レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年03月11日
- 登録日時
- 2021/05/13 11:05
- 更新日時
- 2021/05/18 09:22
- 管理番号
- 0000110904
- 質問
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未解決
明治24年(1891年)9月14日に山口県を襲った台風の被害状況についての新聞記事等を探している。具体的には、この台風で「門司乕子」という女性が亡くなり、その死を悼んで「山口株式製絲会社」の有志により碑が萩市の俊光寺に建てられているが、その経緯等が分かるものはないか。
- 回答
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明治24年(1891年)9月14日の台風被害については、下記資料1に記載がある。「9月13日夜半頃から14日夕方まで暴風があり14日午前6時には東風35m以上を観測している」とある。また、『小郡町史』からの引用として、「大暴風雨襲来して家屋の倒壊するもの30余戸に及んだ。」とある。
当館では、明治24年の山口県関係新聞を所蔵していない。当時の様子がうかがえる記事として、読売新聞明治24年(1891年)9月20日付け朝刊2面の記事がある。それによると、14日夜明け頃から強風が吹き始め、午前10時頃には暴風雨となって、山口市街の屋根や塀に被害が出たとある。主な被害として、山口監獄の外塀が倒壊して工作所がその下敷きになり死傷者が出たこと、製茶会社工場が倒壊して女工が被害にあい、死者1名、負傷者6名が出たこと等が挙げられている。なお、本記事には、「山口株式製絲会社」のことは記載されていないが、14日発とあるため、この記事の時点では、被害の全貌が明らかでなかった可能性もある。
「門司乕子」及び「山口株式製絲会社」が被害にあったこと、及び萩市に碑が建てられたことに関する記述のある資料等は見当たらなかった。
なお、「山口株式製絲会社」は、以下の資料に見える「山口製糸株式会社」のことと思われる。これによると、同社は吉敷郡山口町(現・山口市)にあり、創業が明治23年(1890年)4月とある。この箇所は第1次調査(明治28年(1895年)10月時点)の全国の製糸工場のうち、山口県の部分。
国立国会図書館デジタルコレクション:全国製糸工場調査表. 第1、2次 (第1次調査 山口県分)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/901073/105
なお、「山口製糸株式会社」は、資料2に収録されている日本全国商工人名録発行所編さん『日本全国商工人名録 全』(明治31年12月刊)にも見えるが、前述『全国製糸工場調査表』の第2次調査(明治31年(1989年)3月時点)分には記載されていないため、この頃に廃業等した可能性がある。
国立国会図書館デジタルコレクション:全国製糸工場調査表. 第1、2次 (第2次調査、山口県分)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/901073/219
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/901073/220
また、碑文に、「十七年川嶋の製絲場に入り」とあることについては、資料3に見える「萩織工会社川島製糸場」のことと思われる。同製糸場は、維新後困窮した士族を救済するため、県就産所の資金により明治16年(1883年)9月に設立され、工女50人規模であったとある。また、群馬県の富岡製糸場で学んだ工女により、未熟者の指導が行われたことや、明治23年(1890年)に県就産所の解散に伴って個人に売却され、明治33年(1900年)まで事業を継続した、とある。
この他、以下の資料を確認したが、明治24年の台風被害、「門司乕子」及び「山口製糸株式会社」に関する記述は見当たらなかった。
『山口市史 昭和8年版 復刻版』(山口市史編纂調査会 編 マツノ書店 1992.11)
『山口市史 通史篇』(山口市史編纂委員会 編 山口市役所 1955.10)
『山口市史』(山口市史編集委員会 編集 山口市 1982)
『山口県蠶糸業史』(大日本蠶糸会山口支会・山口県養蠶業組合聯合会 編纂 大藤兵太郎 1932.11)
『山口県史 通史編 近代 [修正版]』(山口県 編集 山口県 2016.3 [2018.3])
『山口県史 史料編 近代4』(山口県 編 山口県 2003.3)
『阿武郡志』(阿武郡教育会 編 マツノ書店 1986)
『萩碑文鐘銘集』(山本勉弥 萩文化協会 1953.5)
『萩先賢忌辰録』(田中助一 著 萩市仏教団 1970.8)
『萩の史碑』(一坂太郎 著 萩ものがたり 2006.10)
- 回答プロセス
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当館所蔵の地域紙のうち、明治24年前後の所蔵なし。(防長新聞はこの間欠号)。聞蔵2ビジュアル及びヨミダス歴史館にて、期間を明治24年9月14日から9月30日とし、暴風and山口 暴風雨and山口で検索
なお、『明治ニュース事典』には、関西関係の記事が収録されており、同地で大きな被害があった模様
『山口県災異史』明治24年部分を確認。
『萩市史』の明治期の産業部分を確認。門司乕子及び山口株式製糸会社に関する記述なし。台風については『萩市史年表』にも記載がなく、萩ではそれほど大きな被害がなかったものかとも思われた。旧『萩市史』、「萩の百年』も同様に確認
『山口県蠶糸業史』の製糸業の部分を確認、山口株式製糸会社に関する記述なし。
『山口県史』通史篇近代、史料編近代4の明治の製糸業に関する部分を確認、記述なし。
碑文関係の資料として『萩先賢忌辰録』他を確認、記載なし。
Googleにて、完全一致「山口株式製糸会社」で検索、ヒットなし。完全一致「山口製糸株式会社」で検索、『山口市史 史料編 近代』がヒット。
なお、この時期、士族授産や日清戦争後の好景気などにより、多くの製糸場が造られ、廃業したものと思われる。
- 事前調査事項
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碑文の写しを提示された。その中に門司乕子は「十七年川嶋の製絲場に入り」とある。
- NDC
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- 中国地方 (217 9版)
- 社会福祉 (369 9版)
- 参考資料
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1.山口県 編 , 山口県. 山口県災異誌. 山口県, 1953.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I053899734-00 (p310) -
2.山口市 編 , 山口市. 山口市史 史料編 近代. 山口市, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023729918-00 (p278) -
3.萩市史編纂委員会 編 , 萩市. 萩市史 第2巻. 萩市, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001982030-00 (p116-117)
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1.山口県 編 , 山口県. 山口県災異誌. 山口県, 1953.
- キーワード
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- 風水害
- 製糸
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000298222