遷. 1999. 奈良産業大学産業研究所報(2) p. 1~56
- キーワード
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- 奈良県
- 大和川
- 放流
- 鮎(水産)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 高校生
- 登録番号
- 1000305713